真実のひとつ

はやしかわともえ

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スイーツ

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「一津さん?ここって?」

「私に付いてきてください」

一津さんに引っ張られてやってきたのはホテルだった。
なんだか見覚えがある。
ここは、予約がなかなか取れないことで有名なスイーツバイキングのレストランがあるホテルだ。

「アカリちゃんはスイーツがお好きだと聞きました。だから新に頼んでみたんです」

「新さんに?」

「少し悔しいですが、新はそういう所で顔が利くみたいで」

「なるほど」

新さんの大人の力はなかなか強大だ。

(アオ、すごい人に気に入られちゃってる)

「さ、アカリちゃん。沢山食べましょ!」

あたしは頷いた。
でも、ハンカチを一度盗まれたことが未だにショックだ。

「アカリちゃん?大丈夫ですか?」

一津さんがあたしの顔を覗き込んでくる。

「あたし、一津さんがいてくれてなかったら、ハンカチを失くしていました。本当にありがとうございます」


「アカリちゃん」

「あたしにとって、アオはお星様なんです、ずっと同じ場所にいてあたしを励ましてくれるから」

「そうなんですね」

一津さんがあたしの頭を撫でてくれる。

「一津さん、本当にありがとうございます」

「私がアカリちゃんにできるのはわずかなことだけです」

でも、と一津さんが呟いた気がした。
それは、あたしの聞き間違いだったのかもしれない。

おわり






おまけSS


「あーちゃん、お帰り」

ある日の夜、会社の帰り道に葵がいた。またあたしを待っていてくれたらしい。

「アオ、ただいま」


「新さんから聞いた。
あのハンカチ、盗まれそうになったって」

「うん」

「オレがサインなんか書いたから」

「アオは悪くないよ」

でも、と葵は呟く。

「あたしは、アオとこうして話せるだけで十分だから」

「あーちゃん」

葵はそれきり黙ってしまう。
あたしを励まそうと必死に言葉を探してくれている。

「アオ、かけっこしよ?」

「へ?」

「よーい、どん!」

あたしは駆け出した。

「あーちゃん!待ってよー!」

あたしはこれからどうしたら、いいんだろう?

おわり
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