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力試しと風邪
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次の日の朝、僕はベッドから起き上がれなかった。
体が重たくてだるいし、すごく眠たい。
もしかして最近の疲れが出ちゃったのかなあ。
確かに遠出をしたりハードだったけれど。
「姫様、失礼致します」
困っていたらシズクが部屋にやってきた。
「ジズグざん」
僕は自分の声に驚いた。なんだ?すごい声出た。
「姫様、ちょっと触らせてくださいね」
シズクが僕の額に、自分の額をくっつける。
「はい、口開けて」
僕は言われたとおりにした。
僕の額を触ったシズクはあっという間に部屋を飛び出していって、白衣を着た男の人を連れてきた。
そう、お医者さんだ。
お腹や胸に聴診器をあてられる。シズクが傍らでそれを見守っている。
「風邪ですな、よく栄養と睡眠をとるようにしてください」
「先生、ありがとうございました。
さて、姫様。なにか召し上がられますか?」
シズクに髪の毛を撫でられながら言われる。
でも今日は全く食欲がわかない。
食べないと薬が飲めないのはわかっているんだけど。
困っていると、シズクがそうだ、と呟いて行ってしまった。
「姫様ー」
シズクが軽やかに部屋に戻ってきた。
「ふふふ、これならどうでしょう?」
シズクが笑いながら差し出してきたものを見る。それはプリンだった。
僕はプリンが大好きだ。
泰ではプリンや生クリームを使ったスイーツの類は高級品だ。普段は絶対食べさせてもらえない。
僕や泰の子供のおやつはたいてい干した柿か、芋である。
「召し上がられますか?」
僕はぶんぶん首を縦に振った。
ご飯にプリンが食べられるなんて、風邪もたまには引いてみるものだ。
喜んでプリンをもぐもぐしていると、お父さんが部屋に入ってきた。その顔色は青い。
「逸花!風邪を引いたんだって?
なにか食べたいものはあるかい?」
お父さんにかなり心配をさせてしまったらしい。声が出ないので、首を横に振った。
今いいもの食べているしね。
「殿下、姫様は私にお任せください」
シズクの力強い言葉に、お父さんは安心したようだ。
「わかった。
逸花、ゆっくり休むんだよ。あとで栄養のあるものをトキと買ってくるから!」
僕はお父さんに小さく手を振った。
さぁ、プリンを再開だ!
僕はまたプリンを堪能し始めた。
スプーンに載せるとふるふる、と揺れている。
なめらかな口当たりが優しいし、とても甘い。
そんなことをしていたらいよいよプリンはなくなってしまった。
あぁ、今度はいつ会えるんだろう。
しょんぼりしている間もなく薬を渡されて、僕は渋々水でそれを押し流した。
「さ、姫様。ここで大人しく寝ていてくださいね?」
僕は頷いた。今はそうする以外なさそうだ。シズクは僕にかかっている布団を軽く直して部屋を出ていった。
薬を飲んだせいか眠くなってきたし、一眠りしようかな。
僕は布団の中で丸くなった。
ぱちり、と目を開けると夕日が窓から差し込んでいた。もう夕方か。よく寝たなあ。
「逸花、起きたか?」
「トキ様!」
トキがベッドのそばに置いた椅子に座っていた。
まだ声は掠れてるけど、さっきよりは声が出るようだった。
トキはニッと笑って僕に封筒を渡してくる。なんだろう?まだ封も開いてない。
「今日のテストの結果だってさ」
「私が見てもいいの?」
トキが頷く。そして僕をまっすぐ見て言った。
「どんな結果でも、逸花に認められなきゃ意味ないって思ってる」
トキはそんな必死な思いで。
なんだか胸がぎゅってなった。
「トキ様、私はトキ様がお勉強頑張ってたのを知ってるよ」
「逸花」
トキが近寄ってくる。
風邪うつっちゃうかな?それは絶対避けなくちゃいけない。でも僕はすぐには拒めなかった。
「ゃ」
ぎゅ、と怖くなって目を閉じたらトキの温もりに包まれている。
僕は恐る恐る目を開けた。
「トキ様?」
上を見上げるとトキの顔がすぐ近くにあった。
ど、どうしよう。
「逸花、好きだ」
「え?」
僕の顔が一気に熱くなる。
トキが僕を好き?
