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33.別れ
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ここに来たのは凄く最近のように思えるアセナだった。
だが、もうここに来る事はないんだと、理解しなければならない日がもう今日という日までやって来てしまった。
「本当に早かったね。」
「お世話になりました。」
「本当に。」
笑いながらそんな冗談を言う彼、ヒビキ省長官の横には幸せそうに微笑むコトがいた。
「元気でね、アセナちゃん。」
「はい!」
「またいつでも遊びに来てね。」
「はい、絶対!」
アセナが初めてここに来た時は、ヒビキの眼に足が竦みそうになった。
それでもセルスとの約束がアセナを支えて、今ここまで立たせてくれている。
「君が約束した男。」
不意にヒビキがアセナから眼をそらしながらそういった。
「……また、連れておいで。」
「お父さんみたいな事を言わないの、ヒビキ!」
「そういうわけじゃない!!」
「ヒビキ省長官、いつか必ずお目にかかります。」
「そう。」
ゆっくりと吹くその風が、まるでその時間を名残惜しいという事を言葉にせずとも伝えているようだった。
ヒビキとコトは黙り込み、アセナの口から言葉が発せられる事はなくなった。
「元気で。」
「はい。」
優しい顔がまるで、お母さんと呼ばれるようなものに見えてアセナは涙ぐんだ。
「早く行け。」
最初から最後まで、冷たい目をしたヒビキの優しい言葉にその涙は勢いを増して目から溢れた。
「は、い。」
久しぶりに羽織った学園の白いマントが、まるで羽のように軽い。
アセナは涙をそっと手で払いながら、キルアがまつ中庭を歩いていった。
「ねえっ、アセナ!!」
低いその声にアセナは静かに振り返った。
「これを受け取って!」
リーチ(届く)の魔法がかけられた何かが、アセナめがけて投げられた。
空中を飛んでくるその“何か”はキラキラと太陽の光を反射しながらアセナの手の中におさまった。
「それは僕の仲間がいつも身に着けていたものだ。君にあげる。」
それは黒のネックレスだった。
そこには3つの指輪があり、真ん中の指輪はまだ新しく綺麗だった。
その真ん中の一際小さな指輪には、二つには無い文字が書かれていた。
『 You are our world core. 』
私達の世界の中心は貴女。
「いいんですか!?」
遠くにいる彼に届いたかどうかは分からないが、彼はにっこりと笑いながら頷いた。
それから何か言葉をアセナに投げかけた。
「それは神から巫女に送られた加護だ。」
「…え?」
「もう行け!!」
その言葉にアセナは首をかしげながら、そっとキルアの背に乗った。
風の音がする。
この世界全てを掛けてきた、あの日の風が。
「行こう、キルア。」
『はい。』
キルアはその白い羽をフワリと動かして、いとも簡単にこの場所から足を浮かせた。
その様子を下で見ていた二人は、まるでお父さんとお母さんのように優しく見守ってくれているようだった。
「私のお父さんとお母さんも、2人みたいだったのかな………?」
アセナの独り言はすぐ傍にいるキルアにさえ届かないほど小さくて、強く吹き荒れていたその風に流されていった。
お父さんのようなヒビキ省長官。
お母さんのようなコト。
ここで出会った人達、ここで学んだ全てを、アセナは絶対に忘れたりはしない。
そんな風に思うと、空吹く風はどこかその心の誓いを聞いてくれているような気がした。
だが、もうここに来る事はないんだと、理解しなければならない日がもう今日という日までやって来てしまった。
「本当に早かったね。」
「お世話になりました。」
「本当に。」
笑いながらそんな冗談を言う彼、ヒビキ省長官の横には幸せそうに微笑むコトがいた。
「元気でね、アセナちゃん。」
「はい!」
「またいつでも遊びに来てね。」
「はい、絶対!」
アセナが初めてここに来た時は、ヒビキの眼に足が竦みそうになった。
それでもセルスとの約束がアセナを支えて、今ここまで立たせてくれている。
「君が約束した男。」
不意にヒビキがアセナから眼をそらしながらそういった。
「……また、連れておいで。」
「お父さんみたいな事を言わないの、ヒビキ!」
「そういうわけじゃない!!」
「ヒビキ省長官、いつか必ずお目にかかります。」
「そう。」
ゆっくりと吹くその風が、まるでその時間を名残惜しいという事を言葉にせずとも伝えているようだった。
ヒビキとコトは黙り込み、アセナの口から言葉が発せられる事はなくなった。
「元気で。」
「はい。」
優しい顔がまるで、お母さんと呼ばれるようなものに見えてアセナは涙ぐんだ。
「早く行け。」
最初から最後まで、冷たい目をしたヒビキの優しい言葉にその涙は勢いを増して目から溢れた。
「は、い。」
久しぶりに羽織った学園の白いマントが、まるで羽のように軽い。
アセナは涙をそっと手で払いながら、キルアがまつ中庭を歩いていった。
「ねえっ、アセナ!!」
低いその声にアセナは静かに振り返った。
「これを受け取って!」
リーチ(届く)の魔法がかけられた何かが、アセナめがけて投げられた。
空中を飛んでくるその“何か”はキラキラと太陽の光を反射しながらアセナの手の中におさまった。
「それは僕の仲間がいつも身に着けていたものだ。君にあげる。」
それは黒のネックレスだった。
そこには3つの指輪があり、真ん中の指輪はまだ新しく綺麗だった。
その真ん中の一際小さな指輪には、二つには無い文字が書かれていた。
『 You are our world core. 』
私達の世界の中心は貴女。
「いいんですか!?」
遠くにいる彼に届いたかどうかは分からないが、彼はにっこりと笑いながら頷いた。
それから何か言葉をアセナに投げかけた。
「それは神から巫女に送られた加護だ。」
「…え?」
「もう行け!!」
その言葉にアセナは首をかしげながら、そっとキルアの背に乗った。
風の音がする。
この世界全てを掛けてきた、あの日の風が。
「行こう、キルア。」
『はい。』
キルアはその白い羽をフワリと動かして、いとも簡単にこの場所から足を浮かせた。
その様子を下で見ていた二人は、まるでお父さんとお母さんのように優しく見守ってくれているようだった。
「私のお父さんとお母さんも、2人みたいだったのかな………?」
アセナの独り言はすぐ傍にいるキルアにさえ届かないほど小さくて、強く吹き荒れていたその風に流されていった。
お父さんのようなヒビキ省長官。
お母さんのようなコト。
ここで出会った人達、ここで学んだ全てを、アセナは絶対に忘れたりはしない。
そんな風に思うと、空吹く風はどこかその心の誓いを聞いてくれているような気がした。
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