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14・イブのこと②

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「多次元世界論って知ってるか?」

「え、学校では習ってない…かな」

茜が首を傾げると、イブが少しホッとしたような表情を見せた。

「俺の曽祖父は、その多次元世界論を実証した研究者グループの一人なんだ」

「え…そうなんだ?その…多次元世界論ってどんなの?」

なるべく簡単にと茜はイブに頼んだ。勉強は得意な方ではない。

「多次元世界論は簡単に言うと、世界が色々な次元に存在するってことだ。茜みたいに違う世界からここに来たりとか、死んだら他の世界にいたとかな」

「ふええ、すごー!そんなの実証できるんだ」

イブの表情が曇る。

「ただ、そのやり方が悪かった」

「え?」

「ひいじいさんたちはその実験に動物や人間を使ったんだ。当時この世界には精密なGPS機能を内包したスーパーコンピューター千里せんりがいた。千里はGPSのチップが埋め込まれたものを宇宙の果てまで追いかける事ができる」

「それ、誰が作ったの?」

「まだ不明だ。研究者たちは血眼になって探してるがな。ひいじいさんのグループはその輝かしい功績を得ながらも批判の的にもなった。もちろんその親族もだ」

「じゃあ、イブは…」

イブが笑う。どことなく否定的な笑みだった。

「俺は元々研究職を目指してた。でもひいじいさんのことをつつかれて面白くなくなっちまった。
それでそれをいっそ利用してやろうと思ったんだ」

「イブはすごいね!」

「俺は異次元に繋がるトンネルをこの世界から繋げようとひいじいさんの遺した資料を全部ひっくり返した。同じような志を持った奴らも協力してくれて、上手くいったんだ。本当に全部たまたまだったんだ」

「ね、イブ?」

「ん?」

「俺がこの世界に来たのはイブが俺のいた世界にトンネルを繋げたからってこと?」

イブがゆるゆると首を横に振る。

「お前は選ばれたからここに来たんだ。もちろん、俺の花嫁としてな」

「イブは本当に俺で良かった?」

「あぁ、よかったよ」

イブの大きな手がこちらに伸びてくる。茜はそのまま抱き締められていた。

「茜、まだ怖いよな。震えてる」

「だって、急に知らない世界に来て、妊娠しろって言われたら誰だってビビると思うけど」

イブが噴き出した。

「その通りだな。悪かった」

「イブは、子供が生まれたらどうするの?」

「そうだな、公園に行ったり、遊園地に行ったり、水族館や動物園も良いかもな」

「お弁当を持って?」

「そうだな。弁当には茜の好きな鶏の唐揚げをたくさん入れる」

「本当?」

「あぁ。他にも色々イベントがあるよな。子供がどんどん大きくなって、俺たちに反抗してくるかもしれない」

「うん、そうだね」

子供がいる。茜にはその光景がなんだか眩しく思えた。幸せというものを具体的な言葉で表すのは難しい。だが茜にとって子育てというものは幸せなのかもしれないと、そう思えたのだ。
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