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手がかり

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「シン、いいか?」

明け方頃、ようやく眠気が襲ってきて、サーラは少し眠った。
夏祭りという楽しいイベントから事態が一転してしまった。
サーラはこれからシンと共に夢の世界に行こうとしている。
マヤが何か遺しているかもしれない。
周りにはナオ、ソフィーがいてくれていた。

「サーラ、無理はしないで」

「シンちゃんも気を付けてね」

夢の中にサーラ以外の人が入るのは初めてのことだ。何がおこるかわからない。
それでもシンはサーラと一緒に行くと言ってくれた。

「シン、目を閉じて私と一緒に数を数えてくれ」

サーラはしっかりシンの手を握った。
シンは頷く。
二人は数を数え始めた。
だんだん意識が深くなっていく。
気が付くと、二人は夢の中にいた。

「ここが夢の世界」

シンが呟く。あたりは暗くて何も見えない。
サーラはシンの手を引っ張った。

「シン、時間がない。早く行こう」

「わかった」

いつこの世界から自分たちがはじき出されるか、サーラはそれを案じていた。
この場所は、言ってしまえばマヤが作り出していた空間だ。
彼女が亡くなったことで、この空間がいつまでもつのか、サーラにもわからない。
早足でサーラは精霊の位置を探っていた。
少し先にぼんやりと灯りが灯っている。
あれは。

サーラの置いてきた精霊がいた。手には明かりのついたランプを持っている。

サーラは彼に駆け寄った。
ぴょこんと彼も跳ねる。

「よかった。無事だったんだな」

サーラは精霊の頭を撫でる。精霊はものは言わないが嬉しそうにまた跳ねた。

「お前はもうお帰り。あとは私がやっておく」

「サーラ、この建物が?」

シンはじっと建物を見つめていた。

「そっくりだ」

「え?」

サーラは彼の顔を見つめた。

「そっくりってどういうことだ?」

サーラの問いにシンは頷いて答えた。

「うん、多分偶然だろうけどさ、母さんと父さんが結婚式をした建物に似てるなあって」

「そうなのか」

だとしたらこの建物は現実に存在しているということだろうか。

「まあ似たような建物ってだけだけどね」

シンはそうはにかんでドアに手をかけた。
今日は札はかかっていない。
ぎいとドアが軋んで開く。

中は真っ暗だった。
誰かいる様子もない。

「サーラ、せっかく来たんだし、なにかないか探してみようか」

「そうだな」

二人は部屋の物色を始めた。
これと言って何かあるわけではない。
サーラはふと気になって手を伸ばした。

(羽根?)

それは青い鳥の羽根だった。
サーラはそれをしげしげと見つめる。
特に変わった様子もない。

「サーラ」

名前を呼ばれてサーラはシンに駆け寄った。

「これ見て」

シンが広げて見せたのはアルバムだった。
だいぶ古いらしい。写真が白黒だ。
その写真は異様だった。

王族らしい人間と、異形の姿をしたなにかが、一緒ににこやかに映っている。

「もしかして、これが神?」

神々は昔から人間に干渉してきていたのだろうか?
サーラはふと気が付いた。
誰かが中に入ってきている。

慌ててシンを引っ張って物陰に隠れた。

「サーラ?」

「しっ」

その誰かはそれ以上中に入ってはこなかった。そして姿を消してしまう。
二人はほう、と安堵の息をついた。

「シン、そろそろ戻ろう」

「うん、なんか僕、ヘトヘトだよ」

シンは疲れ切ったような顔をしている。
サーラは素早く意識を上に向けた。
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