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分離するイズミ①
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◆分離するイズミ
「イズミは・・そのイズミ1000型のことならわかるんだな?」
イズミはコクリと頷いて「同機種なら、ムセンでわかります」
無線?・・だと。なんか新鮮な響きの言葉だな。
同機種同士の心は繋がっているのか?
「それなら、もっと詳しく訊くけど、僕は、国産ドールじゃなくて、イズミ1000型以外の機種について知りたいんだ」
植村の所持している中○規格の中○製のドール・・お母さんドールのことを。
「イズミ1000の規格外のドールですか・・少々オマチください」
イズミは首を傾げながらでも、何やら頭の中を探っているように見えた。
そして、
「ワカリマシタ」とはっきりと言った。
すごいな・・
というか、イズミとの意思疎通に、やっとここまでたどり着けた、という感じだ。
疲れた・・
「規格外のドールは・・マウイー社とボルテーク社のもの・・それ以外多数あります・・」
マウイー・・と伸ばすのか? 変な名前だな・・発音しにくい。
中○語の何かを翻訳した名前か?
僕が「そんなにあるのか?」と訊ねると、
「ヤスモノですから」とイズミは自嘲的に言った。
今、なんかイヤミに聞こえたぞ。
中○製のものは世の中に出回っている。もちろん、フィギュアプリンター以外の商品でもだ。
世の中には安物でもかまわない。なんとか用が足せたらそれでいい、という人はごまんといる。
だが、このドールについては、他の商品とは訳が違う。
・・つまり、安物の方が高価な物を遥かに凌駕している。
まだ知らないことは多くあるが、今のところはそう思える。
「イズミは、規格外のドールのことについて分かるのか?」
そして、そのドールの心・・
植村のお母さんドールの心は分かるのか?
自分をドールだと思っていない、人間だと信じているドールの心を。
すると、イズミはこう言った。
「けーぶるをつなげればわかります」
「ケーブル?」また変な事を言い出したな。
「はい・・けーぶるです」
イズミは、何度言わせるんだ、という顔をした。たぶん、僕の被害妄想だけど。
「それはLANケーブルみたいなものか?」
と僕が訊ねると、イズミはその質問には答えずにこう言った。
「けーぶるは、ミノルさんがワタシを買われた会社でハンバイしています」
「・・・販売・・」
「ドウカサレマシタカ?」
「いや、また金がかかるのか・・と思ってな」
また販売サイトで購入することになるのかよ・・うんざりだな。
問題はその価格だ・・いくらするんだよ。
「そのケーブル・・一体いくらするんだ?」
イズミは頭の中のデータベースを検索したらしく、
「5000円ほどです」と的確に答えた。
・・ほどです・・と言ったな、イズミの金銭感覚も問いただしたいぞ。
たかだか、ケーブルに5000円もだぞ!
「ミノルさん、ご不満ですか?」
「・・」
「お高いですか?」続けてイズミが言った。
「いや・・」
「ミノルさんが、欲しいのではないのですか?」
「・・植村がな・・」
「このけーぶるを購入すれば、ミノルさんの疑問はすべて解決します」
そうイズミは淡々と説明した。何かのセールスのようにも聞こえた。
「うーん・・」
イズミは僕の顔をまじまじと見ながら、
「やはり、ミノルさんは・・・」
「おいっ、少しは僕に話させろよっ!」
今、「ミノルさんはセコイ」とか言おうとしていただろ!
ケーブルは買うとしても、植村と折半することにするか・・
僕はイズミに「わかった、そのケーブルは買っておく」と答えた。
だんだんイズミが販売会社の回し者に思えてきたぞ。
イズミには、僕の考えていることを予め伝えておくことにしよう。
「いいか、僕の話を真面目に聞いてくれ」
と僕が言うと、
「ワタシは、いつもマジメです」と答えた。
「・・・」
そうかあ?・・イズミは真面目なのか? けれど、まあいい。
「僕の友達の話だ」
「トモダチ?・・では、ワタシとミノルさんのようなものですか?」
ちょっと違うかな・・いや、かなり違うようだが、この際、それはどうでもいい。
「そいつが、さっき言った規格違いのドールを持っているんだ」
「ドールをもっている?・・」
イズミの顔に疑問符が浮かんだように見えた。
「つまり、僕がイズミを持っているように、そいつもドールを持っているんだ」
僕の言い方が悪いのか? イズミの疑問符が消えないぞ。
「ミノルさんは、私を持っているのですか?」
ほら、やっぱり・・イズミは、僕の言い方に不服があるようだ。
おそらく「持っている」という言葉が気に障ったんだろうな。ほんとに、人間みたいだ。
それもAIなりのプライドというやつか。
僕は改めて、
「僕の友達が、規格の異なるドールを・・・もって・・いや、一緒に住んで・・」
あれ、どう説明していいのか分からなくなってきたぞ。
まるでこっちが、AIみたいになってきた。
そう混乱しているとイズミは、
「ミノルさんのオトモダチの持っているドールがどうかされましたか?」と言った。
気のせいか、イズミの口調が優しく聞こえた。
もしかして、僕の頭が混乱したのを見かねて、気をつかってくれたのか?
