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緊急電話①

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◆緊急電話

 なんか、イヤな予感がする・・
 不安だ。
 家で一人、僕の帰りを待つイズミのことを思うと、どっと不安が押し寄せてくる。
 かといって、イズミを会社に連れてくるわけにもいかない。
 いつか、ドールを会社に連れてきてもいい時代が来ないかな?
 ・・いや、もうそんな時代になっている。あの山田課長は、自分の会社にドールを連れてきているのだから。
 ただ僕がドールを会社に連れてくることが格好悪くてできないだけだ。女子社員、特に清水さんや、佐山さんに見られたくない。
 植村だって、お母さんドールが心配だからといって、会社には持ってきたりはしないだろう。そんなものだ。
 いずれにせよ、今度、僕がドールを創る機会があるとしたら、真の秘書型ドールでも作って、取引先にも連れて行くことにしよう。
 いや、それも気恥ずかしい・・女子社員には見られたくない。
 要するに僕にとって、ドールというものは個人的な趣味の領域を離れるのもではないということだ。

 そんな余計なことを考えながらデスクワークに専念していると、突然、携帯のバイブ音が響いた。
 ディスプレイには「自宅」と書いてある。
 自宅からの着信だ・・イズミか?
 僕は会社の階段の踊り場に場所を映し、携帯に出た。
「もしもし・・」
 あれ、女性の声・・イズミではない。
「井村くん? 私です・・島本です」
 島本さん? ええっ!
 どうして、島本さんが、僕の自宅から、僕の携帯に電話をかけているんだ?
 状況が全く把握できない。
「井村くん・・大変なのよ」
 島本さんの息が荒い。初めて電話を通しての島本さんの声だ。
「何が大変なんですか?・・というか、その前に、どうして島本さんが、僕の家にいるんですか?」
 まさか、コードレスの子機を使って、島本さんの部屋からかけているわけでもないだろう。島本さんは僕の部屋の中にいる。

「ええ、今、井村くんの部屋にいるの・・短縮ダイヤルのメモに、井村くんの携帯のナンバーがあったから、かけることができたのよ」
 イズミ用に僕の携帯の短縮ダイヤルをメモして置いてある。島本さんはそれを見てかけた、ということか。それはそれで良しとして、
「イズミは、今、イズミはどこにいるんですか?」
 僕の問いかけにしばらくの沈黙の後、
「それが・・イズミちゃん、出ていったのよ」
 出ていった? 自分で・・家出か?
「どういうことですか? 説明してください。全然わかんないです」
 僕が急かすように訊ねると島本さんは、
「初めから、ちゃんと話すわね」と言って、
 落ち着きを取り戻したのか、改めて話を始めた。
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