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フロンティア②
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サイトの中にこんなキャッチコピーも見つけた。
「あなたは、老朽化したドールの介護をしたいですか?」と若干皮肉を含んだコピーだ。
だが、僕には想像もつかない世界だ。
人間が年老いた時に、AIドールに御厄介になるのならまだ話はわかる。だが、逆の場合もある、ということだ。
すると突然、耳元で、
「ミノルさん・・ワタシが不要なのですか」とイズミが話しかけてきた。
びっくりしたな、もうっ!
イズミはドールだ。人間のような気配が感じられない。真横にいてじっとしていれば、本当の置物のようだ。だが、その体には命がある。人造の命が。
「ワタシはショブンされるのですか?」
続けてイズミはそう心配そうな口調で言った。
「いや、そうじゃない。興味本位で見ているんだ」
イズミがそう思っても仕方ない。
ディスプレイには、ドールの悲惨な末路ばかりが載っている。
AIドールがどの辺まで、自分の「生」を考えているのかはわからない。
だが、たとえ、AIでも、このようなサイトを見れば、考えてしまうのではないのだろうか?
「ワタシはどうなるのか?」と。
そう思っていると、
イズミは「ホントウによかったです」と胸を撫で下ろすように言った。
僕が「何がだよ?」と訊くと、
「お料理ができないせいで、ミノルさんに、見捨てられるのか、と思いました」といつにもまして流暢に言った。
一応、そのようなことを考えていたのか。
だが、イズミ、僕はそんなことでお前を見捨てたりはしないよ。
・・僕にそんな優しい気持ちが生まれるのは珍しいことだ、そんな感慨があった。
こんな気持ちになれるのはイズミのおかげかもしれないな。
僕がそう思っていると、イズミのいつもの機械的無表情の顔に変化が見えた気がした。
イズミ、
何か、お前、今、少し笑わなかったか? 僕の目の錯覚なのか?
イズミに表情が出てきたのか? AIは顔も成長するのか。それなら少し嬉しい。
無表情のドールは、こちらとしてもやり辛い。相手が何を考えているか、わからないからだ。
それにドールとしてのイズミの笑顔が見れるのなら、
僕はイズミ・・その元となった女性・・浅丘泉美の笑顔が見れることになる。
僕は泉美の笑顔が見たかった・・
もし、そんな淡い願いが叶うのなら、たとえ安価ドール・・僕にしては高額の買い物もあながち悪い買い物とも言えない。
逆に販売サイトに感謝したいくらいだ。
そうだよな、イズミ・・
そう思い、僕はイズミの顔を改めて見た。
するとイズミは口を開き、
「これで、心配事が一つ、解消されました」
イズミは安心したように滑らかに言った。
それはもうほとんど人間の少女の声にも聞こえた。
「心配事だと?」
僕が「何が心配事だったんだ?」と訊ねると、イズミは、
「シンパイゴト・・それは、料理を作ることです・・それは厄介ごと、面倒なこと、イヤなこと、悩みの種、とも言います」
おい、すごく流暢にしゃべったな。
「何だよ。お前の頭の中の辞書は! 語彙力たっぷりだな・・どうなってる? 中身にすごく不純なものを感じるぞ」
つまり、僕のためにご飯を作ることは、厄介で、面倒で、イヤで、悩みの種っていうことかよ!
また腹が立ってきた!
もう本気でドールの作成のし直しをしたくなってきたぞ。
今度は、料理のできる、かつ、口答えをしないドール!
絶対にそんな思念を送ってやる!
