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松村と佐々木奈々①
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◆松村と佐々木奈々
僕は二人のそばに駆け寄って、
「おい、松村。どうして、佐々木は、僕に『あれ』を入れることができなかったんだ?」
松村が答える前に、
「ごめんね。屑木くん」佐々木は喘ぎ喘ぎ謝った。口元から血が溢れ出ている。
どうして謝る?
「私、屑木くんにひどい事ばかり言って」
そして、シンドウが言ったように「私、出来損ないなんですよ」と笑った。
それは悲しい笑顔だった。
「私、頑張ったんですけどね」
「どういう意味だ?」
僕の質問に、よろっと起き上った松村が言った。
「屑木。佐々木は、いい子なんだ」と言って「佐々木は体に『あれ』が入っても、俺みたいに理性を失わなかった。いつも屑木や神城、友達のことを考えていた」
それは痛いほど知っている。だから、さっきの佐々木の変貌ぶりが信じられなかった。あれは芝居だったのか。
松村は「佐々木は優しすぎたんだ」と言った。
「松村、それのどこが・・」
それのどこが出来損ない、失敗作だと言うんだ? 憤りが込み上げてきた。
「それは、ダメなんだよ」松村は言った。
「松村、僕にはわからない。佐々木がどうして、こんな状態になっているのか」
僕の質問に松村は、こう言った。
「たぶん、シンドウが、おまえ・・屑木の血縁者の血を吸ってきたところだからだ。それが誰なのかは俺も知らない」
え・・
景色が遠のいていく気がした。周りの音も聞こえない。風景が白くなっていく。
僕の血縁者・・僕と血が繋がっている人間の血を吸ってきたばかり・・
それは、誰の血だと言うんだ!
松村は続けて説明した。
「普通は、こうはならない・・『あれ』を入れようとしている時、その血縁者が近づいてきても、行動を停止するだけで、平気なんだ。佐々木のようにはならない」
「だから・・」
「だから、佐々木は失敗作なんだよ」
そんなっ・・
松村がそう言った時、
シンドウが歩み寄ってきた。
「おや、今度は、三人で仲良しごっこか?」とあざけ笑いながら、
「その女、吸血鬼になりきれていなかったようだから、お前の中に入れるように指示をしたんだ」と言った。
それを聞いた松村は「シンドウ、お前の罠だったのか? 奈々が、出来損ないかどうかを知るための・・そのために屑木の血縁者の血を吸って来たっていうのか?」
何だと! そんなことのために・・
「おいっ、シンドウ。誰の血を吸ったんだ!」
僕の中で猛烈な怒りが込み上げてくるのがわかった。同時に、入れられたばかりの「あれ」が体の中で脈打つように動くのを感じた。
吉田女医が言っていた。
「私の体が、『あれ』を食べちゃったのよ」
そして、吉田女医は他の誰とも異なる吸血鬼と化していた。吉田女医に対しては伊澄瑠璃子の催眠効果はなかった。僕もそうなるのだろうか?
「まさか、景子さんの・・」
シンドウの返事を聞きたくない。もう答えはわかっている。シンドウが血を吸ったのは、父や母ではなく、
・・景子さんの血だ。
「そのまさかだよ」予想通りの返事が返ってきた。
悪い予感は当たっていた。
今まで、僕と景子さんの血が繋がっているという確証がなかった。勝手に僕が判断しているだけなのかもしれない。そう思っていた。
けれど、それが確信に変わった。
佐々木は、シンドウの体内にある景子さんの血に反応して苦しんでいる。
「きさまあっ!」
僕はシンドウに躍りかかり、胸ぐらをつかんだ。だがあっけなく、シンドウの驚異的なパワーで突き飛ばされた。
僕の体は、松村と佐々木の体も飛び越え、近くのすべり台にぶち当たった。
僕は二人のそばに駆け寄って、
「おい、松村。どうして、佐々木は、僕に『あれ』を入れることができなかったんだ?」
松村が答える前に、
「ごめんね。屑木くん」佐々木は喘ぎ喘ぎ謝った。口元から血が溢れ出ている。
どうして謝る?
「私、屑木くんにひどい事ばかり言って」
そして、シンドウが言ったように「私、出来損ないなんですよ」と笑った。
それは悲しい笑顔だった。
「私、頑張ったんですけどね」
「どういう意味だ?」
僕の質問に、よろっと起き上った松村が言った。
「屑木。佐々木は、いい子なんだ」と言って「佐々木は体に『あれ』が入っても、俺みたいに理性を失わなかった。いつも屑木や神城、友達のことを考えていた」
それは痛いほど知っている。だから、さっきの佐々木の変貌ぶりが信じられなかった。あれは芝居だったのか。
松村は「佐々木は優しすぎたんだ」と言った。
「松村、それのどこが・・」
それのどこが出来損ない、失敗作だと言うんだ? 憤りが込み上げてきた。
「それは、ダメなんだよ」松村は言った。
「松村、僕にはわからない。佐々木がどうして、こんな状態になっているのか」
僕の質問に松村は、こう言った。
「たぶん、シンドウが、おまえ・・屑木の血縁者の血を吸ってきたところだからだ。それが誰なのかは俺も知らない」
え・・
景色が遠のいていく気がした。周りの音も聞こえない。風景が白くなっていく。
僕の血縁者・・僕と血が繋がっている人間の血を吸ってきたばかり・・
それは、誰の血だと言うんだ!
松村は続けて説明した。
「普通は、こうはならない・・『あれ』を入れようとしている時、その血縁者が近づいてきても、行動を停止するだけで、平気なんだ。佐々木のようにはならない」
「だから・・」
「だから、佐々木は失敗作なんだよ」
そんなっ・・
松村がそう言った時、
シンドウが歩み寄ってきた。
「おや、今度は、三人で仲良しごっこか?」とあざけ笑いながら、
「その女、吸血鬼になりきれていなかったようだから、お前の中に入れるように指示をしたんだ」と言った。
それを聞いた松村は「シンドウ、お前の罠だったのか? 奈々が、出来損ないかどうかを知るための・・そのために屑木の血縁者の血を吸って来たっていうのか?」
何だと! そんなことのために・・
「おいっ、シンドウ。誰の血を吸ったんだ!」
僕の中で猛烈な怒りが込み上げてくるのがわかった。同時に、入れられたばかりの「あれ」が体の中で脈打つように動くのを感じた。
吉田女医が言っていた。
「私の体が、『あれ』を食べちゃったのよ」
そして、吉田女医は他の誰とも異なる吸血鬼と化していた。吉田女医に対しては伊澄瑠璃子の催眠効果はなかった。僕もそうなるのだろうか?
「まさか、景子さんの・・」
シンドウの返事を聞きたくない。もう答えはわかっている。シンドウが血を吸ったのは、父や母ではなく、
・・景子さんの血だ。
「そのまさかだよ」予想通りの返事が返ってきた。
悪い予感は当たっていた。
今まで、僕と景子さんの血が繋がっているという確証がなかった。勝手に僕が判断しているだけなのかもしれない。そう思っていた。
けれど、それが確信に変わった。
佐々木は、シンドウの体内にある景子さんの血に反応して苦しんでいる。
「きさまあっ!」
僕はシンドウに躍りかかり、胸ぐらをつかんだ。だがあっけなく、シンドウの驚異的なパワーで突き飛ばされた。
僕の体は、松村と佐々木の体も飛び越え、近くのすべり台にぶち当たった。
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