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107・お散歩
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「っていうことがあってね」
茜はイブと朝食を摂りながらギルドの封印のことについて詳しく話した。
「そうか。茜は魔力を保有するようになったのか」
イブの鋭い瞳に見つめられて、茜はドギマギしてしまう。彼の瞳はなんでも見透かしてしまうようだと茜は落ち着かない気持ちになった。
「で、でも魔法が使えるかって言ったらなにも使えないし」
「うーん、多分、魔力の質が違うんだろうな」
「?」
魔力の質、と言われても茜にはよく分からない。
イブが手の平を差し出した。なんだろう、と茜が見ていると、イブの手の平の上に青白い炎が灯る。
「視えるか?」
「うん」
「これは?」
今度は何も見えなかった。茜が視えないと告げると、イブが顎に手を当てて考え始める。
「茜の魔力は不思議だな。レベルとしてはすごく弱いみたいだ。でも強力な顕現魔法が使えるみたいだし。質も特殊だな」
「俺にはさっぱり分からない」
「まぁ魔法なんてそんなもんさ。そうだ、今日の昼間に出掛けないか?行きたい所があるんだ」
「うん」
イブの行きたい所?と茜は考えたが分かるわけがない。とりあえず朝食を食べようと茜は食べるのを再開した。
✢✢✢
「茜様!お疲れ様です。そろそろ春の新作メニューを考えませんか?」
「そっかぁ。もう春なんだ」
茜は滅多にこのタワーマンションを出ないので季節がよく分からない。
「ライアの春ってどんな感じ?」
そう尋ねると、スタッフたちが考え始める。
「雨が多いですね」
「え、そうなんだ?桜とか咲かないの?」
「あぁ、サスナではいっぱい咲きますよ。ライアはとにかく、春の雨量が多いんですよね。お陰で夏場の水には困りませんけど」
「へー」
「だから屋内アトラクションとかがライアでは充実しているんですよ!どうですか?そこで社長とデートとか!!」
「で…デート…」
茜は顔が熱くなった。
「茜様が照れてるー!」
「後でデート向きなスポットの情報、送りますねー」
テキパキと猫カフェの準備は調い、店は開いた。
茜はいつも通りラテアートを描き、パンケーキの飾り付け、レジ打ちをこなした。
外を見るとよく晴れている。異次元はいつもこうなのだと誰かから聞いたのを思い出した。
(異次元だともっとお店のサイズも広げられるのかなぁ?)
茜は後でイブに聞いてみようと頭の片隅にメモした。午前が終わり、店は一度閉店する。
「茜、行くぞ」
イブが呼びに来たので茜は慌てて支度をした。久しぶりに外に出ると、思いの外暖かい。イブの足取りから裏の駐車場に向かっているようだ。
「どこに行くの?」
「まだ秘密だ」
ニッと笑ったイブに茜は目を惹きつけられた。つい色々期待してしまう自分がいる。
「茜、おいで」
手を握られて引かれる。茜は車の助手席に座っていた。
「じゃあ行くか」
車は走り出した。
茜はイブと朝食を摂りながらギルドの封印のことについて詳しく話した。
「そうか。茜は魔力を保有するようになったのか」
イブの鋭い瞳に見つめられて、茜はドギマギしてしまう。彼の瞳はなんでも見透かしてしまうようだと茜は落ち着かない気持ちになった。
「で、でも魔法が使えるかって言ったらなにも使えないし」
「うーん、多分、魔力の質が違うんだろうな」
「?」
魔力の質、と言われても茜にはよく分からない。
イブが手の平を差し出した。なんだろう、と茜が見ていると、イブの手の平の上に青白い炎が灯る。
「視えるか?」
「うん」
「これは?」
今度は何も見えなかった。茜が視えないと告げると、イブが顎に手を当てて考え始める。
「茜の魔力は不思議だな。レベルとしてはすごく弱いみたいだ。でも強力な顕現魔法が使えるみたいだし。質も特殊だな」
「俺にはさっぱり分からない」
「まぁ魔法なんてそんなもんさ。そうだ、今日の昼間に出掛けないか?行きたい所があるんだ」
「うん」
イブの行きたい所?と茜は考えたが分かるわけがない。とりあえず朝食を食べようと茜は食べるのを再開した。
✢✢✢
「茜様!お疲れ様です。そろそろ春の新作メニューを考えませんか?」
「そっかぁ。もう春なんだ」
茜は滅多にこのタワーマンションを出ないので季節がよく分からない。
「ライアの春ってどんな感じ?」
そう尋ねると、スタッフたちが考え始める。
「雨が多いですね」
「え、そうなんだ?桜とか咲かないの?」
「あぁ、サスナではいっぱい咲きますよ。ライアはとにかく、春の雨量が多いんですよね。お陰で夏場の水には困りませんけど」
「へー」
「だから屋内アトラクションとかがライアでは充実しているんですよ!どうですか?そこで社長とデートとか!!」
「で…デート…」
茜は顔が熱くなった。
「茜様が照れてるー!」
「後でデート向きなスポットの情報、送りますねー」
テキパキと猫カフェの準備は調い、店は開いた。
茜はいつも通りラテアートを描き、パンケーキの飾り付け、レジ打ちをこなした。
外を見るとよく晴れている。異次元はいつもこうなのだと誰かから聞いたのを思い出した。
(異次元だともっとお店のサイズも広げられるのかなぁ?)
茜は後でイブに聞いてみようと頭の片隅にメモした。午前が終わり、店は一度閉店する。
「茜、行くぞ」
イブが呼びに来たので茜は慌てて支度をした。久しぶりに外に出ると、思いの外暖かい。イブの足取りから裏の駐車場に向かっているようだ。
「どこに行くの?」
「まだ秘密だ」
ニッと笑ったイブに茜は目を惹きつけられた。つい色々期待してしまう自分がいる。
「茜、おいで」
手を握られて引かれる。茜は車の助手席に座っていた。
「じゃあ行くか」
車は走り出した。
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