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二章
十六話・神々たち
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「サーラ、大丈夫?」
「ものすごく暑い…ルビィは大丈夫なのか?」
通路を進むにつれて、サーラは猛烈な熱に襲われていた。炎の神のせいだろうか。
「ルビィはここにいる時は概念なんだ。ニンゲンはそうゆうのも感じることが出来るんだね」
ルビィが羨ましそうに言う。サーラとしては平気そうなルビィが羨ましい。お互い、ないものを欲しているのがなんだか滑稽だな、とサーラは思った。神々にとって、人間という存在は憧れの対象らしい。ずっと概念として在り続ける神はただただ退屈なのかもしれない。
ようやくひらけた場所に出た。目の前にいたのは赤い巌のような男だ。
「マーズ!サーラを連れてきたよ」
ルビィは気安く声を掛けるが、サーラは大丈夫だろうか、とハラハラしてしまった。彼はそれ程険しい顔をしていたからだ。
「サーラ、といったな?」
マーズと呼ばれた神が片目を開けてサーラをぎろりと睨みつける。サーラは驚いて後ずさったが、なんとか頷いた。
「何故お前がここにいるか、理由は分かるか?」
「…ハンマーとナナセを止めるためです」
サーラの言葉にマーズはふむ、と頷く。
「我々、神々は人間の信仰で存在出来ている。それがなくなればどうなると思う?」
「え…」
問にサーラは答えられなかった。
「サーラ、神々にとっては人間の信じる気持ちが全てだ。世界中にいる人間たちは漠然と神の存在を信じているだろう?」
確かにその通りだとサーラは頷いた。
「我らが親父殿は神々を消そうとされている。我々は永く生きすぎたと言っておられるのだ」
「だからハンマーとナナセはお父さまに反抗したんだよ」
神々にも人間と同じように確執が存在するらしい。
「そのお父様とお話は出来ないのでしょうか?」
「それは無理な話ね」
サーラの質問に答えたのはルビィでもマーズでもなかった。振り返ると、水色の肌をした女性がカツカツと高い靴音を響かせながら歩いてくる。
「アクア!!帰っていたの?」
ルビィに向かって彼女はにっこりと微笑んだ。
「さっき帰って来たの。ラーが面白いことがあるからってね。ふうん、あなたがサーラね」
美しいアクアにじっと見つめられて、サーラは落ち着かない気持ちになる。
「質問の答えだけど、お父様は人に紛れて生活しているわ。それかあたしたちのいけない高みにいるかのどちらかなの」
「そんな…じゃあみんなは消えてしまうのか?」
サーラの問に神々たちは首を横に振った。
「あたしたちは元々概念よ。こうして性格や姿を得られたのはお父様がこの世界を作ってくれたからなの。だから顕現だってずっと容易くなった」
「ルビィたちはずっとずーっとサーラたちと一緒にいるよ!」
「ハンマーやナナセは反抗しているが親父殿にそもそも敵うはずがないのだ。大きなことを言っていられるのも今のうちだけ。焼け石に水だ」
「話はまとまったみたいだね」
「ラー、高みの見物なんて優雅なものね?」
ラーは金髪の青年だった。アクアの言葉に彼がたはは、と困ったように笑う。
「そんなつもりじゃなかったんだけど結果的にはそうなっちゃうのかな?」
「あんた、この子に力を貸すつもりなの?」
ラーが顔を引き締める。アクアもサーラを見つめてくる。
「サーラ、僕たちは君に力を貸す。ハンマーとナナセが暴れてもいいようにこれ以上ないくらい強力な結界を張ろう。
ただし、それにはかなりの時間を要する。その間あの子達はきっと悪さをする。それでも…」
サーラは頷いていた。
「どうかあなた達の力を貸してください。それしかもう方法がないんでしょう?」
神々たちはしばらく黙っていた。そして同時に頷く。
「よし、早速取り掛かろう!」
「サーラ、そろそろ戻ろう。朝が来るよ」
ルビィに言われてサーラは頷いたのだった。
「ものすごく暑い…ルビィは大丈夫なのか?」
通路を進むにつれて、サーラは猛烈な熱に襲われていた。炎の神のせいだろうか。
「ルビィはここにいる時は概念なんだ。ニンゲンはそうゆうのも感じることが出来るんだね」
ルビィが羨ましそうに言う。サーラとしては平気そうなルビィが羨ましい。お互い、ないものを欲しているのがなんだか滑稽だな、とサーラは思った。神々にとって、人間という存在は憧れの対象らしい。ずっと概念として在り続ける神はただただ退屈なのかもしれない。
ようやくひらけた場所に出た。目の前にいたのは赤い巌のような男だ。
「マーズ!サーラを連れてきたよ」
ルビィは気安く声を掛けるが、サーラは大丈夫だろうか、とハラハラしてしまった。彼はそれ程険しい顔をしていたからだ。
「サーラ、といったな?」
マーズと呼ばれた神が片目を開けてサーラをぎろりと睨みつける。サーラは驚いて後ずさったが、なんとか頷いた。
「何故お前がここにいるか、理由は分かるか?」
「…ハンマーとナナセを止めるためです」
サーラの言葉にマーズはふむ、と頷く。
「我々、神々は人間の信仰で存在出来ている。それがなくなればどうなると思う?」
「え…」
問にサーラは答えられなかった。
「サーラ、神々にとっては人間の信じる気持ちが全てだ。世界中にいる人間たちは漠然と神の存在を信じているだろう?」
確かにその通りだとサーラは頷いた。
「我らが親父殿は神々を消そうとされている。我々は永く生きすぎたと言っておられるのだ」
「だからハンマーとナナセはお父さまに反抗したんだよ」
神々にも人間と同じように確執が存在するらしい。
「そのお父様とお話は出来ないのでしょうか?」
「それは無理な話ね」
サーラの質問に答えたのはルビィでもマーズでもなかった。振り返ると、水色の肌をした女性がカツカツと高い靴音を響かせながら歩いてくる。
「アクア!!帰っていたの?」
ルビィに向かって彼女はにっこりと微笑んだ。
「さっき帰って来たの。ラーが面白いことがあるからってね。ふうん、あなたがサーラね」
美しいアクアにじっと見つめられて、サーラは落ち着かない気持ちになる。
「質問の答えだけど、お父様は人に紛れて生活しているわ。それかあたしたちのいけない高みにいるかのどちらかなの」
「そんな…じゃあみんなは消えてしまうのか?」
サーラの問に神々たちは首を横に振った。
「あたしたちは元々概念よ。こうして性格や姿を得られたのはお父様がこの世界を作ってくれたからなの。だから顕現だってずっと容易くなった」
「ルビィたちはずっとずーっとサーラたちと一緒にいるよ!」
「ハンマーやナナセは反抗しているが親父殿にそもそも敵うはずがないのだ。大きなことを言っていられるのも今のうちだけ。焼け石に水だ」
「話はまとまったみたいだね」
「ラー、高みの見物なんて優雅なものね?」
ラーは金髪の青年だった。アクアの言葉に彼がたはは、と困ったように笑う。
「そんなつもりじゃなかったんだけど結果的にはそうなっちゃうのかな?」
「あんた、この子に力を貸すつもりなの?」
ラーが顔を引き締める。アクアもサーラを見つめてくる。
「サーラ、僕たちは君に力を貸す。ハンマーとナナセが暴れてもいいようにこれ以上ないくらい強力な結界を張ろう。
ただし、それにはかなりの時間を要する。その間あの子達はきっと悪さをする。それでも…」
サーラは頷いていた。
「どうかあなた達の力を貸してください。それしかもう方法がないんでしょう?」
神々たちはしばらく黙っていた。そして同時に頷く。
「よし、早速取り掛かろう!」
「サーラ、そろそろ戻ろう。朝が来るよ」
ルビィに言われてサーラは頷いたのだった。
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