上 下
20 / 52
第二話

次へ

しおりを挟む
「夕夏ちゃん、またサフィールに遊びに来てほしい」

「うん、必ず」

その次の日の夜、私達はルビシア港に戻ってきていた。当然ナミネ姫の船でだ。
ナミネ姫の船は水素と風をエネルギーにして進むらしい。
とにかく速かった。やっぱりサフィールの科学力はものすごい。
ナミネ姫にまた抱きしめられる。

「うう、離れたくないよお」

ナミネ姫が泣いている。私も同じくらい寂しかった。たった一晩だったけどすごく仲良しになれた。
でも私は、ここで泣いてしまうのは絶対に嫌だった。
だってナミネ姫は一国のお姫様だ。
沢山お仕事だってあるだろう。
私にできるのはわがままを言わないこと。
ウル様はなにも言わなかった。ちゃんと私の気持ちに気が付いてくれている。
そんな確信があった。

ナミネ姫に私はいつまでも手を振った。

今度はナミネ姫ともっと遊べるように計画しよう。
楽しみだ。
ぽん、とクシマキが現れる。

「イリエ姫に会えたようですね。
ペンダントは?」

「ここにあるよ」

私はクシマキに青いペンダントを見せた。ナミネ姫が持たせてくれた。

「おお!これで残る宝物はあと2つ。
アリッサ姫のアルバムも少し綺麗になりましたし、順調ですな!」

「ねえ、クシマキ。
私達、危険なことをしようとしているの?」

クシマキは頷いた。

「あの仮面の奴らですね。
あれはおそらく自動人形かと」

「人形?」

なんだかぞっとした。
じゃあ他に人間もいるってこと?

「なんでその人たちは、記録を消したがるの?」

クシマキは唸った。

「夕夏姫。今それを知るのは大変危険です。
あなたはまだ小さい女の子なんですから」

「クシマキ、私、早く大人になりたいよ。
アリッサ姫やナミネ姫みたいな強い大人に」

「夕夏姫。大丈夫です。
あなたはお強い。きっと素晴らしい女性になります」

「本当?」

「もちろんですとも」

クシマキは言った。

「ささ、夕夏姫。今日はお疲れでしょう。
あとはまた明日にしましょう」

「うん」

クシマキはぽんと音を立てて消えた。

寝る前に、私は気になってイリエ姫のペンダントを持った。よく見ると石の横に隙間がある。
もしかして、と思って私はそれを指で摘んで引っ張った。
カチリ、と音がして石の部分が開く。
中には写真が入っていた。
アリッサ姫とイリエ姫、そして他に二人の姫君。
みんな笑っている。
宝物はペンダントだけじゃなかったんだ。
この中には確かな絆があった。

私はペンダントを元に戻してベッドに潜り込んだ。
あとは2つ。エメレシアとトパエルだ。
どんな国なんだろう?
しおりを挟む

処理中です...