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三章
八話・考え
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シンの元に連絡が来たのは、サーラが夢に堕ちてかららしい。三柱によれば、ハンマーはとても興奮しているそうだ。捕縛されたにも関わらず意識を失うどころか散々暴れ回っているらしい。ハンマーは今、人間の肉体を使い顕現している。本来であればその肉体から離れれば概念になれるのだが、三柱の捕縛はそれを許さなかった。檻はアデス城の裏側にある礼拝堂にあるらしい。シンに連れられて、サーラとルビィは檻を遠目から観察した。
ハンマーは何度も何度も檻を掴んではガシャガシャと揺らしている。
「ああやってずっと暴れてる」
「ハンマー…」
ルビィは大きな瞳を潤ませた。彼女とハンマー、そしてナナセにはなにか繋がりがあるのか、とサーラはルビィを見つめた。ルビィが言う。
「あのね、ハンマーもナナセも元々はルビィと同じでお父様のそばにいたんだよ。でも今回の件で二人はお父様を裏切ったの。お父様は怒っていない。だってルビィたちはもう消えるだけ」
サーラはそれだけは避けたかった。ルビィと一緒にいられてどれだけ嬉しかったことか、楽しかったことか。
「ルビィ、どうしても消えなくちゃいけないのか?」
「それはもう決まったこと。ルビィたちはニンゲンの世界に干渉し過ぎてる。ニンゲンは自分たちの世界を自分たちの力で作るべきなんだよ。神様は概念、外側から見守るものなの」
サーラは言葉を返せなかった。ルビィも本心から消えることを望んでいるわけではないと感じ取ったからだ。だが、彼女は自分の運命を受け入れている。だからこそサーラは彼女の意志を尊重したいと思った。ルビィが呟く。
「あとはナナセだよね。でも流石にあの三柱でもナナセを罠にかけるのは困難だと思う」
「私がここでナナセを待ってみようか」
「サーラ?何言って…」
シンが慌てたように言うのをサーラは笑って止めた。
「大丈夫だ、シン。ナナセは確かに頭が回るかもしれない。だがこちらには人質がいるからな」
「だからって危なすぎるんじゃ…」
「誰もサーラ一人でなんて言ってないじゃん」
いつの間にかナオが当然のようにいる。サーラは彼を見つめて笑った。
「来てくれてありがとう、ナオ」
「サーラのために僕はいるんだから当たり前じやん」
「シン、頼みたいことがあるんだ」
「僕に出来ることならなんでも」
サーラは自分の考えをみんなに話した。
ハンマーは何度も何度も檻を掴んではガシャガシャと揺らしている。
「ああやってずっと暴れてる」
「ハンマー…」
ルビィは大きな瞳を潤ませた。彼女とハンマー、そしてナナセにはなにか繋がりがあるのか、とサーラはルビィを見つめた。ルビィが言う。
「あのね、ハンマーもナナセも元々はルビィと同じでお父様のそばにいたんだよ。でも今回の件で二人はお父様を裏切ったの。お父様は怒っていない。だってルビィたちはもう消えるだけ」
サーラはそれだけは避けたかった。ルビィと一緒にいられてどれだけ嬉しかったことか、楽しかったことか。
「ルビィ、どうしても消えなくちゃいけないのか?」
「それはもう決まったこと。ルビィたちはニンゲンの世界に干渉し過ぎてる。ニンゲンは自分たちの世界を自分たちの力で作るべきなんだよ。神様は概念、外側から見守るものなの」
サーラは言葉を返せなかった。ルビィも本心から消えることを望んでいるわけではないと感じ取ったからだ。だが、彼女は自分の運命を受け入れている。だからこそサーラは彼女の意志を尊重したいと思った。ルビィが呟く。
「あとはナナセだよね。でも流石にあの三柱でもナナセを罠にかけるのは困難だと思う」
「私がここでナナセを待ってみようか」
「サーラ?何言って…」
シンが慌てたように言うのをサーラは笑って止めた。
「大丈夫だ、シン。ナナセは確かに頭が回るかもしれない。だがこちらには人質がいるからな」
「だからって危なすぎるんじゃ…」
「誰もサーラ一人でなんて言ってないじゃん」
いつの間にかナオが当然のようにいる。サーラは彼を見つめて笑った。
「来てくれてありがとう、ナオ」
「サーラのために僕はいるんだから当たり前じやん」
「シン、頼みたいことがあるんだ」
「僕に出来ることならなんでも」
サーラは自分の考えをみんなに話した。
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