「わ、私も」
トキに優しく抱き締められて嬉しかった。
でもまだ風邪が。
「トキ様、うつっちゃうから...離してください」
やんわりトキの胸を押したけど、聞いてもらえなかった。
「逸花っていつも甘い匂いするな」
「きゃあ」
トキが僕の首筋に顔を寄せる。
「トキ、何をしてるんですか?」
「げ?!」
シズクがすごく怖い顔をしている。
トキが離れてくれて、僕はホッとしていた。
「トキ!姫様に何するんですか!まったく羨まし、いやけしからん!」
シズクが今怖いことを言ったような気がするけど、きっと気のせいに違いない。
そうだ。
僕はさっきもらった封筒をハサミで慎重に開けた。
中を見る。
【トキ テスト結果】
数学 A
言語 B
社会 A+
「すごい!」
「姫様?どうされたんですか?」
「逸花?」
二人が僕の様子に気を取られたのか騒ぐのをやめて寄ってくる。
僕は二人に結果のプリントを見せた。
嬉しかった。
「トキ様って私の思った通り、すごく優秀なんですね!」
「それくらい優秀でなければ姫様のそばには置けませんよ!」
ふん、とシズクはスネているようだ。
トキは固まっている。彼は息を吸うとこう言った。
「逸花は俺を認めてくれるか?」
「当たり前です!まだ勉強を始めて間もないのに、これだけ成績がいいなんて!」
「ありがとう、逸花」
なんだかいろいろドキドキしたけれど、すごくいい一日だった。
その後、お父さんが買ってきてくれた鶏ハムを夕飯にたらふく食べたら調子が良くなって、風邪はすぐ治った。
体が重たくてだるいし、すごく眠たい。
もしかして最近の疲れが出ちゃったのかなあ。
確かに遠出をしたりハードだったけれど。
「姫様、失礼致します」
困っていたらシズクが部屋にやってきた。
「ジズグざん」
僕は自分の声に驚いた。なんだ?すごい声出た。
「姫様、ちょっと触らせてくださいね」
シズクが僕の額に、自分の額をくっつける。
「はい、口開けて」
僕は言われたとおりにした。
僕の額を触ったシズクはあっという間に部屋を飛び出していって、白衣を着た男の人を連れてきた。
そう、お医者さんだ。
お腹や胸に聴診器をあてられる。シズクが傍らでそれを見守っている。
「風邪ですな、よく栄養と睡眠をとるようにしてください」
「先生、ありがとうございました。
さて、姫様。なにか召し上がられますか?」
シズクに髪の毛を撫でられながら言われる。
でも今日は全く食欲がわかない。
食べないと薬が飲めないのはわかっているんだけど。
困っていると、シズクがそうだ、と呟いて行ってしまった。
「姫様ー」
シズクが軽やかに部屋に戻ってきた。
「ふふふ、これならどうでしょう?」
シズクが笑いながら差し出してきたものを見る。それはプリンだった。
僕はプリンが大好きだ。
泰ではプリンや生クリームを使ったスイーツの類は高級品だ。普段は絶対食べさせてもらえない。
僕や泰の子供のおやつはたいてい干した柿か、芋である。
「召し上がられますか?」
僕はぶんぶん首を縦に振った。
ご飯にプリンが食べられるなんて、風邪もたまには引いてみるものだ。
喜んでプリンをもぐもぐしていると、お父さんが部屋に入ってきた。その顔色は青い。
「逸花!風邪を引いたんだって?
