75 / 118
淫行事件のこと②
しおりを挟む
「あら、そうかしら?」
急に話に入ってきたのは、君島律子だ。
神城が気分を害し、
「何よ、君島さん! 津山さんは大人しい子じゃないの」と突っぱねた。
だが、君島律子は「そう見えるだけじゃない?」と言って冷笑した。
その様子を見ていた渡辺さんが、
「君島さんの言う通りかもしれないよ」と言った。「大崎を誘惑したのは、その津山さんだと聞いている」
「ええっ!」神城の顔に驚きの表情が浮かぶ。
君島さんは「ほら、ごらんなさい」と言いたげな顔になる。
津山さんのイメージが一瞬で崩れる。だが、それは僕たちが津山さんに勝手に抱いていたイメージだ。
本当だろうか? だが、何もない所に噂は立たない。
神城は暫く沈思していたが、
「でも、淫行は淫行でしょ。津山さんがいくら誘惑してきたからって、先生の立場で生徒の誘惑に乗ってはダメよ」と委員長らしいまっとうな意見を言った。
対して、君島さんは「ふん」とそっぽを向いた。
渡辺さんは「でも、おかしいな。彼女はそんな子ではなかったということなんだな」と小さく言った。神城が「そうですよ。津山さんはそんな子じゃないです」と念押しした。
もしかすると、
「これは僕の推測ですけど」と話を切り出した。「津山さんは、何かの催眠術みたいなものにかかっていたんじゃないでしょうか? それで普段おとなしい津山さんが、本意でないようなことをしたんじゃないかと思います」
「催眠術?」
そう言った渡辺さんのそんな顔を見ると、彼は伊澄瑠璃子の周囲にある結界や、催眠については詳しく知らないと思えた。
渡辺さんは「誰が、何のためにそんなことを?」と僕に訊ねた。「僕には理解できないな」
すると、君島さんが横で、話の流れに文句を言うように
「催眠術も何も、津山さんって、そんな女の子よ。過去にも男子が彼女に誘惑されたって、話を聞いているわ」と言った。
「君島さん、その話、本当なの?」と神城が訊いた。
「本当よ。なんで私がそんな嘘をついたりするの」とつっけんどんに君島さんが答える。
僕の見方が違ったのか。
ならば、話が全然変わって見えてくる。
だが、この話には絶対に、伊澄瑠璃子が絡んでいるように思える。
そして、伊澄瑠璃子は、「不純なものは嫌い」と言っていた。
それは、体育の大崎先生のことだと思っていた。
もちろん、彼女から見れば、大崎もその対象だろう。
しかし、伊澄瑠璃子の本命は、淫行の相手の津山静香だったのではないか。
僕は神城にこう言った。
「催眠にかかっていたのは、大崎先生の方だったんじゃないか?」
催眠の対象は逆だった。
元々性癖の良くない津山さんに、催眠を使って大崎が淫行するように仕向けた。
「ええっ、屑木くん、どういうこと?」
僕は「これはあくまでも僕の想像だけど」と言って、
「伊澄さんは、不純なもの、いや、不純な人間が大嫌いなんだと思う。だから、津山さんのような女性が標的になった」
僕はそんな推測を述べた。
「屑木くん、でもそれって、何のためにそんなことをするの?」と神城が言った。
すると君島さんが「嫌いなのよ。近くにいて欲しくないんじゃない? 誰かさんみたいに」と神城に当てつけるように言った。
「ちょっと、君島さん、それどういうこと? 誰のこと?」と返した。
そんな二人を見ながら、
「君たち、仲がいいんだね」と渡辺さんが笑った。
その言葉に、二人の心に火を点ける。
「そんなわけ、ないじゃないですか!」神城が怒り、
「ふん!」と君島さんが更にそっぽを向ける。
そんな様子を微笑ましく見ていた渡辺さんは、
「話はだいたい見えてきた。君たちに声をかけて本当によかったよ」と言った。
急に話に入ってきたのは、君島律子だ。
神城が気分を害し、
「何よ、君島さん! 津山さんは大人しい子じゃないの」と突っぱねた。
だが、君島律子は「そう見えるだけじゃない?」と言って冷笑した。
その様子を見ていた渡辺さんが、
「君島さんの言う通りかもしれないよ」と言った。「大崎を誘惑したのは、その津山さんだと聞いている」
「ええっ!」神城の顔に驚きの表情が浮かぶ。
君島さんは「ほら、ごらんなさい」と言いたげな顔になる。
津山さんのイメージが一瞬で崩れる。だが、それは僕たちが津山さんに勝手に抱いていたイメージだ。
