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四話・脱出
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蔵の中で僕たちは鏡を探している。だんだん蔵の中も暑くなってきた。そりゃあそうだろう。今は梅雨時でただでさえ湿度が高い。しかもこの狭い蔵のなかを二人の人間が動き回ってるんだから。鏡は今のところ見当たらないな。
「チッ、暑いな」
兄さんは額を腕で擦った。汗が嫌でも垂れてくる。先程買ったスポーツドリンクも底を尽きた。このままだと熱中症で倒れてしまってもおかしくない。そんなの本末転倒じゃないか。
「詩史、どうする?」
兄さんがこうして僕に何かを聞いてくる時は、大抵僕も同じことを思っている時だ。
「鏡台を壊そう。おばあちゃんの大事な物だったのかもしれないけど」
兄さんが笑う。
「ばっちゃんなら、きっと分かってくれる。二人で絶対にここから逃げよう」
僕たちは鏡台を蔵の中にあったスコップでなんとか壊した。鏡の一部をそれぞれ持つ。兄さんの推測が正しければ鏡を嫌がるはずだ。
僕たちはそっと蔵を出た。清おじさんはまだ家の中にいるんだろうか。あぁ、おばあちゃんの遺体をこれ以上放置したくない。でも今はここから逃げて大人を呼ぼう。静かに家の横を通り過ぎた。上手く逃げられたと思った瞬間だった。
「うがああぁっ」
おじさんがすごい勢いで追いかけてくる。これはやばい。鉈を振りかぶってきている。僕は咄嗟に鏡をおじさんに向けた。
「グギャアアア」
兄さんも鏡を向けている。気が付いたら、おじさんは仰向けに倒れていた。急に兄さんのスマートフォンが鳴り出す。僕のもだ。相手はお父さんだった。兄さんにはお母さんが掛けてきたらしい。もう外が薄暗くなってきているから心配していたんだろう。僕たちは二人に詳しく事情を説明した。しばらくそこにいるとパトカーがやって来る。救急車のサイレンも鳴り響いていた。何事かと近隣の人が顔を出す。さっきまで人の気配なんてなかったのに。
傍に停まったパトカーから警察の人が三人降りてきた。皆制服を着ている。
「君たちが夢々くんと詩史くん?」
僕たちは頷いた。
「とりあえず病院に行こう、ね?」
僕たちは促されるまま救急車に乗っていた。
「痛いよね?これ」
救急隊の人が僕に目を合わせて聞いてくれる。気が付くと右足首からかなり出血していた。
いつの間に怪我をしていたんだろう?痛くないから困る。僕はどうしたんだ?
「君、こんな怪我でよく歩けたね。とりあえず応急処置だけするからね」
「はい」
病院に着いたら傷口を縫うからと言われて麻酔をした。それが恐ろしい程痛かった。
「チッ、暑いな」
兄さんは額を腕で擦った。汗が嫌でも垂れてくる。先程買ったスポーツドリンクも底を尽きた。このままだと熱中症で倒れてしまってもおかしくない。そんなの本末転倒じゃないか。
「詩史、どうする?」
兄さんがこうして僕に何かを聞いてくる時は、大抵僕も同じことを思っている時だ。
「鏡台を壊そう。おばあちゃんの大事な物だったのかもしれないけど」
兄さんが笑う。
「ばっちゃんなら、きっと分かってくれる。二人で絶対にここから逃げよう」
僕たちは鏡台を蔵の中にあったスコップでなんとか壊した。鏡の一部をそれぞれ持つ。兄さんの推測が正しければ鏡を嫌がるはずだ。
僕たちはそっと蔵を出た。清おじさんはまだ家の中にいるんだろうか。あぁ、おばあちゃんの遺体をこれ以上放置したくない。でも今はここから逃げて大人を呼ぼう。静かに家の横を通り過ぎた。上手く逃げられたと思った瞬間だった。
「うがああぁっ」
おじさんがすごい勢いで追いかけてくる。これはやばい。鉈を振りかぶってきている。僕は咄嗟に鏡をおじさんに向けた。
「グギャアアア」
兄さんも鏡を向けている。気が付いたら、おじさんは仰向けに倒れていた。急に兄さんのスマートフォンが鳴り出す。僕のもだ。相手はお父さんだった。兄さんにはお母さんが掛けてきたらしい。もう外が薄暗くなってきているから心配していたんだろう。僕たちは二人に詳しく事情を説明した。しばらくそこにいるとパトカーがやって来る。救急車のサイレンも鳴り響いていた。何事かと近隣の人が顔を出す。さっきまで人の気配なんてなかったのに。
傍に停まったパトカーから警察の人が三人降りてきた。皆制服を着ている。
「君たちが夢々くんと詩史くん?」
僕たちは頷いた。
「とりあえず病院に行こう、ね?」
僕たちは促されるまま救急車に乗っていた。
「痛いよね?これ」
救急隊の人が僕に目を合わせて聞いてくれる。気が付くと右足首からかなり出血していた。
いつの間に怪我をしていたんだろう?痛くないから困る。僕はどうしたんだ?
「君、こんな怪我でよく歩けたね。とりあえず応急処置だけするからね」
「はい」
病院に着いたら傷口を縫うからと言われて麻酔をした。それが恐ろしい程痛かった。
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