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その他
千尋と千晶②(俺を殴ってくれ)
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「わ、千尋!なにこれ!」
ある土曜日の午前中に、千尋と加那太は近くのスーパーへ食材の買い出しに行って帰ってきたところだ。
毎週一回、一週間分の食材をまとめ買いするのが通例となっている。
加那太と手分けをして食材や日用品の片付けをしていたら、加那太がそう叫んだのだ。
「千尋、サランラップと味噌ありすぎ」
加那太に呼ばれて行ってみると、味噌が3つ、サランラップが5個もあった。
千尋はそれを見て思い出す。会社帰りにたまたま寄ったスーパーで安くなっていたのだ。
「セールやっててつい…」
「ついっていう量じゃないよ。
夕飯に豚汁作る?」
加那太が呆れながらもそう提案してくれたので、千尋は頷いた。
✣✣✣
「わぁ、千尋さんでもそんなことあるんですね」
その次の週、千尋は千晶とお互いを褒め合う会を喫茶店で開いている。もうこの会も三度目だ。
お互いに家事や仕事の愚痴を言い合うだけの会である。そしてなるべくポジティブな内容するという試みをする。お互いに話していると、似たようなことでストレスを感じることがわかってきている。
話しながらも、千尋は自宅にある味噌とサランラップの量に今更ながら恐れ慄いていた。
相手が千晶だから、本音を言える。
「悪いんだけど、買い過ぎたやつもらってくれないか?」
千尋はカバンから味噌を1つ、サランラップを2つ取り出す。千晶がそれを見て顔を曇らせた。
千尋が首を傾げると、千晶は決まり悪そうに言った。
「実は俺も料理酒とごま油買いすぎちゃって持ってきたんです」
「なんだって?」
「本当にそうですよね。二人暮らしだと調味料なんてそんなに使わないのについ欲張って」
「わかる」
大容量になればなるほど安い。
「分かった。交換しよう。あきもそういうのあるんだな」
意外という感情を言葉に乗せて発すると、千晶は首を横に振った。
「こんなのしょっちゅうですよ。本当、誰か俺を殴ってでも止めてほしいです」
「そんなにか?」
さすがに千尋は噴き出してしまった。
「俺、無駄遣い大嫌いなんです」
「わかる」
千尋もコストパフォーマンスに関してはうるさい方だ。
「そのお金、貯金してればって毎回思うんですよね」
「その通りだよな」
「でも買い過ぎちゃうの俺だけじゃないんだって分かってよかったです」
にっこりと千晶が笑う。千尋も同じ気持ちだった。
「また買い過ぎたら交換しないか?」
「いいんですか?」
「俺はこれを繰り返す自信がある」
今度は千晶が笑い出す。
「分かります。俺も毎回やっちゃったって思うけどやめられないから」
お互いに家計を握っているからこそ分かる。
「でも気を付けよう、お互いに」
「はい」
二人は頷きあった。二人で話していると、また違った良さがある。千尋も千晶も純粋に楽しいと思えるのだ。
おわり
ある土曜日の午前中に、千尋と加那太は近くのスーパーへ食材の買い出しに行って帰ってきたところだ。
毎週一回、一週間分の食材をまとめ買いするのが通例となっている。
加那太と手分けをして食材や日用品の片付けをしていたら、加那太がそう叫んだのだ。
「千尋、サランラップと味噌ありすぎ」
加那太に呼ばれて行ってみると、味噌が3つ、サランラップが5個もあった。
千尋はそれを見て思い出す。会社帰りにたまたま寄ったスーパーで安くなっていたのだ。
「セールやっててつい…」
「ついっていう量じゃないよ。
夕飯に豚汁作る?」
加那太が呆れながらもそう提案してくれたので、千尋は頷いた。
✣✣✣
「わぁ、千尋さんでもそんなことあるんですね」
その次の週、千尋は千晶とお互いを褒め合う会を喫茶店で開いている。もうこの会も三度目だ。
お互いに家事や仕事の愚痴を言い合うだけの会である。そしてなるべくポジティブな内容するという試みをする。お互いに話していると、似たようなことでストレスを感じることがわかってきている。
話しながらも、千尋は自宅にある味噌とサランラップの量に今更ながら恐れ慄いていた。
相手が千晶だから、本音を言える。
「悪いんだけど、買い過ぎたやつもらってくれないか?」
千尋はカバンから味噌を1つ、サランラップを2つ取り出す。千晶がそれを見て顔を曇らせた。
千尋が首を傾げると、千晶は決まり悪そうに言った。
「実は俺も料理酒とごま油買いすぎちゃって持ってきたんです」
「なんだって?」
「本当にそうですよね。二人暮らしだと調味料なんてそんなに使わないのについ欲張って」
「わかる」
大容量になればなるほど安い。
「分かった。交換しよう。あきもそういうのあるんだな」
意外という感情を言葉に乗せて発すると、千晶は首を横に振った。
「こんなのしょっちゅうですよ。本当、誰か俺を殴ってでも止めてほしいです」
「そんなにか?」
さすがに千尋は噴き出してしまった。
「俺、無駄遣い大嫌いなんです」
「わかる」
千尋もコストパフォーマンスに関してはうるさい方だ。
「そのお金、貯金してればって毎回思うんですよね」
「その通りだよな」
「でも買い過ぎちゃうの俺だけじゃないんだって分かってよかったです」
にっこりと千晶が笑う。千尋も同じ気持ちだった。
「また買い過ぎたら交換しないか?」
「いいんですか?」
「俺はこれを繰り返す自信がある」
今度は千晶が笑い出す。
「分かります。俺も毎回やっちゃったって思うけどやめられないから」
お互いに家計を握っているからこそ分かる。
「でも気を付けよう、お互いに」
「はい」
二人は頷きあった。二人で話していると、また違った良さがある。千尋も千晶も純粋に楽しいと思えるのだ。
おわり
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