本当だろうか? だが、何もない所に噂は立たない。
神城は暫く沈思していたが、
「でも、淫行は淫行でしょ。津山さんがいくら誘惑してきたからって、先生の立場で生徒の誘惑に乗ってはダメよ」と委員長らしいまっとうな意見を言った。
対して、君島さんは「ふん」とそっぽを向いた。
渡辺さんは「でも、おかしいな。彼女はそんな子ではなかったということなんだな」と小さく言った。神城が「そうですよ。津山さんはそんな子じゃないです」と念押しした。
もしかすると、
「これは僕の推測ですけど」と話を切り出した。「津山さんは、何かの催眠術みたいなものにかかっていたんじゃないでしょうか? それで普段おとなしい津山さんが、本意でないようなことをしたんじゃないかと思います」
「催眠術?」
そう言った渡辺さんのそんな顔を見ると、彼は伊澄瑠璃子の周囲にある結界や、催眠については詳しく知らないと思えた。
渡辺さんは「誰が、何のためにそんなことを?」と僕に訊ねた。「僕には理解できないな」
すると、君島さんが横で、話の流れに文句を言うように
「催眠術も何も、津山さんって、そんな女の子よ。過去にも男子が彼女に誘惑されたって、話を聞いているわ」と言った。
「君島さん、その話、本当なの?」と神城が訊いた。
「本当よ。なんで私がそんな嘘をついたりするの」とつっけんどんに君島さんが答える。
僕の見方が違ったのか。
ならば、話が全然変わって見えてくる。
だが、この話には絶対に、伊澄瑠璃子が絡んでいるように思える。
そして、伊澄瑠璃子は、「不純なものは嫌い」と言っていた。
それは、体育の大崎先生のことだと思っていた。
もちろん、彼女から見れば、大崎もその対象だろう。
しかし、伊澄瑠璃子の本命は、淫行の相手の津山静香だったのではないか。
僕は神城にこう言った。
「催眠にかかっていたのは、大崎先生の方だったんじゃないか?」
催眠の対象は逆だった。
元々性癖の良くない津山さんに、催眠を使って大崎が淫行するように仕向けた。
「ええっ、屑木くん、どういうこと?」
僕は「これはあくまでも僕の想像だけど」と言って、
「伊澄さんは、不純なもの、いや、不純な人間が大嫌いなんだと思う。だから、津山さんのような女性が標的になった」
僕はそんな推測を述べた。
「屑木くん、でもそれって、何のためにそんなことをするの?」と神城が言った。
すると君島さんが「嫌いなのよ。近くにいて欲しくないんじゃない? 誰かさんみたいに」と神城に当てつけるように言った。
「ちょっと、君島さん、それどういうこと? 誰のこと?」と返した。
そんな二人を見ながら、
「君たち、仲がいいんだね」と渡辺さんが笑った。
その言葉に、二人の心に火を点ける。
「そんなわけ、ないじゃないですか!」神城が怒り、
「ふん!」と君島さんが更にそっぽを向ける。
そんな様子を微笑ましく見ていた渡辺さんは、
「話はだいたい見えてきた。君たちに声をかけて本当によかったよ」と言った。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
JOLENEジョリーン2・かごめは鬼屋を許さない また事件です『こわい』です。気を緩めると巻き込まれます。
尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)
ホラー
怖いホラーです。残酷描写ありです。
苦手な方は御注意ください。
完全フィクション作品です。
実在する個人・団体等とは一切関係ありません。
ジョリーン・鬼屋は人をゆるさない
の続編になります。不定期連載になる予定、少々お待たせします。
もしよろしければ前作も
お読みいただけると
よくご理解いただけると思います。
応援よろしくお願いいたします。
っていうか全然人気ないし
あんまり読まれないですけど
読者の方々 ありがたいです。
誠に、ありがとうございます。
読みやすいように、わざと行間を開けて執筆しています。
もしよければお気に入り登録・イイネ・感想など、よろしくお願いいたします。
大変励みになります。
ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる