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41.新たな誓い

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アセナが、戻ってくる確信なんてないのだ。

確かに生きている未来なんて保障されてない。

だから。

「アセナ!」
「………セルス。」

何もない草原、そこは死者の眠る地。

オプスキュラス。

約束を果たせなかったのならば、アセナはオプスキュラスに眠るのかもしれない。

セルスの声も聞けずに、空も飛べずに、ただこの地に眠るだけなのかも知れない。

セルスがいつもよりずっと強く抱きしめた。

その温度が伝わって、アセナを優しい気持ちにしてくれる。

「セルス、ごめんね。」

「どうしてお前が謝るんだよ。」

こうしてセルスが抱きしめてくれている腕を払うと決めたのは、アセナだ。

「あの日、お前は俺に“いってらっしゃい”と言った。それはな、“おかえり”の場所も用意しておくってことだろ?」

「あの時は、作れるつもりだったの。」

「じゃあ、今度は俺が言ってやるよ。………行って来い。」

セルスが“行って来い”と言った瞬間、空をかけていく風が強く強く吹き抜けて行った。

アセナが待っていたのはこの言葉だった。

「“おかえり”の場所くらい作っててやるから。」

アセナはまた、セルスの腕の中に戻れるのか、不安でならない。

“おかえり”と言ってくれる人がいる場所に、帰ってこられるのか疑問だからだ。

「1年も、だよ?」

「たった1年で根を上げんのか?俺は5年でも、10年でも…………100年でも。待っていてやるけど?」

5年後も、10年後も、100年後も。

セルスの未来には、当たり前のようにアセナが存在してる証明であった。

「キルアが言ってた。“いずれ世界を背負う少女になる”って。伝説の白竜がそう言ってんだ。自分の大事な竜を疑ったりはしないだろ?」

「私は、私はセルスの言葉だって疑ったりしない。」

セルスがくれた言葉は、いつだって嘘なんか1つもなかった。

いつだって真実を語り、誤魔化したりしなかった。

嫌な事を嫌だ、と。

辛い事を辛い、と伝えてくれていた。

「なら、キルアと俺を信じろ。それで、帰ってこい。」

「全部欲しいって言ったのはお前だから、お前は行け。それで………俺は待っていてなんかやらないからな。迎えに行ってやる。」

覚えていた。

約束の日、アセナがセルスに言った言葉を。

「セルス、大好き!」

「知ってる。」

絶対死んだりしないだろう。

アセナは、全てを手に入れ、セルスの隣に立ちたいのだから。

伝説のドラゴーネになりたいのだから。

「でも、また聞かせろよ。」

戻ってくる確信など確かにない。

生きている未来なんて保障されてなどない。

それでも、アセナは行こうと思ったのだ。

“おかえり”の場所があるのだから。

セルスが行けと言ってくれるのだから。

全てを手に入れると言った。

セルスを迎えに行くと言った。

頑張ると言った。

きっかけなんて小さなことだ。

それがどれだけ大変な事でも、アセナはそんな小さなことで進める。

その想いが、きっとアセナをもう一度セルスの隣に立たせてくれる。

ずっとずっと高くを飛んで、この地に舞い降りる。

アセナが目指す者となって。
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