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俺たちは巨大な円盤型の飛空艇に乗っている。もちろん、ハクも一緒だ。クロガネに彼女だけを置いていくのは絶対に嫌だった。ルネを心配してここまで駆けつけてくれたわけだしな。飛空艇があってよかったな。科学力万歳だ。飛空艇は音も立てずに空中を飛んでいる。コトリタクシーでは超えられない高い山も飛空艇ならひとっ飛びである。飛空艇、便利過ぎるな。相変わらず窓のそばには近寄れないけどね。
「ハクも一緒なんて嬉しい!」
「ブル…」
ルネに撫でてもらって、ハクも嬉しそうだ。俺たちは、山々の奥にある、龍の里に向かっている。ルネが言うに、龍の里は部族別に三階層に分かれているらしい。俺たちが行くのは一番下の階層のようだ。そこの医師がルネの主治医らしい。せっかく行くんだから、ルアナさんに挨拶しなくていいのかと聞いたら、今はいいとルネにムスッとされてしまった。どうやらルアナさんに会うためには色々手続きも必要らしい。偉い人だもんな。それに神殿巡りもあるし、龍の里を観光したいところだけど、先に神殿巡りを優先した方がいいのかな?ルネはハクと外の景色を眺めている。ブブ、と端末がノイズを発し始めた。
「ショーゴさん、ルネシアは大丈夫ですか?」
お、噂をしていたらルアナさんだぞ。ルネは気が付いていないようだ。
「はい、元気です。ルアナさんには一言も挨拶しないで申し訳ありません」
「いいえ、あの子があなたを選んだのなら確かなんでしょう。私は姉として、そして長としてあの子を支えるのみです。私は子供を生めない体です。私はいつもあの子にばかり頼っています」
ルアナさんにも色々苦悩があるようだ。
「ショーゴさん、あの子と番になってくださって本当にありがとう。ルネシアを幸せにしてやって下さい」
「約束します」
俺がルアナさんにそう言うと、彼女は笑った。
「不思議ですね。他の人間だったら今の言葉を疑うのに、あなたの言葉なら何故か信頼できます」
「や…そんな…えーと」
俺はすっかり困ってしまった。ルアナさんに信用されるのはいいことだけど、買いかぶり過ぎじゃないか?
「ショーゴさん、ではまた」
あ、端末が元に戻った。
「ねえ、ショーゴ!喉渇いたー!」
ルネがハクの手綱を引きながら歩いてくる。ハクもお腹が空いてるだろう。
「じゃあ厩舎にハクを預かっておいてもらおうか」
「ブルル」
ハクの首を撫でる。俺たちは広い飛空艇内を進んだ。飛空艇は色々な人が利用している。俺たちが飛空艇に乗り込む際、世界一周ツアーという旗を持った一行に出会ったな。みんな、この星に帰ってこられて嬉しいんだろう。厩舎にハクを連れて行くと、馬番の人が顔を上げた。小柄だけどそれには似合わないほど髭もじゃなヒトだった。
「おい、若いの…」
「なんでしょう?」
振り返ると、彼が顔を輝かせている。どうしたんだろう?馬番の人はハクを示した。
「こいつぁ、ビャクヤじゃ?」
「いえ、ハクっていいます」
「そうか、俺も年を取ったもんだな。ビャクヤに出会ったのも随分前だ」
「ビャクヤのこともっと聞かせて」
ルネがハクを撫でながら言う。俺も気になるな。
馬番の人はいいとも、と髭を撫でている。
「ビャクヤはプライドがとにかく高くてな。俺はそん時、16のガキだった。まだ飛空艇の馬番になり立ての頃だ。ビャクヤは一人で厩舎にやって来て自分から中に入った。俺はこんな馬がいるのかって飛び上がったよ。ビャクヤに触ろうとすると足を蹴り上げようとする。恐ろしかったな」
「それは怖いね」
「もちろん他の馬にだって矜持はあるさ。だがビャクヤはそれを数百倍は上回っていた」
ハクが笑うように嘶いた。
「俺は毎日ビャクヤに頼み込んだ。頼むから俺にブラシを掛けさせてくれって。すごく綺麗な馬だったからな。このハクとやらも負けてねえ」
「結局、おじさんはブラシを掛けさせてもらえたの?」
ルネの言葉に、馬番の人は待っていましたとばかりに目を輝かせた。
「ビャクヤが飛空艇から降りる前日、俺はビャクヤにブラシを掛けさせてもらえた。ビャクヤは俺を優しい目でじいっと見ていたよ。なんて美人なんだって俺は感激した」
「おじさんは馬が大好きなんだね!」
「あぁ!もちろん嫁も大事だが、馬は俺の命だからな!」
なんかじんわりきてしまった。いい人だな。ハクは厩舎に入って早速食事にすることにしたらしい。干し草を食べている。
「ハクをお願いします」
「あいよ!」
俺とルネは小さなレストランに入って席に着いた。メニューを見る。
「姉さん、なんか言ってた?」
「!」
ルネは気が付かないふりをしていたらしい。俺の方が動揺してしまった。いや、やましいことはないんだから焦る必要はない。
「…えーと、ルネを頼むって。ルアナさんは子供を生めないからって」
「ん…そうなんだよね。龍って本当に生きづらい生き物でさ、妊娠自体がすごく難しいんだよ。発情期もそんなに何度も来ないしね」
「そうなんだ」
「僕はこの子を大事にする。ショーゴ、手伝ってくれる?」
「もちろん。俺はルネの番なんだから」
「ありがとう」
ルネが笑った。ぐぐ…と飛空艇が少し傾く。
「山を越え始めた。明日には龍の里に着くんじゃないかな」
