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真司×千晶&千尋×加那太
年賀状
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「千尋!どうしよう、プリンターのインク終わっちゃったよ!」
「ギリいけなかったな。今から電気屋に買いに行ってくるよ」
「待って、僕も行く」
「外、寒いのに大丈夫か?」
「暖かくしてく」
師走に入り、クリスマスを目前に控えたある日、千尋と加那太は年賀状を慌てて作っていた。自分達の分はもちろんだが、加那太の母親である里奈からも頼まれていたのだ。
まだ彼女から頼まれた分が、30枚ほど残っている。
二人はコートを羽織って車に乗り込んだ。
ここから家電量販店まで車で20分ほど。
車の暖房をつけるが、すぐに車内が温まるわけではない。二人はしばらく震えていた。
「さっむいな」
「冬だもん、仕方ないよ。とりあえず今日全部刷って明日、お母さんに渡すから」
「あぁ、そうしてくれると助かる」
家電量販店に入ると、閉店間際のせいか、人はほとんどいなかった。加那太がふらふらとゲームのコーナーに行こうとするのを慌てて千尋が止める。
「加那、ゲームは後だ。インクはこっちだぞ」
「つい癖で」
加那太が顔を赤らめている。ふと、二人は向こう側にいる人に気が付いた。
「あれ?あきくん?真司さんも?」
「かなさん!千尋さんも!」
千晶が加那太の手を握る。加那太も彼の小さな手を握り返した。
「プリンタのインクが切れちまってな」
「はは。同じだな」
どうやら千晶達も年賀状を作っていたらしい。できれば25日までに出したい。そう思うと、ゆっくりしている間もない。
「なかなかやる気が出なくて、今日慌てて始めたんです」
千晶が困ったように言う。
「僕たちもそう。始めちゃえばすぐなのにね」
「同じですね」
にっこり、と千晶が笑う。
「クリスマスパーティを無事に迎えるために年賀状、頑張らなきゃね!」
加那太の言葉に千晶は力強く頷いた。
このいつものメンバーでクリスマスパーティを開こうと計画しているのである。
その前にこうして会うことになるとはお互い思わなかった。
四人はインクのコーナーに向かった。各々で必要なものを見る。
「わぁ、純正品高い…」
千晶が呻くと加那太が笑う。
「分かる。僕もそう思うよ」
「家の場合は代替品だぞ。安いプリンタだからいつ壊れてくれても構わないから」
「千尋はある意味、ドケチだもんね」
「倹約家って言って欲しいな」
真司が思わずといった様子で噴き出す。加那太と千尋のやり取りはまるで夫婦漫才のようでいつもおかしい。
「加那、そろそろ帰らないと。今日中に年賀状刷るんだろ?」
加那太と千晶は結局ずっと話していた。たわいもない話だがまたそれが楽しいのである。
「わぁ、そうだった。じゃあ、あきくん、またね!」
加那太は千尋のもとに急いだのだった。
今年の冬も暖かい。加那太はそれに安心していた。
おわり
「ギリいけなかったな。今から電気屋に買いに行ってくるよ」
「待って、僕も行く」
「外、寒いのに大丈夫か?」
「暖かくしてく」
師走に入り、クリスマスを目前に控えたある日、千尋と加那太は年賀状を慌てて作っていた。自分達の分はもちろんだが、加那太の母親である里奈からも頼まれていたのだ。
まだ彼女から頼まれた分が、30枚ほど残っている。
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ここから家電量販店まで車で20分ほど。
車の暖房をつけるが、すぐに車内が温まるわけではない。二人はしばらく震えていた。
「さっむいな」
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「あぁ、そうしてくれると助かる」
家電量販店に入ると、閉店間際のせいか、人はほとんどいなかった。加那太がふらふらとゲームのコーナーに行こうとするのを慌てて千尋が止める。
「加那、ゲームは後だ。インクはこっちだぞ」
「つい癖で」
加那太が顔を赤らめている。ふと、二人は向こう側にいる人に気が付いた。
「あれ?あきくん?真司さんも?」
「かなさん!千尋さんも!」
千晶が加那太の手を握る。加那太も彼の小さな手を握り返した。
「プリンタのインクが切れちまってな」
「はは。同じだな」
どうやら千晶達も年賀状を作っていたらしい。できれば25日までに出したい。そう思うと、ゆっくりしている間もない。
「なかなかやる気が出なくて、今日慌てて始めたんです」
千晶が困ったように言う。
「僕たちもそう。始めちゃえばすぐなのにね」
「同じですね」
にっこり、と千晶が笑う。
「クリスマスパーティを無事に迎えるために年賀状、頑張らなきゃね!」
加那太の言葉に千晶は力強く頷いた。
このいつものメンバーでクリスマスパーティを開こうと計画しているのである。
その前にこうして会うことになるとはお互い思わなかった。
四人はインクのコーナーに向かった。各々で必要なものを見る。
「わぁ、純正品高い…」
千晶が呻くと加那太が笑う。
「分かる。僕もそう思うよ」
「家の場合は代替品だぞ。安いプリンタだからいつ壊れてくれても構わないから」
「千尋はある意味、ドケチだもんね」
「倹約家って言って欲しいな」
真司が思わずといった様子で噴き出す。加那太と千尋のやり取りはまるで夫婦漫才のようでいつもおかしい。
「加那、そろそろ帰らないと。今日中に年賀状刷るんだろ?」
加那太と千晶は結局ずっと話していた。たわいもない話だがまたそれが楽しいのである。
「わぁ、そうだった。じゃあ、あきくん、またね!」
加那太は千尋のもとに急いだのだった。
今年の冬も暖かい。加那太はそれに安心していた。
おわり
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