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レミとサヤカ①
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◆レミとサヤカ
サヤカは、顎の関節が緩くなっているのか、口をガクガクと揺らしながら何かを言っている。「んおっ、んぷっ」と意味不明の声を出した後、
「レミ・・レミが、体の、中に」と言った。確かにそう言っている。
その目は、焦点を失っていて、左右に上下にと回転している。
そして、次に、「お・の・れ・・レミ」と、
自分の体を巣食うレミに対しての憤りの言葉・・恨み辛みのような言葉を吐いた。
僕は少しずつ理解し始めた。
渡辺さんの妹、サヤカの中に入っている「あれ」は、伊澄さんのお姉さん、伊澄レミの体の一部だ。
おそらく、これまで出会った「あれ」は、全て、伊澄さんのお姉さんの一部だったのだ。
屋敷内で初めて白山あかねが空中に噴き出した血を吸い上げたのもそうだったし、体育の大崎の中に入っていたのも、伊澄瑠璃子の姉のレミの一部だった。
つまり、この町で起こった異変は全て、この姉妹に起因するものだった。
だとしたら、まさか・・
「伊澄さん」
僕は伊澄さんに呼びかけた。
「何かしら? 屑木くん」
伊澄瑠璃子は胸元で両腕を組んでいる。この場の状況を楽しんでいるかのようだ。
「君は、多くの人間の体に、君のお姉さんの一部を植え付けていたんだな」
「だいたいのことは、合っているわ」と伊澄さんは言った。
おそらくそうだ。
伊澄瑠璃子は、姉の一部を人間の体に植え付けていた。その目的は、それに人間の血を吸わせ、大きくするためだ。
確かに人間の血を吸った「あれ」は大きくなっていったようだ。
あの屋敷にいた学生の男女が言っていた。
「まだ完全ではない」と。
あれは、伊澄レミの体が、「元に戻っていない」そういう意味にとれる。
「だったら・・本体は、君のお姉さんの本体は、どこにいるんだ?」
伊澄レミの本体・・それはどこにいる?
「本体?」
伊澄瑠璃子は、僕の言葉に「本体って、イヤな言い方ね。屑木くんが言うのは、レミ姉さんのことだと思うけれど」
「言い方はともかく、君のお姉さんはどこにいるんだ?」
「屑木くんも何度か、出会っているはずよ」
「もしかして、あの屋敷で、白山あかね、そして、佐々木奈々の血を空中に出させた・・あの物体が君のお姉さんだったのか?」
伊澄瑠璃子は「ええ」と頷き、「ただし、レミ姉さんは、今はあの屋敷にはいないわ」と言った。
その時、僕は別のことを考えていた。
それは血の吸い方についてだ。
初めて人が血を吸われるのを見た時、それはあの屋敷で、白山あかねの血が空中に吹き出した時だ。あれが伊澄レミの本体だった。
ひょっとすると、血を空中に吸い上げるほどのパワーのある物体は、伊澄レミの本体だけではないのか。
他の伊澄レミの分身である「あれ」が宿っている人間は、皆、首からしか血を吸うことができないのではないか。つまり、本体ほどのパワーがないということだ。
おそらく、このサヤカという女もそうなのだろう。
このサヤカは、伊澄レミの分身が宿り、体の中身を奪われているだけに過ぎない。
神城が上ずった声で、
「で、でも、どうして、こんなことが・・」と、ようやくの思いで言った。
神城には、目の前の怪物女の存在自体が信じられない、そんな表情だ。
僕だって、こんな現象は信じられない。けれど、目をそむけるわけにはいかない。
同時に、神城と君島さんをこの家から出してやらなければいけない。
それは僕の義務だ。
僕は意を決して「伊澄さん、お願いだ!」と言った。
「神城と君島さんは、ここから出してやってくれ、家に帰してくれ。催眠を解いてやってくれ。この二人には何の罪もないんだ」
サヤカは、顎の関節が緩くなっているのか、口をガクガクと揺らしながら何かを言っている。「んおっ、んぷっ」と意味不明の声を出した後、
「レミ・・レミが、体の、中に」と言った。確かにそう言っている。
その目は、焦点を失っていて、左右に上下にと回転している。
そして、次に、「お・の・れ・・レミ」と、
自分の体を巣食うレミに対しての憤りの言葉・・恨み辛みのような言葉を吐いた。
僕は少しずつ理解し始めた。
渡辺さんの妹、サヤカの中に入っている「あれ」は、伊澄さんのお姉さん、伊澄レミの体の一部だ。
おそらく、これまで出会った「あれ」は、全て、伊澄さんのお姉さんの一部だったのだ。
屋敷内で初めて白山あかねが空中に噴き出した血を吸い上げたのもそうだったし、体育の大崎の中に入っていたのも、伊澄瑠璃子の姉のレミの一部だった。
つまり、この町で起こった異変は全て、この姉妹に起因するものだった。
だとしたら、まさか・・
「伊澄さん」
僕は伊澄さんに呼びかけた。
「何かしら? 屑木くん」
伊澄瑠璃子は胸元で両腕を組んでいる。この場の状況を楽しんでいるかのようだ。
「君は、多くの人間の体に、君のお姉さんの一部を植え付けていたんだな」
「だいたいのことは、合っているわ」と伊澄さんは言った。
おそらくそうだ。
伊澄瑠璃子は、姉の一部を人間の体に植え付けていた。その目的は、それに人間の血を吸わせ、大きくするためだ。
確かに人間の血を吸った「あれ」は大きくなっていったようだ。
あの屋敷にいた学生の男女が言っていた。
「まだ完全ではない」と。
あれは、伊澄レミの体が、「元に戻っていない」そういう意味にとれる。
「だったら・・本体は、君のお姉さんの本体は、どこにいるんだ?」
伊澄レミの本体・・それはどこにいる?
「本体?」
伊澄瑠璃子は、僕の言葉に「本体って、イヤな言い方ね。屑木くんが言うのは、レミ姉さんのことだと思うけれど」
「言い方はともかく、君のお姉さんはどこにいるんだ?」
「屑木くんも何度か、出会っているはずよ」
「もしかして、あの屋敷で、白山あかね、そして、佐々木奈々の血を空中に出させた・・あの物体が君のお姉さんだったのか?」
伊澄瑠璃子は「ええ」と頷き、「ただし、レミ姉さんは、今はあの屋敷にはいないわ」と言った。
その時、僕は別のことを考えていた。
それは血の吸い方についてだ。
初めて人が血を吸われるのを見た時、それはあの屋敷で、白山あかねの血が空中に吹き出した時だ。あれが伊澄レミの本体だった。
ひょっとすると、血を空中に吸い上げるほどのパワーのある物体は、伊澄レミの本体だけではないのか。
他の伊澄レミの分身である「あれ」が宿っている人間は、皆、首からしか血を吸うことができないのではないか。つまり、本体ほどのパワーがないということだ。
おそらく、このサヤカという女もそうなのだろう。
このサヤカは、伊澄レミの分身が宿り、体の中身を奪われているだけに過ぎない。
神城が上ずった声で、
「で、でも、どうして、こんなことが・・」と、ようやくの思いで言った。
神城には、目の前の怪物女の存在自体が信じられない、そんな表情だ。
僕だって、こんな現象は信じられない。けれど、目をそむけるわけにはいかない。
同時に、神城と君島さんをこの家から出してやらなければいけない。
それは僕の義務だ。
僕は意を決して「伊澄さん、お願いだ!」と言った。
「神城と君島さんは、ここから出してやってくれ、家に帰してくれ。催眠を解いてやってくれ。この二人には何の罪もないんだ」
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