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キリトからの手紙・愛斗について

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食事会からもう一週間程が経過している。
私が送った手紙はもう着いたかな。

「ムギー!キリトから手紙ー!」

ユイ兄様が封筒を振りながら駆け寄ってきた。
それは真っ白な封筒だ。
隣国のスタンプが捺されている。
ユイ兄様からその手紙を受け取る。

「ありがとう、ユイ兄様」

「ムギ、一人で読みたいよね?俺も読みたい…けど」

ユイ兄様、そわそわしている。
ユイ兄様が手紙を読みたくなるのも当たり前だ。この間のことがあるからなおさらだろう。
私は言った。

「ユイ兄様、私の部屋に来て。
一緒に読もう」

「いいん?」

「いいよ。でも出来れば…」

ユイ兄様は悪戯っぽく笑ってみせた。

「大丈夫だよ。ちゃーんと皆には黙ってるし」

「ありがとう」

私達はいつも二人で秘密を共有している。
ユイ兄様とは小さな頃からずっとそうだった。
今も変わらない。きっと、これからも。

私の部屋で二人で手紙を読んだ。
それにはこんなことが書いてある。

『親愛なる人、ムギへ

君と二人で話が出来てよかった。
医者は私が疲れているのだろうと言う。
私もそうなのだと思いたい。
先の戦争では沢山喪ったから。

だが違うんだ。
君は知っていると思うが、私の中には愛斗がいる。
私自身が愛斗だ。
君も紬という一人の、確かに在った人間だった。
君はそのことをどのように思っているのだろう。
どうか、戸惑い傷付いていないことを祈る。

私も君を愛している。

キリト』

「キリト、なんか辛そーだね」

「うん」

ユイ兄様の言う通りだった。
キリト様の文字は時折震えて掠れている。

(キリト様に会いたい…)

私は心の底から思った。今すぐ彼に会って、私は大丈夫だと伝えたい。

「キリトに会いたい?」

ふと、ユイ兄様が尋ねてくる。

「うん、会いたい」

「なら、夏休みにあるキャンプに参加しなよ」

確かそのキャンプは隣国と合同で行われるものだったはずだ。
体力育成と成績上昇を目的とするユイ兄様が絶対に行きたがらないやつだ。
毎年泣きながら帰ってきて、三日間は部屋から出てこなくなる。
お父様が新しいぬいぐるみを買うという約束をすると大抵出て来てくれる。
ユイ兄様は可愛い。


「ムギが来てくれたら俺も頑張れるんだけどなー」

私は思わず笑ってしまった。

「ユイ兄様となら私も安心だよ。
でもキリト様はキャンプにはいないんじゃ?」

「ここ見て」

ユイ兄様が差し出してきたのはキャンプ概要のプリントだった。
そこには教員の名前も書かれている。

「キリトの名前があるの」

ユイ兄様の言う通りだった。

「俺ね、先生に聞いたんだけどさ、キリトはボランティアで学校を手伝ってくれてるんだって。ムギに伝えるの遅くなってごめんね」

私はユイ兄様に抱き着いていた。

「ユイ兄様、ありがとう!」

「へへっ」

お母様に聞いたら、無事キャンプに参加出来る事になった。
お父様からはすごく心配された。
私がキャンプに行きたいなんて初めて言うし、当たり前だと思う。
でもユイ兄様もいるし、きっと大丈夫。キリト様にも会えるといいな。
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