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如月カオリ②
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イズミを盗撮した社員のことか。そいつに、秘書ドールを売ったということか。
「ドールの所有者は変更できるんですか?」
確か、山田課長はA型ドールの所有者の証であるカードを持っていたはずだ。
「ああ・・簡単だ。カードの名義・・つまり所有者の名義を変更するだけのことだ。車と同じだよ」
なるほど・・簡単そうだ。
ならば、山田課長が名前を付けた「カオリ」という名のドールはどんなタイプなんだろう?
以前の秘書ドールと同じように国産のA型ドールか?
新しいドールが山田課長の秘書的役割をしているということか。
そう思った時、喫茶店のドアが開くチャイムが聞こえ、一人の女性が入ってきた。
そして、ツカツカと靴音を立てながら、こちらに向かってくる。しなやかな動きだ。
彼女・・いや、あのドールが「カオリ」という名のドールに違いない。
しかし、あの容姿・・まるで女スパイ、あるいは何かの使命を託されたエージェントにも見える格好だ。
ボディラインにピタッとフィットした黒のパンツスーツに、サングラス・・AIドールにサングラスの必要性があるのかどうかは疑問だが。
全体的に女性のセクシーさを強調しているスタイルだ。それにドールだけあって、そのセクシーさは完璧だ。隙がない。
そんな黒のドールは、こちらの席を確認すると、更にツカツカと寄ってきて、山田課長の横の席を指し「私はこちらの席でよろしいでしょうか?」と言った。
山田課長はカオリという名のドールを横に座らせ、
「こちらは、取引先の井村くんだ」と僕を紹介した。
「ハジメマシテ・・カオリと言います」とドールのカオリさんは深く挨拶をした。長い髪を簡易なヘアゴムで留めたポニーテールだ。
こちらも恐縮して「井村です」ときっちりと応えた。
彼女とどんな会話を進めていいかわからないでいると、山田課長が、
「どうだ。カオリはいいだろう?」と自慢げに笑った。
そして、「カオリは、妻にも内緒のドールだ」と言った。
・・ということは、性的な目的に創ったドールということか?
「カオリ、サングラスをとりたまえ。井村くんに失礼だろ」
山田課長にそう言われたカオリさんは「失礼しました」と言ってサングラスを外した。
そこに現れた顔は驚くべきほどの美貌だった。
美貌の中の瞳・・それは青色だった。
黒色の髪に、青い瞳・・アンバランスだ。それで、サングラスをしているのか?
それに冷徹な顔・・AIドールのせいか、元々がそうなのか、感情のとらえどころのない冷たい顔にも見える。
僕がドールを一通り見るのを見計らって、山田課長は、
「彼女はね、国産A型ドールの特別仕上げなんだよ」と話を切り出した。
「特別仕上げ?・・ですか」
山田課長の口調の強さに圧倒されながら訊ねる。
「プロポーションや顔を、山田課長の好みに合うように、事細かに入れ込んだんじゃないのですか?」
フィギュアプリンターによるA型ドールの製作には、膨大な量のデータをインプットしなければならない。
僕が、自前の知識で尋ねると、「さすが、井村くん。ドールを持っているだけあって、よく知っているね」と持ち上げ、
「特別仕上げのA型ドールは、もっと簡単なんだよ」と言って、
「カオリは、メーカーの提供するドールタイプの中から選ぶだけでいいんだ。膨大なインプットシートに入力する面倒もない」と豪語した。
ということは、カオリさんの容姿は山田課長の好みのプロポーションではなく、メーカーの提供するプロポーションということになる。
すると、その顔や体つきだけではなく、その人格も販売会社のオリジナルということか。
メーカー指定のカオリさんはどのような人格を持つのだろう。
インプットデータでもなく、思念の伝達による作成でもない。
山田課長は、「インプットタイプのA型は、私に言わせれば、もう古いね」と、さも分かったかのようなセリフを吐いた。
それは、山田課長にとってだけのことだろう。インプットするのが面倒なだけのことだ。
理想のドールを創りたい人間はいくらでもいるだろう。
更に山田課長は、にやにやの笑顔で、
「私はね。子供の頃、『007』に憧れていてね。ジェームスボンドになった気分に浸れる・・そんな夢を叶えてくれるようなドールが欲しかったんだよ。そしたら、それが販売サイトにたまたまあった・・それだけのことなんだよ」
なるほど・・それで、このような服装に身を包んでいるのか。
それにしても、山田課長の子供の頃の夢だと? 知りたくもないが、
映画「007」のお色気担当のボンドガール・・山田氏は、そんなセクシーな彼女が欲しかった・・そういうことか?
