17 / 20
文化祭
おしごと
しおりを挟む
文化祭実行委員の仕事は思っていたよりずっとハードだった。
クラスのだしものの準備をしながら、放課後には委員会として集まり、アーチをはじめとする学校の飾りを作る。
委員会の仕事はその他にも、体育館や講堂のステージで行われる部活の発表についての時間調整や、行う内容の確認、文化祭用のポスターの発注や、なにやらこまごまとした仕事までいろいろあった。
それをこなしつつ、文化祭後に控えている期末テストの勉強もしなければならない。
僕は毎日死にそうになっていた。朝が辛い。
(忙しい、疲れた・・・)
昼休み、疲れて机に突っ伏していると、誰かが近寄ってくる気配を感じた。
でもそれを確認する気も起きなくて、僕はそのままでいた。
どす、と頭に冷たい固い物が載る。
なんだろう?
頭に手をやると、物の正体が分かった。
紙パックのジュースだ。
(イチゴオレか)
こんなことをしてくれるのはあいつしか考えられない。
僕は嬉しくなって、それを飲み始めた。
(あとでお礼言おう)
千尋と両想いだという事が分かっても、僕達の関係はあまり変わっていなかった。
ただ前より気安く話すようになったくらいだ。
でも、そのおかげで、実行委員の仕事も少し楽しくなった。
それだけでも全然違う。
「本田っちー、今いい?」
この前の三人組の一人、吉田くんが声をかけてきた。
「どうしたの?」
「ミスコンなんだけどさ、当日何着る?」
忙しくて、そんなことすっかり忘れていた。僕と千尋が出ることになってたっけ?
吉田君はにやっと笑ってこう言う。
「俺の姉貴、レイヤーだしいろいろ服持ってるんだ。倉沢と俺んち来てくれれば衣裳貸すよ?」
「え、いいの?」
吉田君は頷く、そして困ったようにはにかんだ。
「いやさ、巻き込んだの俺だし、協力して当たり前じゃん」
「ありがとう」
「今日来れる?」
「うん、委員会終わったらでいいなら」
「わかった、教室で待ってる」
吉田くんは照れたように笑って走って行ってしまった。
なんだか嬉しい。高校に入ってもうしばらく経つけれど、あまり親しいと言える友人は僕にはいなかった。(千尋は除く)同級生と何を話していいかよくわからないし、そんなきっかけもない。
(高校の同級生の家に行ける!)
それってすごくレアなケースじゃないか。
もっと親しくなれるかもしれないし。
(よし、頑張れ僕)
「加那ー」
千尋が困ったという顔でやってくる。
なにに困っているかすぐわかった。
千代紙の花を作るのに盛大に失敗していた。
「直るか?」
僕の手元を見ながら千尋が言う。
「もう、不安なら一人でやらないでよ」
「だって、加那忙しそうだし」
ぶつぶつ言われておかしくなってしまう。
変わってないな。
「あ、そういえば」
吉田君に言われたことを僕は伝えた。
「お、いよいよ女装か」
「千尋、そういうの平気なの?」
千尋は首を傾げる。
「初めてだしなあ」
のんびり言う彼に僕は脱力した。
そうだった、こういうやつだった。
「委員会の仕事マッハで終わるよ?」
「気を付ける」
千尋の気を付けるは怖いなあ。
そんな感じで午後の授業が始まった。
クラスのだしものの準備をしながら、放課後には委員会として集まり、アーチをはじめとする学校の飾りを作る。
委員会の仕事はその他にも、体育館や講堂のステージで行われる部活の発表についての時間調整や、行う内容の確認、文化祭用のポスターの発注や、なにやらこまごまとした仕事までいろいろあった。
それをこなしつつ、文化祭後に控えている期末テストの勉強もしなければならない。
僕は毎日死にそうになっていた。朝が辛い。
(忙しい、疲れた・・・)
昼休み、疲れて机に突っ伏していると、誰かが近寄ってくる気配を感じた。
でもそれを確認する気も起きなくて、僕はそのままでいた。
どす、と頭に冷たい固い物が載る。
なんだろう?
頭に手をやると、物の正体が分かった。
紙パックのジュースだ。
(イチゴオレか)
こんなことをしてくれるのはあいつしか考えられない。
僕は嬉しくなって、それを飲み始めた。
(あとでお礼言おう)
千尋と両想いだという事が分かっても、僕達の関係はあまり変わっていなかった。
ただ前より気安く話すようになったくらいだ。
でも、そのおかげで、実行委員の仕事も少し楽しくなった。
それだけでも全然違う。
「本田っちー、今いい?」
この前の三人組の一人、吉田くんが声をかけてきた。
「どうしたの?」
「ミスコンなんだけどさ、当日何着る?」
忙しくて、そんなことすっかり忘れていた。僕と千尋が出ることになってたっけ?
吉田君はにやっと笑ってこう言う。
「俺の姉貴、レイヤーだしいろいろ服持ってるんだ。倉沢と俺んち来てくれれば衣裳貸すよ?」
「え、いいの?」
吉田君は頷く、そして困ったようにはにかんだ。
「いやさ、巻き込んだの俺だし、協力して当たり前じゃん」
「ありがとう」
「今日来れる?」
「うん、委員会終わったらでいいなら」
「わかった、教室で待ってる」
吉田くんは照れたように笑って走って行ってしまった。
なんだか嬉しい。高校に入ってもうしばらく経つけれど、あまり親しいと言える友人は僕にはいなかった。(千尋は除く)同級生と何を話していいかよくわからないし、そんなきっかけもない。
(高校の同級生の家に行ける!)
それってすごくレアなケースじゃないか。
もっと親しくなれるかもしれないし。
(よし、頑張れ僕)
「加那ー」
千尋が困ったという顔でやってくる。
なにに困っているかすぐわかった。
千代紙の花を作るのに盛大に失敗していた。
「直るか?」
僕の手元を見ながら千尋が言う。
「もう、不安なら一人でやらないでよ」
「だって、加那忙しそうだし」
ぶつぶつ言われておかしくなってしまう。
変わってないな。
「あ、そういえば」
吉田君に言われたことを僕は伝えた。
「お、いよいよ女装か」
「千尋、そういうの平気なの?」
千尋は首を傾げる。
「初めてだしなあ」
のんびり言う彼に僕は脱力した。
そうだった、こういうやつだった。
「委員会の仕事マッハで終わるよ?」
「気を付ける」
千尋の気を付けるは怖いなあ。
そんな感じで午後の授業が始まった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したショタは森でスローライフ中
ミクリ21
BL
異世界に転移した小学生のヤマト。
ヤマトに一目惚れした森の主のハーメルンは、ヤマトを溺愛して求愛しての毎日です。
仲良しの二人のほのぼのストーリーです。
もう一度、貴方に出会えたなら。今度こそ、共に生きてもらえませんか。
天海みつき
BL
何気なく母が買ってきた、安物のペットボトルの紅茶。何故か湧き上がる嫌悪感に疑問を持ちつつもグラスに注がれる琥珀色の液体を眺め、安っぽい香りに違和感を覚えて、それでも抑えきれない好奇心に負けて口に含んで人工的な甘みを感じた瞬間。大量に流れ込んできた、人ひとり分の短くも壮絶な人生の記憶に押しつぶされて意識を失うなんて、思いもしなかった――。
自作「貴方の事を心から愛していました。ありがとう。」のIFストーリー、もしも二人が生まれ変わったらという設定。平和になった世界で、戸惑う僕と、それでも僕を求める彼の出会いから手を取り合うまでの穏やかなお話。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
ある日、人気俳優の弟になりました。
樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる