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12・苦労
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茜は今日も自室のPCで作業をしている。猫たちの様子を合間に見に行くのも忘れない。こんな生活もすでに1週間が経っている。
「お、ハーくん、おしっこ出来たの?頑張ったね」
ケージを覗きながら猫の一匹、ハートを褒めたらじっと見つめられた。まだ隠れて出てこない子もいるが、茜が来るとチラッと顔を覗かせる。
「みゃー」
キングが可愛らしく鳴く。名前の通り風格漂う猫だ。
「どうしたの?キング?」
茜はキングを見つめた。
「みゃう」
キングがケージに頭を擦り付けている。痒いのだろうかとはじめは思ったが、どうやら違いそうだ。
「あ、外に出たいのかー」
ペットショップで、この猫たちは狭いケージ内に閉じ込められていた。ストレスで毛が抜けている子もいる。茜がケージにそっと指を入れると、キングにかぷりと緩く咥えられる。すっかり仲良しだ。茜はどうしたものか考えた。自分は猫を飼ったことがない。それならば専門家に聞いた方がいいだろう。今回、この異次元猫カフェをやるにあたり、獣医が専属で付いてくれたのだ。茜は端末を操作し電話を掛けてみた。たまたま空いていた時間だったらしく、電話は繋がり、キングのケージのドアを開放してみることになった。
「キング、ドクターから外に出ていいよって。怖くなくなったら出ておいで」
キングがすぐに出て来るかと茜は期待したが、キングはその場に丸くなった。ふああと欠伸をしている。
「さすが、猫様、キング様。マイペース」
茜は自分が作った資料を手にエレベーターに向かった。やっと迷わずにこの中を歩けるようになった。
「茜、お疲れ様」
「イブ!こっちに来てたんだ!」
イブが笑う。
「あぁ、お前に相談があるんだ」
茜はエレベーターに乗り込む。隣の長身を見上げると彼は言った。
「あのな、パーティーに行かなきゃいけなくなって」
「パーティーかぁ」
茜はこの世界に来る直前の記憶を思い返していた。メールでパーティーに招待されたことを。
「それで、そのパーティーで踊らなきゃいけない」
「はい?」
茜は固まった。踊るという単語はあまり日常には出てこない。
「今、踊るって言った?」
「あぁ」
確認の為、一応聞き返したが、どうやら聞き間違えではないらしい。
「どうゆう踊り?」
茜の頭の中では何故だかどじょうすくいの様子が思い浮かんできてしまっている。
「社交ダンスだな」
一気に童話のプリンスとプリンセスのイメージに塗り替えられ、茜はああと頷いた。
「なるほど。イブ、頑張ってね」
「いや、茜も踊るんだぞ?」
「んんー?」
「茜は俺のパートナーだろ?社交ダンスは2人で踊るんだから」
確かにそうだったと茜はぐるぐる考えた。
「でも俺、踊ったことないし」
「俺もない」
「え?金持ちなのに?」
イブが困ったように笑う。
「俺の場合、たまたま上手くいっただけってやつだからなあ」
自分はいわゆる成金なのだとイブは言った。
「俺の成功を面白く思わないやつもかなりいるし、まぁ色々あるんだ」
「イブ、俺とダンス頑張ろ!」
「茜…」
イブの悲しげな顔は出来ることなら見たことない。茜はイブの胸に拳を当てたのだった。
「お、ハーくん、おしっこ出来たの?頑張ったね」
ケージを覗きながら猫の一匹、ハートを褒めたらじっと見つめられた。まだ隠れて出てこない子もいるが、茜が来るとチラッと顔を覗かせる。
「みゃー」
キングが可愛らしく鳴く。名前の通り風格漂う猫だ。
「どうしたの?キング?」
茜はキングを見つめた。
「みゃう」
キングがケージに頭を擦り付けている。痒いのだろうかとはじめは思ったが、どうやら違いそうだ。
「あ、外に出たいのかー」
ペットショップで、この猫たちは狭いケージ内に閉じ込められていた。ストレスで毛が抜けている子もいる。茜がケージにそっと指を入れると、キングにかぷりと緩く咥えられる。すっかり仲良しだ。茜はどうしたものか考えた。自分は猫を飼ったことがない。それならば専門家に聞いた方がいいだろう。今回、この異次元猫カフェをやるにあたり、獣医が専属で付いてくれたのだ。茜は端末を操作し電話を掛けてみた。たまたま空いていた時間だったらしく、電話は繋がり、キングのケージのドアを開放してみることになった。
「キング、ドクターから外に出ていいよって。怖くなくなったら出ておいで」
キングがすぐに出て来るかと茜は期待したが、キングはその場に丸くなった。ふああと欠伸をしている。
「さすが、猫様、キング様。マイペース」
茜は自分が作った資料を手にエレベーターに向かった。やっと迷わずにこの中を歩けるようになった。
「茜、お疲れ様」
「イブ!こっちに来てたんだ!」
イブが笑う。
「あぁ、お前に相談があるんだ」
茜はエレベーターに乗り込む。隣の長身を見上げると彼は言った。
「あのな、パーティーに行かなきゃいけなくなって」
「パーティーかぁ」
茜はこの世界に来る直前の記憶を思い返していた。メールでパーティーに招待されたことを。
「それで、そのパーティーで踊らなきゃいけない」
「はい?」
茜は固まった。踊るという単語はあまり日常には出てこない。
「今、踊るって言った?」
「あぁ」
確認の為、一応聞き返したが、どうやら聞き間違えではないらしい。
「どうゆう踊り?」
茜の頭の中では何故だかどじょうすくいの様子が思い浮かんできてしまっている。
「社交ダンスだな」
一気に童話のプリンスとプリンセスのイメージに塗り替えられ、茜はああと頷いた。
「なるほど。イブ、頑張ってね」
「いや、茜も踊るんだぞ?」
「んんー?」
「茜は俺のパートナーだろ?社交ダンスは2人で踊るんだから」
確かにそうだったと茜はぐるぐる考えた。
「でも俺、踊ったことないし」
「俺もない」
「え?金持ちなのに?」
イブが困ったように笑う。
「俺の場合、たまたま上手くいっただけってやつだからなあ」
自分はいわゆる成金なのだとイブは言った。
「俺の成功を面白く思わないやつもかなりいるし、まぁ色々あるんだ」
「イブ、俺とダンス頑張ろ!」
「茜…」
イブの悲しげな顔は出来ることなら見たことない。茜はイブの胸に拳を当てたのだった。
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