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「ふあぁ」
現在深夜3時。ルネが大きく欠伸をしている。昼間寝ていたとはいえ、やっぱり眠たくなるよな。子供たちもぐっすりだ。夜泣きをする様子はない。昼間沢山動き回っていたし疲れたんだろうな。
「ルネ、ソファで横になってなよ」
「横になったら僕、寝ちゃうよ。あとねすごくお腹空いたの」
ぐきゅるると情けない音が響く。俺は思い出していた。
「フィーナさんが夜食にってカツサンド作ってくれたみたい」
給湯室に向かうと、カツサンドが封印魔法で守られていた。おそらく防腐と虫よけだろう。皿を掴むと、それが消える。なるほど、便利な魔法だな。俺でも魔法が使えるのかな?
「わ、美味しそう」
ルネがカツサンドを見て目を輝かせた。お肉が少しレアなのがまた美味そうに見える。
「せっかくだし、食べてみよう」
俺はカツサンドを一切れ手に持った。思っていたより遥かに重たい。この分厚さ、すごいな?よし。
「あむっ…」
思い切り口に頬張ると、じゅわっと柔らかな肉から甘い脂が染み出る。なんだこの肉?歯で噛み切る前にトロけたぞ?もう一口。
「ふああー」
ルネも幸せのため息を溢している。本当にそれだけ美味いのだ。
「美味いだろう。フィーナの作るカツサンドは絶品なんだ」
やってきたのはピンフィーネさんだった。え?このヒトこんなに早く起きてるの?
「はい、美味しいです。それにしても、団長?早いですね?」
「私は毎朝この時間から訓練している。でなければ他の仕事が間に合わないからな」
ピンフィーネさんの強さはここから来ているのか。俺たちがグースカ寝てる間にすごい。
「お前は絶対に真似するなよ、ショーゴ。常人は死ぬ」
はっきり言われて俺は恐ろしくなって頷いた。
確かに死ぬよな。それからフィーナさんが降りてきて朝食を作ってくれた。厚いベーコンと目玉焼きが挟まったマフィンが美味しかった。カツサンドも食べてるのにペロリだった。フィーナさんといると太るかもな、やたら食べてしまうし。
それからしばらくするとブロリアとディアがやってくる。二人に会うのも久しぶりだな。
「あ、ショーゴ。おはよ!装備、師匠が強くしてくれたんだってね!俺ももっと頑張ってハイレベルな装備、作っちゃうよ!」
とディア。相変わらず軽いなぁー。
「飛空艇ではありがとうな」
とブロリア。二人とだんだん仲良くなってきている気がする。嬉しい。
「キィ!」
キータは当然のようにルネの頭の上に座っている。
「龍姫様が本当に好きなんだ、キータは」
ブロリアが困ったように言う。ルネは頭の上にいたキータを優しく捕まえて抱いた。真正面からキータの瞳を見つめる。それにキータが首を傾げる。愛らしい仕草だ。ルネが笑った。
「キータは、ブロリアが一番なんだよね。僕は所詮ニ番手なんだし、時々会うから特に珍しいんだよ。ね、キータ」
「キィ」
なんか肯定したみたいだな。ブロリアが手を伸ばすとタタタっとキータがブロリアの肩の上まで駆けていき丸くなる。本当に自由だよね、この子。でもブロリアのことが一番っていうのは何となく分かる。
「ディア、ブロリア。俺たち、買い物を頼まれてて」
「あっ、オッケー!いってら!」
「気を付けてな」
二人に見送られて、俺たちは簡易ギルドを出て王城都市の表側に向かった。城のそばの通路を歩いていくと表に出られるのだ。
やっぱり商店街は賑やかだなぁ。まだ店も開店したばかりのはずなのに、すでに人混みが出来ている。こうやって見ると平和っていいなぁ。
「ショーゴ、こっちこっち」
ルネに呼ばれてついていくと、おもちゃ屋という小さな看板が出ていた。ふとすると見逃してしまいそうな看板だ。よくこんな店見つけたな。ルネが店のドアを押すとカラン、とドアの鐘が鳴った。
店の中にはおもちゃの箱が乱雑に積まれている。いつ崩れてもおかしくないな。
「いらっしゃい」
奥から出てきたのは細身の男性だった。60代くらいだろうか。眼鏡をかけた気難しそうな雰囲気だった。ルネはそれに臆さず声を掛ける。
「あのー、小さな子でも楽しく遊べるおもちゃってありますか?」
「それならこの積み木がいい。子供が口に入れられないサイズに作られている」
確かに、小さな子ってなんでも口に入れちゃうもんな。気を付けてやらないとな。
「このぬいぐるみは洗濯が容易だし乾きやすいから口に入れて遊んでもいい」
ウサギのぬいぐるみとクマのぬいぐるみと猫のぬいぐるみか。ルネは満足そうに頷いた。どうやら納得したらしいな。
「それを全部、ギフト用に包んでもらいたいんですが」
「毎度。少し時間がかかるから待っていてくれ」
「はーい」
おじさんがぬいぐるみたちを箱に詰めてラッピングをし始めている。
「おじさん、僕でも遊べるおもちゃない?」
ルネは何を言い出すんだ。おじさんもびっくりしたような顔をして少し微笑んだ。
「この立体パズルが売れている」
「わ、僕パズルで遊んでみたい!ショーゴ、いい?」
「いいよ、俺にもやらせてね」
「うん!」
プレゼントも無事に決まったことだし、頼まれた買い物も素早く終わらせよう。
「また来ます」
頭を下げて店を後にした。
現在深夜3時。ルネが大きく欠伸をしている。昼間寝ていたとはいえ、やっぱり眠たくなるよな。子供たちもぐっすりだ。夜泣きをする様子はない。昼間沢山動き回っていたし疲れたんだろうな。
「ルネ、ソファで横になってなよ」
「横になったら僕、寝ちゃうよ。あとねすごくお腹空いたの」
ぐきゅるると情けない音が響く。俺は思い出していた。
「フィーナさんが夜食にってカツサンド作ってくれたみたい」
給湯室に向かうと、カツサンドが封印魔法で守られていた。おそらく防腐と虫よけだろう。皿を掴むと、それが消える。なるほど、便利な魔法だな。俺でも魔法が使えるのかな?
