嫁かと思っていたらスパダリだったんだが…

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チャリティー企画⑤

最後の出番は俺だ。
俺の一番得意な格闘ゲーム。
もちろん、視聴者さんと対戦する。
3本勝負のうち、2本取れたら勝ちだ。

俺は使い慣れているキャラクターを選択した。やっぱりお前が一緒じゃないとな。
マッチングが始まる。
さぁ、どんな相手が来るんだろう。

「はい、マッチングされたようですね」

相手も同じキャラクターを選択してきた。
これはミラーマッチか。
あんまり経験がない。

「あるー！頑張れー！！」

「いつも通りやれ！」

隣りにいる皆を見て俺は頷いた。
そうだ、いつもみたいに楽しんでやろう。

戦いが始まった。
はじめは相手の動きを読み合う。
俺は軽く左フックを入れた。
ガードされる。なるほど。
反応は悪くないみたいだ。

ならば、とジャンプして相手を後ろから投げ飛ばす。よし、決まった。
大事なのは着実に一本取っていくことだ。
行くぞ。

俺はガンガン攻めた。それに対して相手もまずい、と思ったらしい。ガードをしながらしっかり攻撃してくる。
うん、強い。この人も俺と同じくらいこのゲームが好きなんだ。

一本目は、俺の右ストレートが上手く入ってK.O勝ちになる。
いいぞ。
二本目が始まる。
今度は相手が積極的に攻めてくる。
俺はそれをガードし続けた。
体力的に必殺技がそろそろ使える。

攻撃がひっきりなしに飛んでくる。
俺は後ろに跳んだ。そして必殺技コマンドを入力する。
俺の使うキャラクターは中距離戦闘が得意だって、相手にもよく分かっているんだろうし。
相手の体力も半分になる。
俺は前に出た。
今、攻めなくていつ攻める。

ズガガガとパンチを繰り出す。
相手も必殺技を繰り出してきた。まずい。
ガードが間に合わない。

お互いに体力がぎりぎりだ。

どちらか攻撃が入った方の勝ちだ。
でもまだまだ。
俺は改めて集中した。
めちゃくちゃ楽しい。
まるで小学生の時に戻ったような錯覚を覚える。
ゲームをするのがとにかく楽しくて、ゲームをするためにテスト勉強や宿題をしていた。
俺はずっとそうやって生きてきたなあ。

「ある！いいぞー！」

「もうちょいだ！」

「やっちまえ！」

皆が俺を応援してくれている。
俺はキャラクターを屈ませた。
それで相手のパンチを上手いこと避けられた。

「いけっ！！」

俺のキャラクターの右キックが相手の懐に入る。
現れたのはWINの文字。
やった！！

「ある選手の勝利です！！
やはり強い！！！」

「さすがですねー。では、ある選手を呼んでみましょう！ある選手ー！」

わわ、俺の顔が画面に映っている。
それだけでドキドキした。

「今回の試合、いかがでしたか？」

「はい。強い相手でした。でもめちゃくちゃ楽しくて…ありがとうございました！」

「ある選手が楽しまれている様子、我々にも伝わってきました！
では改めまして視聴者プレゼントの案内をします」

俺はヘッドフォンを外した。あぁ、頭が重たかった。画面には視聴者プレゼントの概要が映し出されている。
この企画、長いと思ったけれどあっという間だったなぁ。
俺達四人はカメラの前に立った。
エンディングだ。

「観てくれたみんなー！本当にありがとー！」

玲央が代表して全部言ってくれた。
こうしてチャリティー企画は無事に終わりを告げたのだった。