5 / 21
5・存在
しおりを挟む
「ふふーん♪ここで卵を投入だ」
心海は一人で鼻歌を歌いながらオムライスを作っている。サラダとスープも作ったので、お腹いっぱいになるのは間違いない。時計を見ると既に午後九時を回っている。カチリと鍵が開く音がして、心海は玄関に向かった。
「りっくん、お帰り」
「ああ、ただいま。腹減った」
「ご飯の支度出来てるよ」
「おお、サンキュ」
律は相当走ったのか、カバンに入ったジャージは泥だらけだった。
「お洗濯するね」
「いや、自分でするよ。お前も疲れてるだろ?今日からサークル活動始まるって言ってたじゃねえか」
「同人誌の原稿描くことになった!」
「すげえな。急に漫画描けるのか?」
律が驚くのも無理はない。心海は先ほど譲ってもらった資料を律に見せた。
「へえ、専門書ってやつかあ」
律がぱらぱらとページを捲りながら見ている。
「心海は普通に絵が上手いもんな。ま、やれるだろ」
「え!そんなの初耳だよ」
「はあ?皆知ってるし、お前だけだよ、それ知らないの」
「えええ」
戸惑ったがもう今更だ。
「あとね、スマホにお絵描きアプリ入れてみた」
これ、とスマートフォンを律に見せる。
「知らなかったのか」
「うん、知らなかったねえ」
どうやら律は知っていると思っていたらしい。
「まあいいや。これから描きまくればいいんだしな」
「うん、原稿ね、3ページもやらせてもらえるんだよ。ジャンルも今一番人気の作品だし」
「よかったな」
「それでね瑛太くんっていう子と仲良くなったんだよ」
「誰だ?」
心なしか律の声が鋭くなったような気がする。なんでだろうと心海は考えてみたが分かるはずもない。
「えっと同級生なの。優しくて絵が上手くてイケメンなんだ。それで、絵の練習に付き合ってもらったの」
「そうか。よかったな」
律は言葉ではそう言ってくれたが顔が険しいままだ。
「りっくん?もしかして怒ってる?」
「いや。心海が楽しいのは俺も嬉しいよ」
「りっくん、ありがとう」
にっこり笑うと律が頭を撫でてくれた。
「とりあえず飯食うわ。待たせてごめんな」
心海は大丈夫と笑った。
「あのね、りっくんに絵を見てもらいたいの」
「お前、散々恥ずかしがっておいて」
「だから見てもらいたいの。俺の絵の悪い所を教えて欲しい」
「悪いとこかあ」
早速、もぐもぐしながら律が呟いた。
「これ、さっきスマホで描いてみたの」
画面を見せると律がじいっと絵を見ている。心海が描いたのはキャラクターのイラストだ。
「いや、普通に上手いけど?直すとこなんかあるのか?」
「りっくん、優しい」
「いや、普通だろ?
まぁ絵のプロとかに見てもらえばまた違うんだろうけどさ」
「俺ね、持ち込み用の漫画描いてみようかなって思ってるの」
「え?マジか?」
「うん。せっかく大学生になったんだし何か挑戦してみたい」
「心海はすげえな、お前カッコいいよ」
「本当?」
「あぁ」
「よっし、やるぞぉ!」
「心海、頑張りすぎないようにな」
「うん!気を付けるよ。りっくんは部活どうだったの?」
「まぁはじめは走らされるわなぁ」
「洗礼だね!」
「勉強も頑張らないとだし、また一緒にやろうぜ」
「うん!」
自分はやっぱり律が大好きだ。心海は改めて確信していた。
心海は一人で鼻歌を歌いながらオムライスを作っている。サラダとスープも作ったので、お腹いっぱいになるのは間違いない。時計を見ると既に午後九時を回っている。カチリと鍵が開く音がして、心海は玄関に向かった。
「りっくん、お帰り」
「ああ、ただいま。腹減った」
「ご飯の支度出来てるよ」
「おお、サンキュ」
律は相当走ったのか、カバンに入ったジャージは泥だらけだった。
「お洗濯するね」
「いや、自分でするよ。お前も疲れてるだろ?今日からサークル活動始まるって言ってたじゃねえか」
「同人誌の原稿描くことになった!」
「すげえな。急に漫画描けるのか?」
律が驚くのも無理はない。心海は先ほど譲ってもらった資料を律に見せた。
「へえ、専門書ってやつかあ」
律がぱらぱらとページを捲りながら見ている。
「心海は普通に絵が上手いもんな。ま、やれるだろ」
「え!そんなの初耳だよ」
「はあ?皆知ってるし、お前だけだよ、それ知らないの」
「えええ」
戸惑ったがもう今更だ。
「あとね、スマホにお絵描きアプリ入れてみた」
これ、とスマートフォンを律に見せる。
「知らなかったのか」
「うん、知らなかったねえ」
どうやら律は知っていると思っていたらしい。
「まあいいや。これから描きまくればいいんだしな」
「うん、原稿ね、3ページもやらせてもらえるんだよ。ジャンルも今一番人気の作品だし」
「よかったな」
「それでね瑛太くんっていう子と仲良くなったんだよ」
「誰だ?」
心なしか律の声が鋭くなったような気がする。なんでだろうと心海は考えてみたが分かるはずもない。
「えっと同級生なの。優しくて絵が上手くてイケメンなんだ。それで、絵の練習に付き合ってもらったの」
「そうか。よかったな」
律は言葉ではそう言ってくれたが顔が険しいままだ。
「りっくん?もしかして怒ってる?」
「いや。心海が楽しいのは俺も嬉しいよ」
「りっくん、ありがとう」
にっこり笑うと律が頭を撫でてくれた。
「とりあえず飯食うわ。待たせてごめんな」
心海は大丈夫と笑った。
「あのね、りっくんに絵を見てもらいたいの」
「お前、散々恥ずかしがっておいて」
「だから見てもらいたいの。俺の絵の悪い所を教えて欲しい」
「悪いとこかあ」
早速、もぐもぐしながら律が呟いた。
「これ、さっきスマホで描いてみたの」
画面を見せると律がじいっと絵を見ている。心海が描いたのはキャラクターのイラストだ。
「いや、普通に上手いけど?直すとこなんかあるのか?」
「りっくん、優しい」
「いや、普通だろ?
まぁ絵のプロとかに見てもらえばまた違うんだろうけどさ」
「俺ね、持ち込み用の漫画描いてみようかなって思ってるの」
「え?マジか?」
「うん。せっかく大学生になったんだし何か挑戦してみたい」
「心海はすげえな、お前カッコいいよ」
「本当?」
「あぁ」
「よっし、やるぞぉ!」
「心海、頑張りすぎないようにな」
「うん!気を付けるよ。りっくんは部活どうだったの?」
「まぁはじめは走らされるわなぁ」
「洗礼だね!」
「勉強も頑張らないとだし、また一緒にやろうぜ」
「うん!」
自分はやっぱり律が大好きだ。心海は改めて確信していた。
23
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます
いとしの生徒会長さま
もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……!
しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる