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第四話

真実

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クシマキが私の前に並べてくれたもの。

アリッサ姫のアルバム
イリエ姫のペンダント
マギカ姫の日記帳
そして最後にエメラ姫の契約書だ。

私はアリッサ姫とマギカ姫の力を借りて、仮の異次元空間をここに作り出した。
ここに龍牙を呼んだのは、彼にも真実を知ってほしかったからだ。

(姫君たち、私に答えて)

私が念じると、宝物たちが輝き始める。
そして徐々に人の姿となった。

「夕夏、ありがとう。私達にチャンスをくれたのね」

マギカ姫に手を取られて握られる。
その真っ白な手は温かかった。

「お前ら…!」

龍牙が怒りを顕にする。
私は彼の手を握って止めた。
彼が舌打ちする。

そして、四人の姫君たちは龍牙に頭を下げた。

「君にはすまないことをした」

イリエ姫が言う。

「まだ幼かった君を戦乱に巻き込んでしまった。本当にすまない」

「今頃謝られたって遅いんだよ!」

私は龍牙の手をそっと握った。
彼は今、だいぶ力を削られている。
おそらくドラゴンに変化することもできないはずだ。

「なにがあったのか私に詳しく教えてもらえる?」

私の言葉にイリエ姫が頷いてくれた。

「私達は国々の戦乱を巻き起こしたとされる組織を突き止めた。
それがデーモンだったんだ。

私達はそこで屈強な体を持つドラゴン達に力を借りることにした。だが私達は…」

「私のせいなんです」

口を閉ざしたイリエ姫の代わりに、マギカ姫が言葉を継ぐ。

「私がデーモンに殺されて、隊列が乱れました」

「そこでみんなは…」

私の言葉にイリエ姫は少し間を置いて言った。

「私達はドラゴンとの約束を果たせなかった。結局、そこにいたデーモンの兵士と同士討ちになった。残りの敵兵がドラゴンを殺したんだろう。

情けないが、私達は厳密には戦乱を治めていない。
歴史が移り変わるにつれて物語ができ、そうなってしまった。
記録を消したのはデーモンの末裔だ。
やつらは自分のことしか考えない化物だ。自分の立場が危うくなるからそうしたんだろう。あいつらはどこにでも潜り込む」

龍牙が拳を握りながら言う。

「あんたたちもあの時には死んでたってのか?
親父や兄貴は簡単に殺されたんだ。俺の目の前で…くそっ!!」


これが本当の真実だったんだ。
真実がいつも人を幸せにするとは限らない。
私は気になっていたことを尋ねた。

「デーモンはまだいるの?」

「いるなら俺がぶっ飛ばす」

彼女達は首を横に振る。

「デーモンはもういない。機械人形ももう動かない。安心していい」

「よかった」

「夕夏、私達の宝物をよく集めてくれましたね」

アリッサ姫が言う。
私は彼女との約束を思い出していた。
アルバムをきれいに復元すること。
今の私なら。

私はアルバムを開いて写真に手を翳した。
リボンが現れて、写真をみるみる綺麗にしていく。
写真ははっきりと四人の姫君達が見えるようになった。

「夕夏。本当にありがとう」

アリッサ姫がアルバムを抱き締めて笑う。
約束が果たせて本当によかった。

「記録はどうしたらいい?」

最期にそう尋ねたら、彼女達は消えていた。
私にどうするか、任せてくれたのかな。

「夕夏、悪かった。俺の勝手な思い込みで…」

龍牙が頭を掻きながら言う。

「記録が残ってなかったんだもの。
無理ないよ」

そう答えたら彼に跪かれた。

「俺は詫びたい。
必ず、夕夏の役に立つ。 
だから俺をそばに置いてくれ」

「龍牙、私達のお友達になってよ。お詫びなんていいからさ」

「夕夏…」

龍牙がびっくりしたような顔で私を見ている。私は言った。

「帰ろう、龍牙」



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