だが、今はそんな金はない・・取り敢えずは現状維持しかない。
幼児体型で料理を作ることを断固として拒むイズミを養うしかない。
イズミはふてくされたのか、僕の横から離れ、島本さんセレクトの帽子を取り出し、顔を隠すようにして目深に被り、姿見用の鏡に向かった。
鏡の前に立つと、帽子の縁を上げ、前みたいに鏡の中の自分の姿を確認し始めた。
それはイズミの習慣のように見えた。
「あなたは、老朽化したドールの介護をしたいですか?」と若干皮肉を含んだコピーだ。
だが、僕には想像もつかない世界だ。
人間が年老いた時に、AIドールに御厄介になるのならまだ話はわかる。だが、逆の場合もある、ということだ。
すると突然、耳元で、
「ミノルさん・・ワタシが不要なのですか」とイズミが話しかけてきた。
びっくりしたな、もうっ!
イズミはドールだ。人間のような気配が感じられない。真横にいてじっとしていれば、本当の置物のようだ。だが、その体には命がある。人造の命が。
「ワタシはショブンされるのですか?」
続けてイズミはそう心配そうな口調で言った。
「いや、そうじゃない。興味本位で見ているんだ」
イズミがそう思っても仕方ない。
ディスプレイには、ドールの悲惨な末路ばかりが載っている。
AIドールがどの辺まで、自分の「生」を考えているのかはわからない。
だが、たとえ、AIでも、このようなサイトを見れば、考えてしまうのではないのだろうか?
「ワタシはどうなるのか?」と。
そう思っていると、
イズミは「ホントウによかったです」と胸を撫で下ろすように言った。
僕が「何がだよ?」と訊くと、
「お料理ができないせいで、ミノルさんに、見捨てられるのか、と思いました」といつにもまして流暢に言った。
一応、そのようなことを考えていたのか。
だが、イズミ、僕はそんなことでお前を見捨てたりはしないよ。
・・僕にそんな優しい気持ちが生まれるのは珍しいことだ、そんな感慨があった。
こんな気持ちになれるのはイズミのおかげかもしれないな。
僕がそう思っていると、イズミのいつもの機械的無表情の顔に変化が見えた気がした。
イズミ、
何か、お前、今、少し笑わなかったか? 僕の目の錯覚なのか?
イズミに表情が出てきたのか? AIは顔も成長するのか。それなら少し嬉しい。
無表情のドールは、こちらとしてもやり辛い。相手が何を考えているか、わからないからだ。
それにドールとしてのイズミの笑顔が見れるのなら、
僕はイズミ・・その元となった女性・・浅丘泉美の笑顔が見れることになる。
僕は泉美の笑顔が見たかった・・
もし、そんな淡い願いが叶うのなら、たとえ安価ドール・・僕にしては高額の買い物もあながち悪い買い物とも言えない。
逆に販売サイトに感謝したいくらいだ。
そうだよな、イズミ・・
そう思い、僕はイズミの顔を改めて見た。
するとイズミは口を開き、
「これで、心配事が一つ、解消されました」
イズミは安心したように滑らかに言った。
それはもうほとんど人間の少女の声にも聞こえた。
「心配事だと?」
僕が「何が心配事だったんだ?」と訊ねると、イズミは、
「シンパイゴト・・それは、料理を作ることです・・それは厄介ごと、面倒なこと、イヤなこと、悩みの種、とも言います」
おい、すごく流暢にしゃべったな。
「何だよ。お前の頭の中の辞書は! 語彙力たっぷりだな・・どうなってる? 中身にすごく不純なものを感じるぞ」
つまり、僕のためにご飯を作ることは、厄介で、面倒で、イヤで、悩みの種っていうことかよ!
また腹が立ってきた!
もう本気でドールの作成のし直しをしたくなってきたぞ。
今度は、料理のできる、かつ、口答えをしないドール!
絶対にそんな思念を送ってやる!
だが、今はそんな金はない・・取り敢えずは現状維持しかない。
幼児体型で料理を作ることを断固として拒むイズミを養うしかない。
イズミはふてくされたのか、僕の横から離れ、島本さんセレクトの帽子を取り出し、顔を隠すようにして目深に被り、姿見用の鏡に向かった。
鏡の前に立つと、帽子の縁を上げ、前みたいに鏡の中の自分の姿を確認し始めた。
それはイズミの習慣のように見えた。
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