なにか食べたいものはあるかい?」
お父さんにかなり心配をさせてしまったらしい。声が出ないので、首を横に振った。
今いいもの食べているしね。
「殿下、姫様は私にお任せください」
シズクの力強い言葉に、お父さんは安心したようだ。
「わかった。
逸花、ゆっくり休むんだよ。あとで栄養のあるものをトキと買ってくるから!」
僕はお父さんに小さく手を振った。
さぁ、プリンを再開だ!
僕はまたプリンを堪能し始めた。
スプーンに載せるとふるふる、と揺れている。
なめらかな口当たりが優しいし、とても甘い。
そんなことをしていたらいよいよプリンはなくなってしまった。
あぁ、今度はいつ会えるんだろう。
しょんぼりしている間もなく薬を渡されて、僕は渋々水でそれを押し流した。
「さ、姫様。ここで大人しく寝ていてくださいね?」
僕は頷いた。今はそうする以外なさそうだ。シズクは僕にかかっている布団を軽く直して部屋を出ていった。
薬を飲んだせいか眠くなってきたし、一眠りしようかな。
僕は布団の中で丸くなった。
ぱちり、と目を開けると夕日が窓から差し込んでいた。もう夕方か。よく寝たなあ。
「逸花、起きたか?」
「トキ様!」
トキがベッドのそばに置いた椅子に座っていた。
まだ声は掠れてるけど、さっきよりは声が出るようだった。
トキはニッと笑って僕に封筒を渡してくる。なんだろう?まだ封も開いてない。
「今日のテストの結果だってさ」
「私が見てもいいの?」
トキが頷く。そして僕をまっすぐ見て言った。
「どんな結果でも、逸花に認められなきゃ意味ないって思ってる」
トキはそんな必死な思いで。
なんだか胸がぎゅってなった。
「トキ様、私はトキ様がお勉強頑張ってたのを知ってるよ」
「逸花」
トキが近寄ってくる。
風邪うつっちゃうかな?それは絶対避けなくちゃいけない。でも僕はすぐには拒めなかった。
「ゃ」
ぎゅ、と怖くなって目を閉じたらトキの温もりに包まれている。
僕は恐る恐る目を開けた。
「トキ様?」
上を見上げるとトキの顔がすぐ近くにあった。
ど、どうしよう。
「逸花、好きだ」
「え?」
僕の顔が一気に熱くなる。
トキが僕を好き?
「わ、私も」
トキに優しく抱き締められて嬉しかった。
でもまだ風邪が。
「トキ様、うつっちゃうから...離してください」
やんわりトキの胸を押したけど、聞いてもらえなかった。
「逸花っていつも甘い匂いするな」
「きゃあ」
トキが僕の首筋に顔を寄せる。
「トキ、何をしてるんですか?」
「げ?!」
シズクがすごく怖い顔をしている。
トキが離れてくれて、僕はホッとしていた。
「トキ!姫様に何するんですか!まったく羨まし、いやけしからん!」
シズクが今怖いことを言ったような気がするけど、きっと気のせいに違いない。
そうだ。
僕はさっきもらった封筒をハサミで慎重に開けた。
中を見る。
【トキ テスト結果】
数学 A
言語 B
社会 A+
「すごい!」
「姫様?どうされたんですか?」
「逸花?」
二人が僕の様子に気を取られたのか騒ぐのをやめて寄ってくる。
僕は二人に結果のプリントを見せた。
嬉しかった。
「トキ様って私の思った通り、すごく優秀なんですね!」
「それくらい優秀でなければ姫様のそばには置けませんよ!」
ふん、とシズクはスネているようだ。
トキは固まっている。彼は息を吸うとこう言った。
「逸花は俺を認めてくれるか?」
「当たり前です!まだ勉強を始めて間もないのに、これだけ成績がいいなんて!」
「ありがとう、逸花」
なんだかいろいろドキドキしたけれど、すごくいい一日だった。
その後、お父さんが買ってきてくれた鶏ハムを夕飯にたらふく食べたら調子が良くなって、風邪はすぐ治った。
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