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「皆の者!私に続け!!魔王を必ず仕留める!」

魔王城に入るには、橋を渡らなきゃいけない。ピンフィーネさん率いる部隊が橋の中腹に差し掛かると、城の中から騎乗した騎士が現れた。それも凄まじい数だ。そこで乱戦になる。その一方で裏側から入ろうとするレジスタンスたちがいる。
こちらにも魔王が作り出したモンスターが集まってきた。俺は龍になったルネに掴まって飛んでいる。弓を引き絞って矢を放つ。モンスター数体を消滅させた。

「ショーゴ!あそこから入る?」

ステンドグラスが張られた窓がある。俺は頷いた。ステンドグラスを蹴破って、ルネと共に、城の中に入ることが出来た。
魔王を探して早く止めよう。じゃないと、みんながやられちまうからな。魔王はきっと奥の間にいるはずだ。

「ルネ!城の奥だ!」

「うん!」

俺は走り出した。ルネは龍の姿で飛んでいる。いつの間にか龍の姿のルネの言葉が分かるようになっている。もしかしたらルネの力を得たからかもしれないな。

モンスターが俺を阻もうとしてくる。さすがに相手も龍姫であるルネに怯まなくなってきたか。俺は片手剣で敵を切った。ルネも敵に齧りついて倒している。そしていよいよ奥の間の扉が見えてきた。その瞬間、俺とルネが目の前に現れた。まるで鏡像だ。俺の動きをコピーするように動くじゃないか。

「ナニコレ」

ルネが呟くと鏡像も同じように呟いた。やりにくい。俺は俺自身に斬り掛かった。当然鍔迫り合いになる。く、こいつ強いぞ。

「いったあ!!」

ルネが叫ぶ。どうやら鏡像のダメージは俺たちに返ってくるらしい。こんなやつら、どうやって倒せば…。しばらく切り合いになった。鏡像が傷付けば俺も傷付く。くそ。こいつら、どうしたら。

「ショーゴ、痛い?治すよ」

ルネが俺の傷口をペロペロしてくる。

「ちょ、ルネ!血は舐めちゃ駄目だよ!」

鏡像がポンと消えていた。あっれ?

「消えたね?」

ルネがポカンとしている。俺も人のことは言えない。

「ショーゴ!」

ピンフィーネさんたちが駆け寄ってくる。みんな無事だったんだ。

「この奥に、魔王が?」

「多分…」

俺は両開きの扉を開けた。風が吹いている。窓が開いていたからだ。こんな風を感じたのは久しぶりだった。まるで違う世界みたいだ。そこには一つのゆりかごが置いてあった。まさか。ピンフィーネさんが駆け寄る。彼女はそれを抱えて言った。

「魔王も赤ん坊だったか」

✢✢✢

あの後、事態の収束にすごく時間がかかった。魔王?だった赤ん坊はすごくぐずり出して、なかなか泣き止まなかったのだ。ルネが抱っこした途端、眠ったから、今でもルネが赤ん坊を抱いている。
魔王であったはずの赤ん坊は女の子だった。勇者は男の子だったらしい。この子たちをこれからどうするか決めなくてはいけないと大人たちは騒いでいる。まあ気持ちは分からないでもない。でもまだ赤ちゃんなのに、そんなに目くじらを立てなくてもと言ったら、『そういう問題ではない!』とハッサに怒られてしまった。そうなのかあ、と俺は勇者の眠るゆりかごをゆらゆら揺すりながら思っていた。そう、最近の俺とルネはフィーナさんと共に子育て業務に精を出している。

「お二人が手伝ってくれて助かります」

フィーナさんがミルクを作りながら言う。

「僕たちは別にいいよ?ね、ショーゴ」

魔王はすやすや眠っている。だんだん魔王もぐずる頻度が落ちて来ている。勇者もよく眠る子だった。

「よくありませんよ、ルネシア」

あ、また端末が急に喋り出した。困ったような声の主は当然ルアナさんである。

「最古龍が少なくなっていることに変わりはないのですから」

ルネがはいはいと軽く流していた。大丈夫かな?
俺は一応と思って、ペンダントの話をルアナさんにした。ルアナさんがそれに食いつかないはずがない。

「ショーゴさん、そのことについてはお願いしても?」

「はい、お任せください」

ルアナさんが感激したようにお礼を言ってきた。
とはいってもカイエンさんの目に適う実力がなければならないわけで。ルネがポツリと呟く。

「僕も強くならなくちゃ」

「ルネシア、頼みましたよ」

「姉さんのためじゃないもん」

ルアナさんは笑って通話が途切れた。なんでルアナさんはこの端末に連絡出来るんだ?俺の疑問がルネに伝わったらしい。笑いながら答えてくれた。

「姉さんは波導を操れるからね。ショーゴの周りの波導が読めるんじゃないかな。その機械が意識を飛ばすのに一番やりやすかったのかも」

波導、恐るべし。

「ショーゴ様、龍姫様、赤ちゃんたちは私にお任せください。お姉様が言うには、色々なことを決めなくてはいけないと皆さんお忙しくされているようですし」

そう、俺たちも本来ならそちらに参加しなきゃいけないのである。ただフィーナさんが大変だからとピンフィーネさんが融通を利かせてくれていたのだ。今日はもう夜だし、明日から会議に参加しよう。ルネは嫌そうだったけど、ペンダントを取り返すことも含まれているのだ。俺たちはフィーナさんに挨拶して、ギルドのそばにある宿屋に戻った。(騎士の宿舎は今、騒がしいらしい)

✢✢✢
宿屋でシャワーを借りて部屋に戻ると、ルネがベッドに蹲っている。息も荒い。俺はルネを抱き寄せた。

「ルネ!」

体がものすごく熱い。ルネが俺を熱のこもった瞳で見つめてくる。なんだこれ。ルネは俺を見つめて言った。

「えへへ、ショーゴぉ。大好きぃ」

「うん、俺もだよ」

ルネが抱き着いてくるから俺もルネを抱き締め返した。しばらく抱き締めていると、ルネがすやすやと眠り始める。だんだん熱も引いてきたようだ。何だったんだろう?俺はルネをベッドに寝かせた。窓から空を見上げると、大きな丸い月が煌々と辺りを照らしている。とにかく明日から会議だ。ルネの様子はよく見ておいてやらないとな。俺もルネの隣に寝転んだ。ルネの頭を撫でるとむにゃむにゃ言う。可愛いな。
俺も目を閉じた。
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