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喪われた天使
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ー隕石到達まで残り28時間・魚人族の島ー
向こうから誰かが走ってくる。
俺は遠視でそちらを見た。
「ユミル!ユミルだ!!」
俺が手を振ると、ユミルも振り返してくれた。
誰か大きな人を背負っている。
もしかして…。
「サヤ、戻った。キッド様を無事、連れ帰った」
「キッド様!!よくぞご無事で!!」
魚人族の人達がキッドを建物の中へ連れて行く。きっと医者に診てもらうんだろうな。
「キッドはどうしちゃったの?」
「あぁ。それも詳しく皆に話したい」
ユミルはボロボロになっていた。疲れていそうだし、先に休憩した方がいいだろう。
「アスタは?」
ユミルは何も言わなかった。
何かあったのは間違いない。
二人はなんだか訳ありのようだ。
何があったんだろう?
一時間程、ユミルは座って休んだ。
それだけで大丈夫なのか心配になるけれど、ユミルはそれで、もういつも通りに動けるらしい。特殊部隊の人ってすごいなぁ。
「ユミルさん、キッドを…バカ息子を連れ帰って下さりありがとうございます」
長老さんが深々と頭を下げる。
「いえ、ほとんどアスタの力によるものです。
それに今回の件に絡んでいたのは、この星全体の根幹である大神殿だと分かりました」
大神殿?俺が首を傾げると、ユミルは頷いて説明をしてくれた。
「大神殿というのはこの世に存在する魔力元素を司る力を崇拝している宗教団体だよ」
まだよく分からない。宗教団体って聞くといろいろ思い浮かぶけどな。
ユミルが顎を撫でながら考えている。
「なんと言ったらいいか、私にも難しいんだが、魔力の大元が神だと信じる教えということだ」
「え…神様、いるの?」
思わず聞いたらユミルも首を傾げている。
「ふむ…この世界には神に近い存在も多いから存在していてもおかしくないかもしれない」
確かにその通りだな。
俺の父さんだってそのうちの一人だし。
「キッド様が眠って居られるのもその神殿の重要人物、聖女ベニアの仕業だ」
聖女様が悪人?
びっくりしているのは皆も同じようだった。
「アスタはベニアによる呪いで倒れた。私は彼を見捨てたことになる」
ユミルの言葉に魚人族の人達がざわつく。俺も信じられない気持ちだった。
「皆よ、最後まで話を聞くのじゃ!」
長老さんが杖を鳴らすと皆が黙った。そうだ、ユミルが理由もなくアスタを見捨てるはずがない。
「私とキッド様は気が付くとここに飛ばされていた。アスタにも何か考えがあったのかもしれない。
だが、無理やり彼を連れ帰ることも出来たはずだ…」
ユミルはそれきり黙った。
「じゃ、じゃあ、ユミル様が望んで聖樹様を見捨てたんじゃないじゃん」
リヴァさんが慌てたように言う。
「ワシもそう思う。その状況のユミルに選択の権利があったようには思えない」
ノエルさんも続けた。俺もそう思う。
むしろアスタは自ら一人になったような気さえしてくる。
でもユミルはなにも言わなかった。
「キッド様!!どうされたのですか!!」
突然騒がしい。俺達はそちらへ向かった。キッドが剣を振り回している。
そして彼の背中からは白い翼が生えていた。
「憎い!!憎いっ!!」
キッドがそう叫びながら剣を振り回す。ユミルがナイフでその斬撃を受け止める。
「邪魔をするな!この世界は私の物だ!!」
ユミルが押されている。
あんなに強いユミルが。
キッドが大きく剣を振りかぶる。
「ユミル!!」
その瞬間がスローモーションのように思えた。
ユミルのナイフが長剣になっている。
そしてユミルの背中からも白い翼が生えていた。
向こうから誰かが走ってくる。
俺は遠視でそちらを見た。
「ユミル!ユミルだ!!」
俺が手を振ると、ユミルも振り返してくれた。
誰か大きな人を背負っている。
もしかして…。
「サヤ、戻った。キッド様を無事、連れ帰った」
「キッド様!!よくぞご無事で!!」
魚人族の人達がキッドを建物の中へ連れて行く。きっと医者に診てもらうんだろうな。
「キッドはどうしちゃったの?」
「あぁ。それも詳しく皆に話したい」
ユミルはボロボロになっていた。疲れていそうだし、先に休憩した方がいいだろう。
「アスタは?」
ユミルは何も言わなかった。
何かあったのは間違いない。
二人はなんだか訳ありのようだ。
何があったんだろう?
一時間程、ユミルは座って休んだ。
それだけで大丈夫なのか心配になるけれど、ユミルはそれで、もういつも通りに動けるらしい。特殊部隊の人ってすごいなぁ。
「ユミルさん、キッドを…バカ息子を連れ帰って下さりありがとうございます」
長老さんが深々と頭を下げる。
「いえ、ほとんどアスタの力によるものです。
それに今回の件に絡んでいたのは、この星全体の根幹である大神殿だと分かりました」
大神殿?俺が首を傾げると、ユミルは頷いて説明をしてくれた。
「大神殿というのはこの世に存在する魔力元素を司る力を崇拝している宗教団体だよ」
まだよく分からない。宗教団体って聞くといろいろ思い浮かぶけどな。
ユミルが顎を撫でながら考えている。
「なんと言ったらいいか、私にも難しいんだが、魔力の大元が神だと信じる教えということだ」
「え…神様、いるの?」
思わず聞いたらユミルも首を傾げている。
「ふむ…この世界には神に近い存在も多いから存在していてもおかしくないかもしれない」
確かにその通りだな。
俺の父さんだってそのうちの一人だし。
「キッド様が眠って居られるのもその神殿の重要人物、聖女ベニアの仕業だ」
聖女様が悪人?
びっくりしているのは皆も同じようだった。
「アスタはベニアによる呪いで倒れた。私は彼を見捨てたことになる」
ユミルの言葉に魚人族の人達がざわつく。俺も信じられない気持ちだった。
「皆よ、最後まで話を聞くのじゃ!」
長老さんが杖を鳴らすと皆が黙った。そうだ、ユミルが理由もなくアスタを見捨てるはずがない。
「私とキッド様は気が付くとここに飛ばされていた。アスタにも何か考えがあったのかもしれない。
だが、無理やり彼を連れ帰ることも出来たはずだ…」
ユミルはそれきり黙った。
「じゃ、じゃあ、ユミル様が望んで聖樹様を見捨てたんじゃないじゃん」
リヴァさんが慌てたように言う。
「ワシもそう思う。その状況のユミルに選択の権利があったようには思えない」
ノエルさんも続けた。俺もそう思う。
むしろアスタは自ら一人になったような気さえしてくる。
でもユミルはなにも言わなかった。
「キッド様!!どうされたのですか!!」
突然騒がしい。俺達はそちらへ向かった。キッドが剣を振り回している。
そして彼の背中からは白い翼が生えていた。
「憎い!!憎いっ!!」
キッドがそう叫びながら剣を振り回す。ユミルがナイフでその斬撃を受け止める。
「邪魔をするな!この世界は私の物だ!!」
ユミルが押されている。
あんなに強いユミルが。
キッドが大きく剣を振りかぶる。
「ユミル!!」
その瞬間がスローモーションのように思えた。
ユミルのナイフが長剣になっている。
そしてユミルの背中からも白い翼が生えていた。
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