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三話おまけ

報告③

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あの日、僕は汗だくで千尋の元へ戻った。
テーブルの上には大きなサンドイッチの包みが2つ。千尋は食べずにずっと待っていてくれた。

「加那、長いトイレだったな。そんなに混んでたか?」

千尋は何もなかったようにそう聞いてくれた。

「千尋、僕ついにおかしくなったのかな?
きらきらが見えて」

「へえ。詳しく話せよ」

僕はあの時、きらきらを追いかけて中学校の校舎内へ侵入した。
校門は開いているし、何故か昇降口には鍵すらかかっていなかった。
神がかり過ぎて怖い、ずっとそんな感情がつきまとっていた。
なんで僕がそれに選ばれたのかはわからない。
それでもやるしかない、そう思った。

漫研の部室にきらきらは入っていって弾けるようにそれは消えた。

(資料集はこの中にあるの?)

もう、そうとしか考えられない。
きらきらは本の精霊かな、よくわからないけれど。まるでおとぎ話のようだ。
暑い部室の中、僕はあちこち資料集を探して回った。
そしてようやく、窓際の机の後ろに落ちていた資料集を見つけた。
こんなところに、やれやれ。
本を軽く引っ張って、見つかりやすく細工したのも僕だ。
本当に大変だった。
とにかく僕がここにいたという痕跡を残さないように細心の注意を払った。

じゃないと今後の進退に関わってしまう。

「へえ、すごいな」

千尋がサンドイッチの包みを開けながら言う。
毎回思うけど、千尋はもう少し驚くべきなんじゃないだろうか。
一応不法侵入になるんじゃないか? 不思議なことに僕が学校を出ると鍵はかかったし門もしまった。怖すぎる。

「びっくりしないの?」

少しむくれて言ったら、千尋にほっぺたを撫でられた。彼は笑っていう。

「もう幽霊まで出てきてるしなぁ」

確かに。幽霊のインパクト強過ぎるよね。

「ほら、サンドイッチ食えよ。腹減ったろ?」

「もうぺこぺこだし、シャワー浴びたい」

「帰ったらそうしろ。カフェラテおかわりするか?」

「するー」

この力はいいことに使わなくちゃいけない。それは僕の直感だ。
自分の欲望のために使ってもいけない。
僕はサンドイッチにかぶりつきながら、空を見上げた。

神様?
違うかもしれないけれど、見えない誰かが僕に手を貸してくれている。

(出来る限り頑張ります)

僕はそっと心の中で決意を新たにした。

おわり。
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