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三章
十話・日常
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神々に関する事件の捜査は一旦幕を閉じた。ナナセ、ハンマー、ルビィはサーラのそばに仕えることになった。このことは一部の者しか知らない。
「え…?」
シンとサーラは耳を疑っていた。ここはアデス城の医務室である。
「だから、サーラちゃんのお腹に赤ちゃんがいるの!」
ボマスはいつも通り屈強な体をピンク色のナース服で包んでいる。
「え、それってつまり…」
シンがつっかえながら言うと、ボマスが頷いた。
「そうよ、御懐妊よ!」
「すごいよ、サーラ!!」
「シンの子供が産めるなんて」
サーラは泣いてしまっていた。なかなか彼の子供を宿せないことに焦りを感じていたのだ。
「サーラちゃんはまだ若いんだから全然大丈夫よ!いい?安定期まで無理しちゃ駄目よ」
「分かりました、先生」
サーラがこくこく頷くと、ボマスが笑う。
「シンちゃんもお父さんになるんだからしっかりしないとね」
バシバシとかなり強く背中を叩かれてシンが呻く。
「サーラ!赤ちゃんが出来たって本当?」
ナオが珍しく息を荒くしてやってきた。
「あぁ。元気な子だといいんだが」
「大丈夫。僕がサーラを守るよ」
「ありがとうな、ナオ」
✢✢✢
サーラはナナセを従えて、沼のほとりにいる。ここには常に不思議な気配が漂っている。サーラの大好きな場所の一つだった。
「姫様、お身体に障りますよ。もう、城に戻りましょう」
「ナナセ、ちょっと待ってくれ。もう少しお祈りがしたいんだ」
ナナセがそんなサーラにストールをかける。
「ありがとう、ナナセ」
「…」
サーラが必死に祈っているのをナナセは見つめていた。人間というものを彼は未だに理解できていない。
「サーラ、モウサムイ、帰ルぞ」
しばらくした後、見かねてやって来たのはハンマーだ。
「ハンマー、姫様を頼む」
「了解」
ハンマーが優しくサーラを抱き上げる。
サーラはそれに笑ったのだった。
「え…?」
シンとサーラは耳を疑っていた。ここはアデス城の医務室である。
「だから、サーラちゃんのお腹に赤ちゃんがいるの!」
ボマスはいつも通り屈強な体をピンク色のナース服で包んでいる。
「え、それってつまり…」
シンがつっかえながら言うと、ボマスが頷いた。
「そうよ、御懐妊よ!」
「すごいよ、サーラ!!」
「シンの子供が産めるなんて」
サーラは泣いてしまっていた。なかなか彼の子供を宿せないことに焦りを感じていたのだ。
「サーラちゃんはまだ若いんだから全然大丈夫よ!いい?安定期まで無理しちゃ駄目よ」
「分かりました、先生」
サーラがこくこく頷くと、ボマスが笑う。
「シンちゃんもお父さんになるんだからしっかりしないとね」
バシバシとかなり強く背中を叩かれてシンが呻く。
「サーラ!赤ちゃんが出来たって本当?」
ナオが珍しく息を荒くしてやってきた。
「あぁ。元気な子だといいんだが」
「大丈夫。僕がサーラを守るよ」
「ありがとうな、ナオ」
✢✢✢
サーラはナナセを従えて、沼のほとりにいる。ここには常に不思議な気配が漂っている。サーラの大好きな場所の一つだった。
「姫様、お身体に障りますよ。もう、城に戻りましょう」
「ナナセ、ちょっと待ってくれ。もう少しお祈りがしたいんだ」
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「ありがとう、ナナセ」
「…」
サーラが必死に祈っているのをナナセは見つめていた。人間というものを彼は未だに理解できていない。
「サーラ、モウサムイ、帰ルぞ」
しばらくした後、見かねてやって来たのはハンマーだ。
「ハンマー、姫様を頼む」
「了解」
ハンマーが優しくサーラを抱き上げる。
サーラはそれに笑ったのだった。
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