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お茶の時間②
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「如月さんも、お茶、どうですか?」サツキさんが言った。
「ワ、ワタシが?」
如月カオリが驚いたように言った。まさか、このような場所でお茶をよばれるとは思いもしなかったのだろう。
驚く如月カオリは、
「ワタシは、以前、イズミやサツキにひどいことをしたのだぞ」と言った。
確かにそうだ。
如月カオリは、イズミの内部の思考を調べるべく、A型ドールのエレナさんや、セクシー系のローズを使って、イズミを拉致した。
その際に激しい乱闘となった。サツキさんはローズに蹴られ、僕もそれなりに酷い目に遭った。
如月カオリは、そんなことをしたドールに、お茶を出してくれるのか・・そう言っている。
「かまわないではないですか」
サツキさんは優しく言った。
「しかし・・」如月カオリは言い淀んだ。
「今、ワタシやイズミさんに何をするでもないでしょう? それに、音楽ホールでは、イズミさんを助けて頂いたそうですから。おあいこさまです」
サツキさんの表情、その声質、全てが優しい。まるで女神のようだ。
如月カオリの刺々しい態度が、サツキさんや、イズミの中に溶け込んでいくようだ。
「カオリさん。お茶をどうぞ」
テーブルにお茶を配し終えたイズミが言った。案の定、イズミは紅茶を入れている。
イズミとサツキさんの見返りのない優しさに引き込まれるように、如月カオリは敷かれた座布団に座った。
最初は不本意な表情をしていた如月カオリもすぐに慣れたのか、湯呑茶碗に手を伸ばした。
如月カオリとサツキさんは正座。イズミはいつものペタン座りで向かい合った。
何となく照れくさい僕は、少し離れたパソコンのテーブル用の座布団で胡坐をかいた。
三人のドールはそれぞれ、様子が異なる。イズミはゴシックロリータ調の出で立ち。サツキさんはどこかのOLのようだし、如月カオリは黒のパンツスーツで、どこかの国の諜報員のような雰囲気を醸し出している。
上品な手つきで如月カオリは、お茶をすすると、静かに目を閉じ、何かの瞑想に耽るような表情となった。
「カオリさん。美味しいですか?」イズミが僕の時のように訊いた。
如月カオリは、そんな種の質問には慣れていないのか「あ、ああ」と戸惑うような返事をし「おいしい」と答えた。
そして、全部飲み終えると、イズミが、
「カオリさん。二杯目のお茶をどうぞ」とまたお茶を勧めた。
「ああ、ありがとう。頂くよ」如月カオリは素直に答えた。
二人の様子を微笑ましく見ながら、如月カオリは、イズミの世界に引き摺り込まれたな、何杯も飲まされるぞ、と僕は心の中で笑った。
イズミの入れたお茶を飲み満足げな如月カオリは、今度は、イズミのティーカップを見ながら、
「それは、紅茶、というものか?」と訊いた。
「ハイ」イズミは可愛らしく答えた。
すると、如月カオリは、言いにくそうに、
「そ、それも飲んでみたいものだ」と言った。
イズミは「待ってました!」と言わんばかりに嬉しそうに茶棚から、別のティーカップを取り出し、ティーパックも用意した。
「カオリさん、お紅茶は、アッサム、ダージリン、、アールグレイ、レディーグレイのどれがよろしいですか?」とイズミが紅茶の名称を並べ立てて訊いた。
「では、そのレディーグレイにするよ」如月カオリは恥らうように答えた。
するとイズミは手慣れた手つきでティーパックの包みを開き、カップに湯を注いだ。
その人間の少女のような仕草を如月カオリはずっと見ている。
「はい、どうぞ」
イズミは如月カオリにカップを差し出した。
如月カオリは、日本茶や紅茶のようなものを飲んだことは無いのだろうか?