「わ、美味しそう」
ルネがカツサンドを見て目を輝かせた。お肉が少しレアなのがまた美味そうに見える。
「せっかくだし、食べてみよう」
俺はカツサンドを一切れ手に持った。思っていたより遥かに重たい。この分厚さ、すごいな?よし。
「あむっ…」
思い切り口に頬張ると、じゅわっと柔らかな肉から甘い脂が染み出る。なんだこの肉?歯で噛み切る前にトロけたぞ?もう一口。
「ふああー」
ルネも幸せのため息を溢している。本当にそれだけ美味いのだ。
「美味いだろう。フィーナの作るカツサンドは絶品なんだ」
やってきたのはピンフィーネさんだった。え?このヒトこんなに早く起きてるの?
「はい、美味しいです。それにしても、団長?早いですね?」
「私は毎朝この時間から訓練している。でなければ他の仕事が間に合わないからな」
ピンフィーネさんの強さはここから来ているのか。俺たちがグースカ寝てる間にすごい。
「お前は絶対に真似するなよ、ショーゴ。常人は死ぬ」
はっきり言われて俺は恐ろしくなって頷いた。
確かに死ぬよな。それからフィーナさんが降りてきて朝食を作ってくれた。厚いベーコンと目玉焼きが挟まったマフィンが美味しかった。カツサンドも食べてるのにペロリだった。フィーナさんといると太るかもな、やたら食べてしまうし。
それからしばらくするとブロリアとディアがやってくる。二人に会うのも久しぶりだな。
「あ、ショーゴ。おはよ!装備、師匠が強くしてくれたんだってね!俺ももっと頑張ってハイレベルな装備、作っちゃうよ!」
とディア。相変わらず軽いなぁー。
「飛空艇ではありがとうな」
とブロリア。二人とだんだん仲良くなってきている気がする。嬉しい。
「キィ!」
キータは当然のようにルネの頭の上に座っている。
「龍姫様が本当に好きなんだ、キータは」
ブロリアが困ったように言う。ルネは頭の上にいたキータを優しく捕まえて抱いた。真正面からキータの瞳を見つめる。それにキータが首を傾げる。愛らしい仕草だ。ルネが笑った。
「キータは、ブロリアが一番なんだよね。僕は所詮ニ番手なんだし、時々会うから特に珍しいんだよ。ね、キータ」
「キィ」
なんか肯定したみたいだな。ブロリアが手を伸ばすとタタタっとキータがブロリアの肩の上まで駆けていき丸くなる。本当に自由だよね、この子。でもブロリアのことが一番っていうのは何となく分かる。
「ディア、ブロリア。俺たち、買い物を頼まれてて」
「あっ、オッケー!いってら!」
「気を付けてな」
二人に見送られて、俺たちは簡易ギルドを出て王城都市の表側に向かった。城のそばの通路を歩いていくと表に出られるのだ。
やっぱり商店街は賑やかだなぁ。まだ店も開店したばかりのはずなのに、すでに人混みが出来ている。こうやって見ると平和っていいなぁ。
「ショーゴ、こっちこっち」
ルネに呼ばれてついていくと、おもちゃ屋という小さな看板が出ていた。ふとすると見逃してしまいそうな看板だ。よくこんな店見つけたな。ルネが店のドアを押すとカラン、とドアの鐘が鳴った。
店の中にはおもちゃの箱が乱雑に積まれている。いつ崩れてもおかしくないな。
「いらっしゃい」
奥から出てきたのは細身の男性だった。60代くらいだろうか。眼鏡をかけた気難しそうな雰囲気だった。ルネはそれに臆さず声を掛ける。
「あのー、小さな子でも楽しく遊べるおもちゃってありますか?」
「それならこの積み木がいい。子供が口に入れられないサイズに作られている」
確かに、小さな子ってなんでも口に入れちゃうもんな。気を付けてやらないとな。
「このぬいぐるみは洗濯が容易だし乾きやすいから口に入れて遊んでもいい」
ウサギのぬいぐるみとクマのぬいぐるみと猫のぬいぐるみか。ルネは満足そうに頷いた。どうやら納得したらしいな。
「それを全部、ギフト用に包んでもらいたいんですが」
「毎度。少し時間がかかるから待っていてくれ」
「はーい」
おじさんがぬいぐるみたちを箱に詰めてラッピングをし始めている。
「おじさん、僕でも遊べるおもちゃない?」
ルネは何を言い出すんだ。おじさんもびっくりしたような顔をして少し微笑んだ。
「この立体パズルが売れている」
「わ、僕パズルで遊んでみたい!ショーゴ、いい?」
「いいよ、俺にもやらせてね」
「うん!」
プレゼントも無事に決まったことだし、頼まれた買い物も素早く終わらせよう。
「また来ます」
頭を下げて店を後にした。
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