イズミにはそんな優しい面もあるのか・・
それとも、僕の心が通じたのか・・いずれにせよ、少し嬉しい。
「イズミは・・そのイズミ1000型のことならわかるんだな?」
イズミはコクリと頷いて「同機種なら、ムセンでわかります」
無線?・・だと。なんか新鮮な響きの言葉だな。
同機種同士の心は繋がっているのか?
「それなら、もっと詳しく訊くけど、僕は、国産ドールじゃなくて、イズミ1000型以外の機種について知りたいんだ」
植村の所持している中○規格の中○製のドール・・お母さんドールのことを。
「イズミ1000の規格外のドールですか・・少々オマチください」
イズミは首を傾げながらでも、何やら頭の中を探っているように見えた。
そして、
「ワカリマシタ」とはっきりと言った。
すごいな・・
というか、イズミとの意思疎通に、やっとここまでたどり着けた、という感じだ。
疲れた・・
「規格外のドールは・・マウイー社とボルテーク社のもの・・それ以外多数あります・・」
マウイー・・と伸ばすのか? 変な名前だな・・発音しにくい。
中○語の何かを翻訳した名前か?
僕が「そんなにあるのか?」と訊ねると、
「ヤスモノですから」とイズミは自嘲的に言った。
今、なんかイヤミに聞こえたぞ。
中○製のものは世の中に出回っている。もちろん、フィギュアプリンター以外の商品でもだ。
世の中には安物でもかまわない。なんとか用が足せたらそれでいい、という人はごまんといる。
だが、このドールについては、他の商品とは訳が違う。
・・つまり、安物の方が高価な物を遥かに凌駕している。
まだ知らないことは多くあるが、今のところはそう思える。
「イズミは、規格外のドールのことについて分かるのか?」
そして、そのドールの心・・
植村のお母さんドールの心は分かるのか?
自分をドールだと思っていない、人間だと信じているドールの心を。
すると、イズミはこう言った。
「けーぶるをつなげればわかります」
「ケーブル?」また変な事を言い出したな。
「はい・・けーぶるです」
イズミは、何度言わせるんだ、という顔をした。たぶん、僕の被害妄想だけど。
「それはLANケーブルみたいなものか?」
と僕が訊ねると、イズミはその質問には答えずにこう言った。
「けーぶるは、ミノルさんがワタシを買われた会社でハンバイしています」
「・・・販売・・」
「ドウカサレマシタカ?」
「いや、また金がかかるのか・・と思ってな」
また販売サイトで購入することになるのかよ・・うんざりだな。
問題はその価格だ・・いくらするんだよ。
「そのケーブル・・一体いくらするんだ?」
イズミは頭の中のデータベースを検索したらしく、
「5000円ほどです」と的確に答えた。
・・ほどです・・と言ったな、イズミの金銭感覚も問いただしたいぞ。
たかだか、ケーブルに5000円もだぞ!
「ミノルさん、ご不満ですか?」
「・・」
「お高いですか?」続けてイズミが言った。
「いや・・」
「ミノルさんが、欲しいのではないのですか?」
「・・植村がな・・」
「このけーぶるを購入すれば、ミノルさんの疑問はすべて解決します」
そうイズミは淡々と説明した。何かのセールスのようにも聞こえた。
「うーん・・」
イズミは僕の顔をまじまじと見ながら、
「やはり、ミノルさんは・・・」
「おいっ、少しは僕に話させろよっ!」
今、「ミノルさんはセコイ」とか言おうとしていただろ!
ケーブルは買うとしても、植村と折半することにするか・・
僕はイズミに「わかった、そのケーブルは買っておく」と答えた。
だんだんイズミが販売会社の回し者に思えてきたぞ。
イズミには、僕の考えていることを予め伝えておくことにしよう。
「いいか、僕の話を真面目に聞いてくれ」
と僕が言うと、
「ワタシは、いつもマジメです」と答えた。
「・・・」
そうかあ?・・イズミは真面目なのか? けれど、まあいい。
「僕の友達の話だ」
「トモダチ?・・では、ワタシとミノルさんのようなものですか?」
ちょっと違うかな・・いや、かなり違うようだが、この際、それはどうでもいい。
「そいつが、さっき言った規格違いのドールを持っているんだ」
「ドールをもっている?・・」
イズミの顔に疑問符が浮かんだように見えた。
「つまり、僕がイズミを持っているように、そいつもドールを持っているんだ」
僕の言い方が悪いのか? イズミの疑問符が消えないぞ。
「ミノルさんは、私を持っているのですか?」
ほら、やっぱり・・イズミは、僕の言い方に不服があるようだ。
おそらく「持っている」という言葉が気に障ったんだろうな。ほんとに、人間みたいだ。
それもAIなりのプライドというやつか。
僕は改めて、
「僕の友達が、規格の異なるドールを・・・もって・・いや、一緒に住んで・・」
あれ、どう説明していいのか分からなくなってきたぞ。
まるでこっちが、AIみたいになってきた。
そう混乱しているとイズミは、
「ミノルさんのオトモダチの持っているドールがどうかされましたか?」と言った。
気のせいか、イズミの口調が優しく聞こえた。
もしかして、僕の頭が混乱したのを見かねて、気をつかってくれたのか?
イズミにはそんな優しい面もあるのか・・
それとも、僕の心が通じたのか・・いずれにせよ、少し嬉しい。
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