ということは、やはり、山田課長は性的使用のために、このドールを・・
僕がそう思っていると、
「君、勘違いしないでもらいたいのだが、私は浮気はしない主義でね、カオリはあくまでも、子供の頃の憧れの対象なんだよ」
「憧れの対象? ですか」
「そうだよ・・つまり、観葉植物みたいなものだ・・いや、盆栽かな? ま、どっちでもいい。そんな植物のような女に秘書をさせている」
大根から観葉植物か・・どうも山田課長の例えはよく理解できないし、センスもない。
「ドールの所有者は変更できるんですか?」
確か、山田課長はA型ドールの所有者の証であるカードを持っていたはずだ。
「ああ・・簡単だ。カードの名義・・つまり所有者の名義を変更するだけのことだ。車と同じだよ」
なるほど・・簡単そうだ。
ならば、山田課長が名前を付けた「カオリ」という名のドールはどんなタイプなんだろう?
以前の秘書ドールと同じように国産のA型ドールか?
新しいドールが山田課長の秘書的役割をしているということか。
そう思った時、喫茶店のドアが開くチャイムが聞こえ、一人の女性が入ってきた。
そして、ツカツカと靴音を立てながら、こちらに向かってくる。しなやかな動きだ。
彼女・・いや、あのドールが「カオリ」という名のドールに違いない。
しかし、あの容姿・・まるで女スパイ、あるいは何かの使命を託されたエージェントにも見える格好だ。
ボディラインにピタッとフィットした黒のパンツスーツに、サングラス・・AIドールにサングラスの必要性があるのかどうかは疑問だが。
全体的に女性のセクシーさを強調しているスタイルだ。それにドールだけあって、そのセクシーさは完璧だ。隙がない。
そんな黒のドールは、こちらの席を確認すると、更にツカツカと寄ってきて、山田課長の横の席を指し「私はこちらの席でよろしいでしょうか?」と言った。
山田課長はカオリという名のドールを横に座らせ、
「こちらは、取引先の井村くんだ」と僕を紹介した。
「ハジメマシテ・・カオリと言います」とドールのカオリさんは深く挨拶をした。長い髪を簡易なヘアゴムで留めたポニーテールだ。
こちらも恐縮して「井村です」ときっちりと応えた。
彼女とどんな会話を進めていいかわからないでいると、山田課長が、
「どうだ。カオリはいいだろう?」と自慢げに笑った。
そして、「カオリは、妻にも内緒のドールだ」と言った。
・・ということは、性的な目的に創ったドールということか?
「カオリ、サングラスをとりたまえ。井村くんに失礼だろ」
山田課長にそう言われたカオリさんは「失礼しました」と言ってサングラスを外した。
そこに現れた顔は驚くべきほどの美貌だった。
美貌の中の瞳・・それは青色だった。
黒色の髪に、青い瞳・・アンバランスだ。それで、サングラスをしているのか?
それに冷徹な顔・・AIドールのせいか、元々がそうなのか、感情のとらえどころのない冷たい顔にも見える。
僕がドールを一通り見るのを見計らって、山田課長は、
「彼女はね、国産A型ドールの特別仕上げなんだよ」と話を切り出した。
「特別仕上げ?・・ですか」
山田課長の口調の強さに圧倒されながら訊ねる。
「プロポーションや顔を、山田課長の好みに合うように、事細かに入れ込んだんじゃないのですか?」
フィギュアプリンターによるA型ドールの製作には、膨大な量のデータをインプットしなければならない。
僕が、自前の知識で尋ねると、「さすが、井村くん。ドールを持っているだけあって、よく知っているね」と持ち上げ、
「特別仕上げのA型ドールは、もっと簡単なんだよ」と言って、
「カオリは、メーカーの提供するドールタイプの中から選ぶだけでいいんだ。膨大なインプットシートに入力する面倒もない」と豪語した。
ということは、カオリさんの容姿は山田課長の好みのプロポーションではなく、メーカーの提供するプロポーションということになる。
すると、その顔や体つきだけではなく、その人格も販売会社のオリジナルということか。
メーカー指定のカオリさんはどのような人格を持つのだろう。
インプットデータでもなく、思念の伝達による作成でもない。
山田課長は、「インプットタイプのA型は、私に言わせれば、もう古いね」と、さも分かったかのようなセリフを吐いた。
それは、山田課長にとってだけのことだろう。インプットするのが面倒なだけのことだ。
理想のドールを創りたい人間はいくらでもいるだろう。
更に山田課長は、にやにやの笑顔で、
「私はね。子供の頃、『007』に憧れていてね。ジェームスボンドになった気分に浸れる・・そんな夢を叶えてくれるようなドールが欲しかったんだよ。そしたら、それが販売サイトにたまたまあった・・それだけのことなんだよ」
なるほど・・それで、このような服装に身を包んでいるのか。
それにしても、山田課長の子供の頃の夢だと? 知りたくもないが、
映画「007」のお色気担当のボンドガール・・山田氏は、そんなセクシーな彼女が欲しかった・・そういうことか?
ということは、やはり、山田課長は性的使用のために、このドールを・・
僕がそう思っていると、
「君、勘違いしないでもらいたいのだが、私は浮気はしない主義でね、カオリはあくまでも、子供の頃の憧れの対象なんだよ」
「憧れの対象? ですか」
「そうだよ・・つまり、観葉植物みたいなものだ・・いや、盆栽かな? ま、どっちでもいい。そんな植物のような女に秘書をさせている」
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