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二章
十三話・理由
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「ふーん、なるほどねえ」
サーラの点滴はやっと終わったが、大事を取ってもう一晩医務室にいることになった。サーラが休めないからと、ナオとシンは談話室に移動している。
ナオが椅子に足を組んで座っていた。まだ頭の怪我は治りきっておらず、包帯が巻かれている。
「ナオはもう大丈夫なの?」
シンの言葉にナオは笑った。
「うちに居る超厳しい産業医から許可は得てるよ。まあ体が鈍るのが一番困るしね」
ナオは警察隊長だ。常に一番前で戦わねばならない。体が鈍って戦えなくなるよりはいいという判断なのだろう。ナオの戦闘センスはそれだけ秀でている。
「父さん…部長もサーラの力を借りる必要があるかもしれないって」
「え…おじさんが?」
ナオは頷いた。
「珍しいよね。普段はサーラが力を使うのすごく心配するのに」
「サーラ自身はバンバン力を使うからな」
シンの苦笑いにナオは笑った。
「父さんには黙っとく」
「お願いします。で、用件は何?」
シンが表情を引き締めると、ナオも真面目な顔で頷いた。
「ルビィ、いる?」
ナオの言葉にふ、とルビィが姿を現す。ずっとそばに潜んでいたらしい。
「ナオ、よく分かったね?ルビィ気配消してたよ?サーラと一緒?」
「僕は一度感じた気配は忘れないから、ハンマーの気配も多分、理屈上でいえば辿れるはずなんだよ」
「今辿れないの?」
シンの言葉にナオが目を閉じて唸る。
「んー、無理」
「神々は顕現しても概念次元にいられるんだよ。ルビィは精霊だから姿を消してるだけだけど」
ルビィが説明してくれる。
「だからいつもあいつらの後を追いかけられないのか」
「謎が解けたね」
「あのね…」
ルビィの声に力がこもる。二人は何事かと彼女を見つめた。
「お父様をいつも守護している三柱の力を借りればどうかなって思うの。サーラと一緒にお願いに行けばきっと力を貸してもらえる…と思う」
「サーラとルビィの二人で行くの?」
「うん。サーラは精霊に愛されている。三柱もサーラの頼みなら無視できないはずだよ」
シンとナオはお互いの顔を見合った。
「なんか危なくない?」
「大丈夫だよ。ルビィ、秘密の通路知ってるもん。それにルビィも今はこうだけど、そこそこ戦えるんだよ。サーラを絶対に、絶対に守るよ」
ルビィの必死な様子に、とりあえずサーラの体調が戻ってから、という結論を二人は出したのだった。
サーラの点滴はやっと終わったが、大事を取ってもう一晩医務室にいることになった。サーラが休めないからと、ナオとシンは談話室に移動している。
ナオが椅子に足を組んで座っていた。まだ頭の怪我は治りきっておらず、包帯が巻かれている。
「ナオはもう大丈夫なの?」
シンの言葉にナオは笑った。
「うちに居る超厳しい産業医から許可は得てるよ。まあ体が鈍るのが一番困るしね」
ナオは警察隊長だ。常に一番前で戦わねばならない。体が鈍って戦えなくなるよりはいいという判断なのだろう。ナオの戦闘センスはそれだけ秀でている。
「父さん…部長もサーラの力を借りる必要があるかもしれないって」
「え…おじさんが?」
ナオは頷いた。
「珍しいよね。普段はサーラが力を使うのすごく心配するのに」
「サーラ自身はバンバン力を使うからな」
シンの苦笑いにナオは笑った。
「父さんには黙っとく」
「お願いします。で、用件は何?」
シンが表情を引き締めると、ナオも真面目な顔で頷いた。
「ルビィ、いる?」
ナオの言葉にふ、とルビィが姿を現す。ずっとそばに潜んでいたらしい。
「ナオ、よく分かったね?ルビィ気配消してたよ?サーラと一緒?」
「僕は一度感じた気配は忘れないから、ハンマーの気配も多分、理屈上でいえば辿れるはずなんだよ」
「今辿れないの?」
シンの言葉にナオが目を閉じて唸る。
「んー、無理」
「神々は顕現しても概念次元にいられるんだよ。ルビィは精霊だから姿を消してるだけだけど」
ルビィが説明してくれる。
「だからいつもあいつらの後を追いかけられないのか」
「謎が解けたね」
「あのね…」
ルビィの声に力がこもる。二人は何事かと彼女を見つめた。
「お父様をいつも守護している三柱の力を借りればどうかなって思うの。サーラと一緒にお願いに行けばきっと力を貸してもらえる…と思う」
「サーラとルビィの二人で行くの?」
「うん。サーラは精霊に愛されている。三柱もサーラの頼みなら無視できないはずだよ」
シンとナオはお互いの顔を見合った。
「なんか危なくない?」
「大丈夫だよ。ルビィ、秘密の通路知ってるもん。それにルビィも今はこうだけど、そこそこ戦えるんだよ。サーラを絶対に、絶対に守るよ」
ルビィの必死な様子に、とりあえずサーラの体調が戻ってから、という結論を二人は出したのだった。
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