上 下
6 / 17
一章

6・勉強会

しおりを挟む
「ランスさん、どうだっただろうか?」

「はい。面白いお話でした!」

夕方頃、ランスは屋敷に呼ばれ、タウと文字の読み書きの練習をしている。タウの出社が早い日は帰りも早い。そんなことから、勉強会はこの時間で落ち着いた。ランスはタウに絵本を読んでもらい、文字を学んでいる。タウが幼いころから好んでいるというその絵本は、これまた立派な装丁だ。タウの家はもともと金持ちなのだろう。

「タウ様は本がお好きなんですか?」

「ああ。友達らしい友達もいなかったし、いつも私の孤独を癒してくれた」

タウは寂しいと今も感じているのだろうかとランスは心配になった。そっと彼の大きな手に自分の手も重ねる。

「今は俺が傍にいます」

「ランスさん、そうだな。今は貴方がいるから孤独ではない」

その言葉にランスはホッとした。タウには悲しい感情のままでいて欲しくない。

「ランスさん、この前植えたスノーベリーだが、元気だろうか?」

「はい。元気ですよ。きっとタウ様に見て欲しいんでしょうね。すごく大きくなっています」

ランスがそう言ってくすりと笑うと、タウはほっとしたような表情になった。

「それは良かった。近いうちにスケッチをしに行こう」

「はい。それまでにしっかり手入れをしておきますね」

ランスとタウの間には見えないが確かなつながりが出来つつある。しかもかなり近い距離で。
お互いに話に夢中になっている時は平気なのだが、少し沈黙が続くと、意識し合ってしまう。ランスはこの時、好きだと言ってしまおうかと思うのだが、自分と屋敷の主であるタウとでは吊り合わないのではという不安から言えないでいる。そしてタウは自分をどう思っているのかと不安にもなる。彼は男で自分も男だ。同性愛ということばこそあれ、自分が該当してしまうとは思わなかった。

「ランスさん、今度読んでみたい本はあるだろうか」

「あ、えーと」

ランスは迷うふりをした。こういうふうにタウから切り出された時は勉強会も終わりに近いという証だからである。もっとタウと一緒にいたいとランスは思うようになっている。

「タウ様のお気に入りを読んでみたいです」

タウは自分と一緒にいたくないのだろうかと寂しい気持ちで笑ったら、タウがゆったりと近寄って来た。

「ランスさん、悲しい顔をしないでくれ」

え、とランスが思っている間もなく彼に唇を奪われていた。
そのまま抱き寄せられ、更に深いキスをされている。

「た、タウ様?」

自分でも真っ赤になっていると分かるほど顔が熱い。

「すまない。ランスさんがあまりにも可憐で」

「い、嫌じゃないです!そ、その俺も、タウ様の事好きです」

「ランスさん。それは本当か?」

「はい。本当です」

タウにまた抱きしめられている。彼のたくましい背中をランスはぎゅっと抱きしめた。再び口づけられている。先ほどとは違った求められているというキスだ。

「っつ、ふ・・ン」

俺、こんな声出るの?―

ランスは自分の甘い声に驚きながらタウに応えるべく必死だった。しばらくしてタウが口づけをほどく。ランスは彼にもたれかかった。頭がぼうっとする。

「ランスさん、私と恋人になって欲しい」

「え?でも俺、ただの庭師ですよ?」

「貴方は私の天使だ」

ぶわあっと顔が熱くなる。タウはどこまでも自分を天使だと思い込んでいるらしい。

「貴方が好きだ、ずっと愛させてほしい」

「お、俺もタウ様が好きです」

二人は再び抱き合っていた。

***

タウ様と恋人になっちゃった―

ランスは離れに戻ってきている。ベッドに潜り込みながらランスは先ほどのキスを思い出していた。それだけで体が反応してきてしまう。本当はタウにもっと触ってもらいたかった。だがタウに断られたのだ。今の自分ではランスをめちゃくちゃにしてしまうからと。

めちゃくちゃってなんだよ―

そう思いながら下着ごとパンツを下ろすと、反応した性器が現れる。久しく自慰などしてないが、上手く出来るだろうかと訝しみながら、ランスはそっと自身を緩く握りこんだ。
敏感になっているそこに触れるだけでぶるっと震えてしまいそうになる。

「ん、っつ、たう様・・・・もっと」

先端を擦り上げるだけでびくびくと腰が揺れる。

「や・・・ら、め」

ぐりぐりと緩急を付けながら擦る。あ、と思ったらすでに達していた。
久し振りの絶頂に、ランスは崩れ落ちる。

「タウ様にしてもらいたかったな」

そう呟いたランスはタオルで精液を拭い服を直した。

「パーティーって美味しいものが食べられるって本当かな」

明日、そのパーティーは開かれる。ランスはベッドで丸くなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結•枯れおじ隊長は冷徹な副隊長に最後の恋をする

BL
 赤の騎士隊長でありαのランドルは恋愛感情が枯れていた。過去の経験から、恋愛も政略結婚も面倒くさくなり、35歳になっても独身。  だが、優秀な副隊長であるフリオには自分のようになってはいけないと見合いを勧めるが全滅。頭を悩ませているところに、とある事件が発生。  そこでαだと思っていたフリオからΩのフェロモンの香りがして…… ※オメガバースがある世界  ムーンライトノベルズにも投稿中

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

箱庭

エウラ
BL
とある事故で異世界転生した主人公と、彼を番い認定した異世界人の話。 受けの主人公はポジティブでくよくよしないタイプです。呑気でマイペース。 攻めの異世界人はそこそこクールで強い人。受けを溺愛して囲っちゃうタイプです。 一応主人公視点と異世界人視点、最後に主人公視点で二人のその後の三話で終わる予定です。 ↑スミマセン。三話で終わらなかったです。もうしばらくお付き合い下さいませ。 R15は保険。特に戦闘シーンとかなく、ほのぼのです。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。

彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。 だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。 どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。

絶滅危惧種の俺様王子に婚約を突きつけられた小物ですが

古森きり
BL
前世、腐男子サラリーマンである俺、ホノカ・ルトソーは”女は王族だけ”という特殊な異世界『ゼブンス・デェ・フェ』に転生した。 女と結婚し、女と子どもを残せるのは伯爵家以上の男だけ。 平民と伯爵家以下の男は、同家格の男と結婚してうなじを噛まれた側が子宮を体内で生成して子どもを産むように進化する。 そんな常識を聞いた時は「は?」と宇宙猫になった。 いや、だって、そんなことある? あぶれたモブの運命が過酷すぎん? ――言いたいことはたくさんあるが、どうせモブなので流れに身を任せようと思っていたところ王女殿下の誕生日お披露目パーティーで第二王子エルン殿下にキスされてしまい――! BLoveさん、カクヨム、アルファポリス、小説家になろうに掲載。

処理中です...