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17・信仰
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異次元とは言っても街がある。人々が行き交う中を心海たちは歩いていた。だが、なんだか注目されている気がする。おそらく服装が違うせいで目立っているのだろう。
「おやおや、久しく帰ってきたのに冷たいものだね」
「スイケ、僕たちはもうここの人間じゃないんだし仕方がないよ」
瑛太の言葉にスイケは頷いた。
「そうだね、僕がここで教師を務めていたのも随分前の話になる」
「で、俺たちはどこに行けばいい?」
律が尋ねるとスイケは迷いを見せた。
「因果っていうのはどんな人にもあるものなんだ。リツはその因果が飛び抜けて大きい。それを解いて行くためには君自身に由来するものから解いていかなければ」
「俺に由来するもの?」
「そう、君の記憶にあったものから順に解いていこう。なあに、簡単なことさ。伯爵はまだ健在だしね」
「え!こっちの世界の人間と知り合って良いのか?」
律の言葉にスイケが頬を膨らませる。
「僕たちも一応そうなんだけどね?」
「いや、でも、だってよ…」
「まぁここであーだこーだ言っていても何も始まらない。行ってみよう」
レッツゴー!とスイケが歩き出したので、慌てて心海たちも追い掛けた。
「わ、なんかいい匂いがする」
「あぁ、この辺りは屋台が多いからね」
(本当に現実世界なんだ)
心海は改めて緊張した。言葉や文字は不思議なことに難なく読めるうえ、しかも喋れるようだ。街を歩く人の言葉も分かる。
しばらく歩くと、大きな屋敷があった。
白い石造りの門が建っている。その門は開いていた。
「ここが?」
「そう、伯爵のお屋敷さ!行こう」
スイケが開いている門をくぐる。他人の家なのに大丈夫なのだろうか、と心海は心配になった。
「大丈夫だよ、ここちゃん。伯爵様は僕たちを知ってくれているから。もちろん、律くんのことも」
瑛太にそう言われて、心海もようやく安心する。中に入り、ぐるりと回って庭に入る。そこで木刀を素振りする男がいた。おそらくこの人が伯爵だろう。スイケが彼に駆け寄る。
「伯爵様、おひさだよん!」
「む…スイケか。…お前はリツ!?」
伯爵が律を見るなり後ろに後ずさった。だが、すぐに気迫を取り戻す。
「本当に転生していたのだな。先の戦いで私はお前に無理をさせてしまった」
「まぁ色々あったのは覚えてるよ、一応。それで、俺に由来があるものって」
「今はない…」
伯爵がぐ、と唇を噛む。
「この世界を治める神があまりに幼くてな。」
「どうゆうことですか?」
伯爵が心海を見た瞬間、はっと息を飲んだ。
「ココレット様!?」
「え?違いますよ!俺は心海です」
「すみません、先代の女神様によく似ていたから」
伯爵は気を落ち着けようとしたのか、目を閉じて深呼吸した。再び目を開け話し始める。
「今の神、レリウス様はココレット様の跡継ぎなのです。ココレット様もだんだん力が無くなり、神として存在するには無理がありました。ココレット様が今どこにおられるのか、誰にも分からないのです。そしてレリウス様は、神としてまだ顕現されたばかり。世界の記憶を読み込むので精一杯なのですよ」
「じゃあ俺の因果を解放出来ねえってことか?」
「いや、レリウス様に直接会えばお前のことを把握できるはずだ。レリウス様は月の神殿におられる」
伯爵によれば、月の神殿は砂漠の真ん中にあるという。心海たちの旅が始まった。
「おやおや、久しく帰ってきたのに冷たいものだね」
「スイケ、僕たちはもうここの人間じゃないんだし仕方がないよ」
瑛太の言葉にスイケは頷いた。
「そうだね、僕がここで教師を務めていたのも随分前の話になる」
「で、俺たちはどこに行けばいい?」
律が尋ねるとスイケは迷いを見せた。
「因果っていうのはどんな人にもあるものなんだ。リツはその因果が飛び抜けて大きい。それを解いて行くためには君自身に由来するものから解いていかなければ」
「俺に由来するもの?」
「そう、君の記憶にあったものから順に解いていこう。なあに、簡単なことさ。伯爵はまだ健在だしね」
「え!こっちの世界の人間と知り合って良いのか?」
律の言葉にスイケが頬を膨らませる。
「僕たちも一応そうなんだけどね?」
「いや、でも、だってよ…」
「まぁここであーだこーだ言っていても何も始まらない。行ってみよう」
レッツゴー!とスイケが歩き出したので、慌てて心海たちも追い掛けた。
「わ、なんかいい匂いがする」
「あぁ、この辺りは屋台が多いからね」
(本当に現実世界なんだ)
心海は改めて緊張した。言葉や文字は不思議なことに難なく読めるうえ、しかも喋れるようだ。街を歩く人の言葉も分かる。
しばらく歩くと、大きな屋敷があった。
白い石造りの門が建っている。その門は開いていた。
「ここが?」
「そう、伯爵のお屋敷さ!行こう」
スイケが開いている門をくぐる。他人の家なのに大丈夫なのだろうか、と心海は心配になった。
「大丈夫だよ、ここちゃん。伯爵様は僕たちを知ってくれているから。もちろん、律くんのことも」
瑛太にそう言われて、心海もようやく安心する。中に入り、ぐるりと回って庭に入る。そこで木刀を素振りする男がいた。おそらくこの人が伯爵だろう。スイケが彼に駆け寄る。
「伯爵様、おひさだよん!」
「む…スイケか。…お前はリツ!?」
伯爵が律を見るなり後ろに後ずさった。だが、すぐに気迫を取り戻す。
「本当に転生していたのだな。先の戦いで私はお前に無理をさせてしまった」
「まぁ色々あったのは覚えてるよ、一応。それで、俺に由来があるものって」
「今はない…」
伯爵がぐ、と唇を噛む。
「この世界を治める神があまりに幼くてな。」
「どうゆうことですか?」
伯爵が心海を見た瞬間、はっと息を飲んだ。
「ココレット様!?」
「え?違いますよ!俺は心海です」
「すみません、先代の女神様によく似ていたから」
伯爵は気を落ち着けようとしたのか、目を閉じて深呼吸した。再び目を開け話し始める。
「今の神、レリウス様はココレット様の跡継ぎなのです。ココレット様もだんだん力が無くなり、神として存在するには無理がありました。ココレット様が今どこにおられるのか、誰にも分からないのです。そしてレリウス様は、神としてまだ顕現されたばかり。世界の記憶を読み込むので精一杯なのですよ」
「じゃあ俺の因果を解放出来ねえってことか?」
「いや、レリウス様に直接会えばお前のことを把握できるはずだ。レリウス様は月の神殿におられる」
伯爵によれば、月の神殿は砂漠の真ん中にあるという。心海たちの旅が始まった。
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