僕の死亡日記

はやしかわともえ

文字の大きさ
上 下
2 / 22

二話・殺人鬼

しおりを挟む
週末の天気は土日とも晴れだった。僕と夢々兄さんはゆったり電車に揺られている。おじいちゃんの家は都内から少し外れた山の方にあった。駅から歩いていけるのが幸いだ。今、その家にはおばあちゃんと、お母さんの弟のきよおじさんが暮らしている。清おじさんはずっと働いていない。僕がなんで?って幼い頃に聞いたら、精神の病だからとお母さんが投げつけるように言った。僕はそれきりお母さんとその話をしたことがない。あの時のお母さんは本当に怖くて、僕は泣き出したのを覚えている。そんな僕にお母さんは謝りながら僕をあやしてくれた。今日、ここに来ることを僕たちは両親に話していない。適当に図書館で一日勉強すると言ってある。嘘をついたのは悪いことだけど、そうでもしなかったらここに来られていない。絶対に駄目だって言われるだろう。でもたまにはおじいちゃんのお墓参りがしたい。

「詩史、これ預けとくわ」

兄さんが僕の手のひらに鍵を置いた。

「蔵の鍵。母さんが鏡台に隠してた」

「ええ?それを持ってきたの?」

夢々兄さんが笑う。

「ばーか。合鍵に決まってるだろーが」

「兄さん、本当にお宝があると思ってるんだね」

僕は呆れて笑うしかなかった。電車が目的地に到着する。僕たちは無人の駅を通り抜けて、田園が広がる道をひたすら歩き出した。今日は本当に暑い。じりじりと熱が体に籠もってくる。僕たちは来る前にコンビニでスポーツドリンクを買っていた。それは正解だったと言える。

「お、見えてきたな」

おじいちゃんの家は坂の上にあった。そこにももちろん田んぼがある。兄さんがインターフォンを鳴らす。でもなんの気配もない。おばあちゃんたち、出掛けてるのかな?兄さんが引き戸を引くと、それはすんなり開いた。中はますます暑い。そしてなんだか嫌な匂いがする。なんだ、この匂い。

「詩史、行くぞ」

「でも」

兄さんがどんどん中に入っていくから、僕も仕方なく後を追った。玄関で靴を脱いで、廊下を静かに歩く。
しばらく行くと誰かが倒れている。まさか。僕は目を疑った。おばあちゃんだ。うじがわいて腐りかけている。死んでいるの?

「詩史、とりあえず警察を」

「うがあっ!!」

「!!」

清おじさんが飛び掛かってきたのを僕たちは既の所で避けた。おじさんは手に鉈を持っている。まさかおばあちゃんはおじさんに殺されたの?そして僕たちも殺すつもり?

「詩史!庭まで走れ!!蔵には鍵が掛かる!そこまで振り返るな!!」

夢々兄さんが言うから僕は必死に走った。なんで、なんで、こんなことになっちゃったんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

怪談実話 その2

紫苑
ホラー
本当にあった怖い話です…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

タクシー運転手の夜話

華岡光
ホラー
世の中の全てを知るタクシー運転手。そのタクシー運転手が知ったこの世のものではない話しとは・・

ハッピーガール

床間四郎
ホラー
少女の願いはただひとつ、みんなが幸せになってほしい。しかしこの世界はそこまで単純ではなくて……

怪異語り 〜世にも奇妙で怖い話〜

ズマ@怪異語り
ホラー
五分で読める、1話完結のホラー短編・怪談集! 信じようと信じまいと、誰かがどこかで体験した怪異。

餅太郎の恐怖箱

坂本餅太郎
ホラー
坂本餅太郎が贈る、掌編ホラーの珠玉の詰め合わせ――。 不意に開かれた扉の向こうには、日常が反転する恐怖の世界が待っています。 見知らぬ町に迷い込んだ男が遭遇する不可解な住人たち。 古びた鏡に映る自分ではない“何か”。 誰もいないはずの家から聞こえる足音の正体……。 「餅太郎の恐怖箱」には、短いながらも心に深く爪痕を残す物語が詰め込まれています。 あなたの隣にも潜むかもしれない“日常の中の異界”を、ぜひその目で確かめてください。 一度開いたら、二度と元には戻れない――これは、あなたに向けた恐怖の招待状です。 --- 読み切りホラー掌編集です。 毎晩20:20更新!(予定)

怪談居酒屋~幽へようこそ~

ホラー
 コインロッカーベイビーにベッドの下男、はたまたターボババアまで。あんな怪異やこんな怪談に遭遇した人が助けを求めて駆け込む場所があった。それが怪談居酒屋『幽』  優しい美人女将といつも飲んだくれている坊主が貴方の不思議の相談にのります。  今宵も店には奇怪な体験をした人が現れて……  怪談や都市伝説を題材にしたちょっと怖くてちょっといい話。ホラーあり都市伝説講座ありの小説です。

処理中です...