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第1章 復活の帝王

11.悲しみ

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完全に悲しみに染まった、ロウの瞳にレイチェルは、息を飲んだ。
悲しみに染まった、ロウは美しかった。
ロウの悲しげな雰囲気は、ロウの色気を増させ、儚げな雰囲気を醸し出させる。
普段のロウが頼れる兄貴肌の美丈夫なら、今のロウは守りたくなる年下の少年だった。
それほどまでに。
ロウは、消えてしまいそうだった。
他にも分かったことがあった。
ロウがその人物を愛していたこと。
レイチェルには、それが分かってしまった。
レイチェルの胸がチクリと痛んだ気がした。
レイチェルは、それが気のせいだと、知らないふりをする。
そして、ロウの悲しみにも。
そうすれば、そうしなければ、今の関係は保つことが出来ないと思ったから。
「………ロウ。他には、何かあるのですか。」レイチェルは強引にこの話を打ち切った。
いくらか、声が固くなってしまったが、仕方がないだろう。
「あぁ。それなら、温泉が奥にある。たまたま、温泉を掘り当てたんだ。」ロウもその話で声が固くなったのが分かったのか、何も追及することなく、レイチェルの話へ乗った。
「おんせん?」レイチェルは、温泉が何か分からなかったようで、素っ頓狂な声で聴いた。
「ん?温泉を知らないのか?温泉は湯が湧き水のように湧くんだ。美容にもいいらしいぞ。天然の風呂みたいみたいなもんだ。」そう、レイチェルの疑問へ答えた。
「本当ですか!?嬉しいです。わたくし、お風呂には入れないと思っていたもので。」と、無邪気に喜んだ。
「まあ、お前が戦うことが出来るように仕込むつもりだから、汗は掻くだろう。風呂には入れるんだ、良かったな。」
「あ、そうでした。よろしくお願いします。」ロウの言葉に、レイチェルは言葉を返す。
ロウは、ゆっくりと頷いた。
「ベッドは、一人で使うか?あいにく、ベッドは一つしかないんでな。」ロウは、思い出したように、レイチェルへ聞いた。
「………い、いいえ。二人で使いましょう。………ひ、一人では大きなサイズの、ベッドですし………」レイチェルは、小さくどもりながら、顔を赤く染めて言った。
「………ああ、そうだな。一人では、デカい。二人で使うことにするか。」ロウは、何かを考えながら、そう答えたのだった。



レイチェルとロウがそれぞれ、温泉に入り、食事を取ってゆっくりしていれば、ロウがすっとレイチェルに何かを手渡した。
レイチェルは疑問に思い、それを受け取る。
二本の片手剣。
それも、女性用に軽く、使いやすいようにしたものだった。
ただ、それは使い込まれ、味が出ていた。
使い込まれているため、使いやすいことは分かり切った、逸品だ。
それも高級な材料で出来ているのか、切れ味は抜群なようである。
レイチェルは、すらりと刀身を抜いてみた。
それは、黒塗りの刃。
全てを吸い込むブラックホールのような漆黒だった。
「これは……?」レイチェルが問う。
「お前の使う剣だ。俺的には、刀が良いと思ったんだがな。在庫が無いんで、それを使え。明日から型を教える。教えた型で、素振りを千回しろ。そのあとに、魔法の訓練だ。いいな?」ロウの問いは、聞いているのではなかった。
確認だった。
「ええ。でも、なぜこれは使い込まれているのですか?」レイチェルは、聞いた。
聞いてしまった。
ロウの核心に触れる、モノに。
ロウは。
難しい顔で考え込んでいた。



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