僕の死亡日記

はやしかわともえ

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十七話・鏡の間

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鵺は今、どこでどうしているのだろうか?鵺は夜行性のようだから、自分の住処で眠っているのかもしれない。それがどこかはさっぱり分からない。獅子王も鵺の気配を辿れなくなるらしい。

「主人、本当にここを使えるのか?」

獅子王の言葉に僕は頷いていた。そう、間もなく長かった夏休みが終わる。そして、兄さんの通う高校の校庭で地域の夏祭りが行われるのだ。そこには、今時珍しい移動遊園地なるものが毎年やってくる。僕は記憶を手繰った。確かアトラクションの一つにミラーハウスがある。そこに鵺を閉じ込めよう、そう思ったのだった。さて、どうやったら気取られずにミラーハウスの中へ連れ込めるか。獅子王もそれが不安なようだった。

「僕たちで鵺を追い詰めよう。ミラーハウスの中まで」

「分かった、やろう」

獅子王がこくん、と頷く。この作戦にはみんなの協力が必要だ。でも、どうやったら協力してもらえるか分からない。そんな時、スマートフォンが通知音を出しながら震えた。相変わらずびっくりしてしまうな。

「空か?」

獅子王が小さくなって机に胡座をかきながら聞いてきた。僕はスマートフォンの画面を見て頷く。急にどうしたんだろう?

「詩史!移動遊園地にミラーハウスがある!そこにみんなで鵺を追い詰めないか?」

僕は思わず息をついていた。獅子王が何事かと僕の顔をじっと見上げている。

「空も同じことを思っていたみたい。みんなに鏡を持ってきてもらおうって」

「なるほど!それはいいな!」

でもそんな発信力が僕なんかにあるわけない。と思っていたら部屋のドアをノックされた。返事をすると兄さんが入ってくる。

「詩史、今度の夏祭り、ミラーハウスが…」

兄さんも同じことを考えていてくれたらしい。ミラーハウスの方が時間制限のある噴水より簡易なのは明らかだ。
僕は空の案を話した。

「なるほど、みんなに鏡を。いいな、それ。なら鏡を持ってきた人には文化祭で使えるクーポンを渡すことにしよう」

僕はその言葉に固まった。え、そんなことして大丈夫なのかな?兄さんが薄い胸を仰け反らせる。

「俺はこう見えて文化祭の実行委員長だ。それくらいの権限はある」

「すごいな!夢々!!お前はやっぱり頼りになるぜ!」

獅子王がぴょこぴょこ跳ねている。今から準備すれば間に合うだろうか?兄さんがすぐさま役所に電話してくれている。チラシはまだ刷られる前だったらしい。危なかった。役所の人になんで鏡?と兄さんは聞かれて、はっきりと「妖怪退治です」と答えていた。嘘は言ってない。役所の人もそれ以上は突っ込んでこなかった。絶対に頭が沸いてるって思われた。仕方がないけど。
鵺をこれで倒しきれるだろうか、やってみるしかないよな。
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