イズミもB型ドールのサツキさんも飲料を嗜める。もちろん、それはドールの生存要件ではない。飲まなくてもかまわない。ただの嗜好品として飲んでいるだけだ。
如月カオリにはそんな機会がなかったということなのだろうか。
ティーカップから漂う紅茶の香りに「いい匂いだ」と言って、一口すすった。
そして、「おいしい」と小さく言った。
次第に、如月カオリはこの雰囲気に打ち解けてきたのか、サツキさんに「あの時は、すまなかった」と改めて謝り、イズミにも「ひどいことをした」と言った。
イズミと如月カオリの二体のドール。それは擬似親子のような関係だ。
イズミの中には、島本さんの思念が創ったミチルがいるし、如月カオリのAIはミチルの義母のコピーだ。
そんな切ない設定の二人だが、
僕が見ている限り、そのような切なさはそれほど感じない。ただただ微笑ましい光景に見える。その光景を、僕はまるで彼女たちの保護者のような感覚で見ていた。
「ワ、ワタシが?」
如月カオリが驚いたように言った。まさか、このような場所でお茶をよばれるとは思いもしなかったのだろう。
驚く如月カオリは、
「ワタシは、以前、イズミやサツキにひどいことをしたのだぞ」と言った。
確かにそうだ。
如月カオリは、イズミの内部の思考を調べるべく、A型ドールのエレナさんや、セクシー系のローズを使って、イズミを拉致した。
その際に激しい乱闘となった。サツキさんはローズに蹴られ、僕もそれなりに酷い目に遭った。
如月カオリは、そんなことをしたドールに、お茶を出してくれるのか・・そう言っている。
「かまわないではないですか」
サツキさんは優しく言った。
「しかし・・」如月カオリは言い淀んだ。
「今、ワタシやイズミさんに何をするでもないでしょう? それに、音楽ホールでは、イズミさんを助けて頂いたそうですから。おあいこさまです」
サツキさんの表情、その声質、全てが優しい。まるで女神のようだ。
如月カオリの刺々しい態度が、サツキさんや、イズミの中に溶け込んでいくようだ。
「カオリさん。お茶をどうぞ」
テーブルにお茶を配し終えたイズミが言った。案の定、イズミは紅茶を入れている。
イズミとサツキさんの見返りのない優しさに引き込まれるように、如月カオリは敷かれた座布団に座った。
最初は不本意な表情をしていた如月カオリもすぐに慣れたのか、湯呑茶碗に手を伸ばした。
如月カオリとサツキさんは正座。イズミはいつものペタン座りで向かい合った。
何となく照れくさい僕は、少し離れたパソコンのテーブル用の座布団で胡坐をかいた。
三人のドールはそれぞれ、様子が異なる。イズミはゴシックロリータ調の出で立ち。サツキさんはどこかのOLのようだし、如月カオリは黒のパンツスーツで、どこかの国の諜報員のような雰囲気を醸し出している。
上品な手つきで如月カオリは、お茶をすすると、静かに目を閉じ、何かの瞑想に耽るような表情となった。
「カオリさん。美味しいですか?」イズミが僕の時のように訊いた。
如月カオリは、そんな種の質問には慣れていないのか「あ、ああ」と戸惑うような返事をし「おいしい」と答えた。
そして、全部飲み終えると、イズミが、
「カオリさん。二杯目のお茶をどうぞ」とまたお茶を勧めた。
「ああ、ありがとう。頂くよ」如月カオリは素直に答えた。
二人の様子を微笑ましく見ながら、如月カオリは、イズミの世界に引き摺り込まれたな、何杯も飲まされるぞ、と僕は心の中で笑った。
イズミの入れたお茶を飲み満足げな如月カオリは、今度は、イズミのティーカップを見ながら、
「それは、紅茶、というものか?」と訊いた。
「ハイ」イズミは可愛らしく答えた。
すると、如月カオリは、言いにくそうに、
「そ、それも飲んでみたいものだ」と言った。
イズミは「待ってました!」と言わんばかりに嬉しそうに茶棚から、別のティーカップを取り出し、ティーパックも用意した。
「カオリさん、お紅茶は、アッサム、ダージリン、、アールグレイ、レディーグレイのどれがよろしいですか?」とイズミが紅茶の名称を並べ立てて訊いた。
「では、そのレディーグレイにするよ」如月カオリは恥らうように答えた。
するとイズミは手慣れた手つきでティーパックの包みを開き、カップに湯を注いだ。
その人間の少女のような仕草を如月カオリはずっと見ている。
「はい、どうぞ」
イズミは如月カオリにカップを差し出した。
如月カオリは、日本茶や紅茶のようなものを飲んだことは無いのだろうか?
イズミもB型ドールのサツキさんも飲料を嗜める。もちろん、それはドールの生存要件ではない。飲まなくてもかまわない。ただの嗜好品として飲んでいるだけだ。
如月カオリにはそんな機会がなかったということなのだろうか。
ティーカップから漂う紅茶の香りに「いい匂いだ」と言って、一口すすった。
そして、「おいしい」と小さく言った。
次第に、如月カオリはこの雰囲気に打ち解けてきたのか、サツキさんに「あの時は、すまなかった」と改めて謝り、イズミにも「ひどいことをした」と言った。
イズミと如月カオリの二体のドール。それは擬似親子のような関係だ。
イズミの中には、島本さんの思念が創ったミチルがいるし、如月カオリのAIはミチルの義母のコピーだ。
そんな切ない設定の二人だが、
僕が見ている限り、そのような切なさはそれほど感じない。ただただ微笑ましい光景に見える。その光景を、僕はまるで彼女たちの保護者のような感覚で見ていた。
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