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ドールズバトル②

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 僕たちを見下ろしているローズが如月カオリに、
「カオリさま、どうしますか? このドールと、人間を」と訊いた。
 
 そう言ったローズの足元を見ながら、僕はぼんやりする意識の中で思った。
 僕は人類が、初めて直面する状況に遭遇しているのではないだろうか?
 ・・AIドールが、人間に暴力を振う。そんな状況に。

 如月カオリの所有者は飯山商事の山田課長だ。しかし、彼女は、課長のことなど無視して、行動している。
 このローズもしかりだ。彼女の所有者は飯山商事の誰かだろうが、ここにはいない。

 だが、もうこれ以上のことはしないだろう。
 そんなことがあったら、大事件だ。僕は痛む脇腹を押さえながらそう思った。

 如月カオリは、
「そうね。これ以上、ワタシたちの邪魔をしなければ、もう手荒なことは、ここでやめておくわ」と淡々と言った。
 元々、如月カオリの真の目的は、イズミの思考回路だ。
 このままでは、イズミの身が危ない。

「イズミ・・イズミには手を出すな!」大きな声で言った。
 そう言った僕の声に、ローズが険しい顔になった。
 今度は、ローズに蹴られる・・あのパワーで、
 と、思った瞬間、

「な、なに?」ローズの声。
 僕を見下ろすローズの表情には困惑したような感情が見て取れた。
 それは、イズミだった。
 小さな体のイズミが、大人の体のローズの太腿をその細い両腕で、がしっと握っている。
「イズミ!」
 イズミは膝を立て、ローズの動きを封じていた。
「な、なんなの、この小さなドール? いつのまに」
 ローズはイズミの腕を懸命に払い退けようと脚を動かしている。

 そんなローズを見て、如月カオリが、
「ローズ、何をやっているの? そんな小さなドール、あなたのパワーなら何でもないはずでしょう?」と言った。
 主人の如月カオリにそう言われたローズは、
「そのはずですが、この力は・・」と当惑した声で言った。
 ローズの脚がギギッと軋むような音がした。イズミが物凄い力でローズの動きを封じている。
「ミノルさんには、触れさせません」とイズミが言った。

「イズミ!」
 僕は懐かしいイズミに声をかけた。
 イズミは僕の方に向き直り、
「ミノルさん、お久しぶりです。ミノルさんのお友達のイズミです」
 相変わらず変な日本語でイズミはそう言った。なぜか笑顔に見える。
「イズミっ、充電切れじゃないのか?」
 イズミは動けないはずでは・・
「充電は切れかかってますが、ホジョバッテリーで稼働しています」
「補助?」
「ハイ・・補助です・・けれど、あくまでも緊急の場合の補助なので、すぐに切れますし、動きも限られています」と言ったかと思うと、イズミはふら~っとよろけた。
 危ない! と思った瞬間、イズミは背を正し、
「けれど、残ったエネルギーでこんなことくらいはできます」
 イズミはそう言ったかと思うと、掴んでいたローズの足を離し、
 今度は、如月カオリの背後にスタスタとまわり込んだ。
 そして、イズミに差し込まれたままのケーブルの片方の端子を、如月カオリの脇腹に差し込んだ。
 その行動は一瞬だった。
 あまりの早い行動に如月カオリは「えっ」と当惑の声を洩らしただけだった。
 ケーブルを差し込まれた如月カオリは、ぶるっと体を一度痙攣させた。
 そして、碧い瞳をカッと見開いた。
 ドールはケーブルを差し込まれると動けないのか、如月カオリは立ち尽くしたまま、イズミにされるがままになっている。
「ア・ア・ア」と如月カオリは断続的な機械音を出し始めた。
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