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3.夢(Side試験官)
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馬鹿な子供もいたものだ。
私が、怒鳴り込んだ生徒を見て、最初に思ったのは、これだった。
私が、クラスCから、クラスDに落としてやったら、泣きつくに違いない。
そう思って落としてみた。
だが。
その生徒は、泣きついて来なかった。
卵か雛を買うか、とも思った。
だが。
卵も雛も買わなかった。
私は、驚いたものだ。
成竜を、相棒にしに行く命知らずもいたのか、と。
そして。
待ってみた。
その生徒は、1日たっても、2日たっても、3日たっても帰って来なかった。
教師の中には、死んだ、という者も現れ始めて。
もちろん、私もその中の一人だった。
私は、あの森に入って帰らなかった者を大勢知っていたのだから。
ただ、中には帰ってくると言って居る者もいた。
もうすぐ、試験は終わる。
「結局、試験に落ちたのは、あの子だけですね。」試験官の一人が言った。
私たち試験官は頷く。
一人だけ待つこともできぬものだ。
バサッ、バサッ
成竜の羽音だ。
私たちに竜型の影ができる。
私たちが上空を見上げる。
驚きのこえが上がる。
私は、ぽかんと口をあけ、目を丸くしてその竜を見た。
その竜は。
雪のような純白の鱗を持つ竜。
古の遺跡などからたまに発掘される文献に載っている。
___伝説の白竜であった。
なぜ白竜が伝説と云われるかというと、その希少性もさることながら、歴史上でたった7人しかいなかったドラグーンのうちの一人の騎竜が、白竜だったのだ。
それ故にドラグーンになるためには、白竜と黒竜を騎竜にすれば、ドラグーンになる確率が上がるのだという伝承ができるほどである。
それでも、ドラグーンは歴史上に7人しかいないが。
生徒も驚き、感嘆の声を上げる。
伝承では、有名な白竜であるが、見た者は誰一人だっていないのだ。
生徒がはしゃぐのは、よくわかる。
だが、その背にクラスDの生徒が騎乗していると知ったら、どのような反応をするだろうか。
もっと優秀な生徒がいる、と。
なんでお前みたいな落ちこぼれが、と。
生徒は口々に言うだろう。
表では、称え。
裏では、非難する。
そのような未来がありありと目に浮かぶ。
教師はクラスDの生徒を心配しているが、内心では羨ましい、と何故落ちこぼれが、と嫉妬が渦巻いているだろう。
私もそうだ。
あの伝説の白竜を、私の竜に出来たなら、と。
子供のときに幾度となく想い描いていた。
ドラゴーネスクールをクラスSの首席で卒業し、かの名門校へと進学した私でさえもドラグーンにはなれなかった。
白竜が、ドラゴーネスクールの演習場に優雅に舞い降り、
ぴょん、とクラスDの生徒が白竜の背から飛び降りた。
とことこ、と試験官の目の前まで来ると、
「試験…合格ですよね?」と、クラスDの少女は聞いた。
「合格だ。」
声が震えなかっただけ、良かっただろう。
「やったよ、キルア!!」少女は、自分の竜のもとへかけていき、報告する。
『よかったです。』キルア、と名付けされた白竜はそう言って、微笑した。
声もなんと美しいのだろう。
私は、新たな伝説の予感に目を見張った。
私が、怒鳴り込んだ生徒を見て、最初に思ったのは、これだった。
私が、クラスCから、クラスDに落としてやったら、泣きつくに違いない。
そう思って落としてみた。
だが。
その生徒は、泣きついて来なかった。
卵か雛を買うか、とも思った。
だが。
卵も雛も買わなかった。
私は、驚いたものだ。
成竜を、相棒にしに行く命知らずもいたのか、と。
そして。
待ってみた。
その生徒は、1日たっても、2日たっても、3日たっても帰って来なかった。
教師の中には、死んだ、という者も現れ始めて。
もちろん、私もその中の一人だった。
私は、あの森に入って帰らなかった者を大勢知っていたのだから。
ただ、中には帰ってくると言って居る者もいた。
もうすぐ、試験は終わる。
「結局、試験に落ちたのは、あの子だけですね。」試験官の一人が言った。
私たち試験官は頷く。
一人だけ待つこともできぬものだ。
バサッ、バサッ
成竜の羽音だ。
私たちに竜型の影ができる。
私たちが上空を見上げる。
驚きのこえが上がる。
私は、ぽかんと口をあけ、目を丸くしてその竜を見た。
その竜は。
雪のような純白の鱗を持つ竜。
古の遺跡などからたまに発掘される文献に載っている。
___伝説の白竜であった。
なぜ白竜が伝説と云われるかというと、その希少性もさることながら、歴史上でたった7人しかいなかったドラグーンのうちの一人の騎竜が、白竜だったのだ。
それ故にドラグーンになるためには、白竜と黒竜を騎竜にすれば、ドラグーンになる確率が上がるのだという伝承ができるほどである。
それでも、ドラグーンは歴史上に7人しかいないが。
生徒も驚き、感嘆の声を上げる。
伝承では、有名な白竜であるが、見た者は誰一人だっていないのだ。
生徒がはしゃぐのは、よくわかる。
だが、その背にクラスDの生徒が騎乗していると知ったら、どのような反応をするだろうか。
もっと優秀な生徒がいる、と。
なんでお前みたいな落ちこぼれが、と。
生徒は口々に言うだろう。
表では、称え。
裏では、非難する。
そのような未来がありありと目に浮かぶ。
教師はクラスDの生徒を心配しているが、内心では羨ましい、と何故落ちこぼれが、と嫉妬が渦巻いているだろう。
私もそうだ。
あの伝説の白竜を、私の竜に出来たなら、と。
子供のときに幾度となく想い描いていた。
ドラゴーネスクールをクラスSの首席で卒業し、かの名門校へと進学した私でさえもドラグーンにはなれなかった。
白竜が、ドラゴーネスクールの演習場に優雅に舞い降り、
ぴょん、とクラスDの生徒が白竜の背から飛び降りた。
とことこ、と試験官の目の前まで来ると、
「試験…合格ですよね?」と、クラスDの少女は聞いた。
「合格だ。」
声が震えなかっただけ、良かっただろう。
「やったよ、キルア!!」少女は、自分の竜のもとへかけていき、報告する。
『よかったです。』キルア、と名付けされた白竜はそう言って、微笑した。
声もなんと美しいのだろう。
私は、新たな伝説の予感に目を見張った。
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