「あ、持っていくお土産がない!」
ルネが噴き出す。
「お土産なら龍の里の帰りに買いなよ。その方が皆喜ぶよ」
「そっか、そうだね」
龍の里、どんなところなんだろう?楽しみだ。
「ハクも一緒なんて嬉しい!」
「ブル…」
ルネに撫でてもらって、ハクも嬉しそうだ。俺たちは、山々の奥にある、龍の里に向かっている。ルネが言うに、龍の里は部族別に三階層に分かれているらしい。俺たちが行くのは一番下の階層のようだ。そこの医師がルネの主治医らしい。せっかく行くんだから、ルアナさんに挨拶しなくていいのかと聞いたら、今はいいとルネにムスッとされてしまった。どうやらルアナさんに会うためには色々手続きも必要らしい。偉い人だもんな。それに神殿巡りもあるし、龍の里を観光したいところだけど、先に神殿巡りを優先した方がいいのかな?ルネはハクと外の景色を眺めている。ブブ、と端末がノイズを発し始めた。
「ショーゴさん、ルネシアは大丈夫ですか?」
お、噂をしていたらルアナさんだぞ。ルネは気が付いていないようだ。
「はい、元気です。ルアナさんには一言も挨拶しないで申し訳ありません」
「いいえ、あの子があなたを選んだのなら確かなんでしょう。私は姉として、そして長としてあの子を支えるのみです。私は子供を生めない体です。私はいつもあの子にばかり頼っています」
ルアナさんにも色々苦悩があるようだ。
「ショーゴさん、あの子と番になってくださって本当にありがとう。ルネシアを幸せにしてやって下さい」
「約束します」
俺がルアナさんにそう言うと、彼女は笑った。
「不思議ですね。他の人間だったら今の言葉を疑うのに、あなたの言葉なら何故か信頼できます」
「や…そんな…えーと」
俺はすっかり困ってしまった。ルアナさんに信用されるのはいいことだけど、買いかぶり過ぎじゃないか?
「ショーゴさん、ではまた」
あ、端末が元に戻った。
「ねえ、ショーゴ!喉渇いたー!」
ルネがハクの手綱を引きながら歩いてくる。ハクもお腹が空いてるだろう。
「じゃあ厩舎にハクを預かっておいてもらおうか」
「ブルル」
ハクの首を撫でる。俺たちは広い飛空艇内を進んだ。飛空艇は色々な人が利用している。俺たちが飛空艇に乗り込む際、世界一周ツアーという旗を持った一行に出会ったな。みんな、この星に帰ってこられて嬉しいんだろう。厩舎にハクを連れて行くと、馬番の人が顔を上げた。小柄だけどそれには似合わないほど髭もじゃなヒトだった。
「おい、若いの…」
「なんでしょう?」
振り返ると、彼が顔を輝かせている。どうしたんだろう?馬番の人はハクを示した。
「こいつぁ、ビャクヤじゃ?」
「いえ、ハクっていいます」
「そうか、俺も年を取ったもんだな。ビャクヤに出会ったのも随分前だ」
「ビャクヤのこともっと聞かせて」
ルネがハクを撫でながら言う。俺も気になるな。
馬番の人はいいとも、と髭を撫でている。
「ビャクヤはプライドがとにかく高くてな。俺はそん時、16のガキだった。まだ飛空艇の馬番になり立ての頃だ。ビャクヤは一人で厩舎にやって来て自分から中に入った。俺はこんな馬がいるのかって飛び上がったよ。ビャクヤに触ろうとすると足を蹴り上げようとする。恐ろしかったな」
「それは怖いね」
「もちろん他の馬にだって矜持はあるさ。だがビャクヤはそれを数百倍は上回っていた」
ハクが笑うように嘶いた。
「俺は毎日ビャクヤに頼み込んだ。頼むから俺にブラシを掛けさせてくれって。すごく綺麗な馬だったからな。このハクとやらも負けてねえ」
「結局、おじさんはブラシを掛けさせてもらえたの?」
ルネの言葉に、馬番の人は待っていましたとばかりに目を輝かせた。
「ビャクヤが飛空艇から降りる前日、俺はビャクヤにブラシを掛けさせてもらえた。ビャクヤは俺を優しい目でじいっと見ていたよ。なんて美人なんだって俺は感激した」
「おじさんは馬が大好きなんだね!」
「あぁ!もちろん嫁も大事だが、馬は俺の命だからな!」
なんかじんわりきてしまった。いい人だな。ハクは厩舎に入って早速食事にすることにしたらしい。干し草を食べている。
「ハクをお願いします」
「あいよ!」
俺とルネは小さなレストランに入って席に着いた。メニューを見る。
「姉さん、なんか言ってた?」
「!」
ルネは気が付かないふりをしていたらしい。俺の方が動揺してしまった。いや、やましいことはないんだから焦る必要はない。
「…えーと、ルネを頼むって。ルアナさんは子供を生めないからって」
「ん…そうなんだよね。龍って本当に生きづらい生き物でさ、妊娠自体がすごく難しいんだよ。発情期もそんなに何度も来ないしね」
「そうなんだ」
「僕はこの子を大事にする。ショーゴ、手伝ってくれる?」
「もちろん。俺はルネの番なんだから」
「ありがとう」
ルネが笑った。ぐぐ…と飛空艇が少し傾く。
「山を越え始めた。明日には龍の里に着くんじゃないかな」
「あ、持っていくお土産がない!」
ルネが噴き出す。
「お土産なら龍の里の帰りに買いなよ。その方が皆喜ぶよ」
「そっか、そうだね」
龍の里、どんなところなんだろう?楽しみだ。
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