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克樹のうた

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「むむ…」

『克樹、最近勉強熱心だよね』

向かいの席に座っている克樹を見て、樹の隣に座っていた風がそっと耳打ちして来た。
ここは図書室だ。他にも勉強をしている生徒がいる。放課後はいつもこんな風景だ。
夢プロの課題は毎日たっぷり出る。自主学習の時間だけでは全ての課題をこなすにはとても足りない。

樹が克樹に作詞を任せてから3日目。
克樹に変化が見られてきていた。
彼が自発的に課題をやり始めたのだ。
今日も図書室に行こうと最初に誘ってきたのは克樹だった。
その変化に風と樹は驚いていた。
今、克樹は英語の課題を解いているらしい。
教科書とにらめっこをしている。

『かっちゃんはやれば出来るから』

そっと答えると、風が笑って頷いてくれた。
彼にもよくわかっているのだろう。

「終わった…よし」

克樹が急に立ち上がる。
どうやら課題が終わったらしい。

「いっくん、風、俺、行くね!」

「え?あ、うん」

克樹は最近一人で、こうしてどこかに行くようにもなった。
どこに行っているか聞いても、笑ってはぐらかされてしまう。

「絶対いい曲にするから」という言葉付きで。

『克樹、かっこよくなったよね』

風の言葉に樹はドキリとした。
克樹は元からかっこいい。
だがますますそれが高まっているのを樹も感じていた。

『樹、僕達も課題頑張ろ』

『うん』

(皆、それぞれ頑張ってるんだ。俺も負けてられないな)

自分は仮にもプロデューサーという肩書を背負っている。
このユニット「seasons」を引っ張っていかなくてはならない。

「あー、肩こった」

しばらくして課題が終わった。風が自分の肩を揉んでいる。
風が肩こり持ちだと知ってからは樹と克樹はよく彼の肩を叩いてやっていた。

「樹、僕も衣装作りに戻るね、お疲れ様」

風が教科書をカバンにしまい立ち上がる。

「お疲れ」

樹も寮の談話室に戻ることにした。
最近「seasons」の活動目録を作っている。
毎日報告された作業の進捗などを細かくノートに付けていた。

「樹くん、こんにちは」

樹がノートを読み直していると、渚がこちらに歩いてきた。
樹は慌てて立ち上がる。

「渚先輩!お疲れ様です!」

「そんなに畏まらなくていいよ」

「でも今ツアー中でお忙しいんじゃ…」

樹の言葉に渚は笑った。

「うん、ある人に呼び出されたんだよ。
君を喜ばせたいからって」

もしかして…と樹は心当たりがある。

「あ、あの、もしかしてかっちゃんに呼び出されたんですか?」

「まぁね。君のために最高の歌詞を書きたいって」

「その、すみません。お忙しいのに」

「いいんだ。僕は君達が気に入っている」

渚がそう言ってくれて嬉しい。

「あ、あのかっちゃんは、どこに?」

「うん、屋上で確認してる」

「渚先輩、俺行って来ます!」

「うん」

樹はぺこりと渚に頭を下げて屋上へ急いだ。
克樹はどんな詞を書いたのだろう。
それがとにかく楽しみだった。
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