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夏休み開始!

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「はぁぁあ。もう疲れたよ、いっくん」

夕方になると克樹が樹のベッドにこうして倒れ込んでるのは既に日常茶飯事になっている。
今日は終業式だった。
明日からいよいよ夏休みが始まる。

夏休みは、ダンスレッスンに始まり、MVの撮影行程をこなしていかなければならない。
しかも夏休み明けにはテストもある。

課題はどの教科からもたっぷり出ていた。オーディションに出るためには全て期日に提出しなければならない。

風は衣装作りの件で、お盆にだけ実家に帰るらしい。樹と克樹もそうすることにしていた。

両親は二人を心配して、よく荷物を送ってくれる。大体中身はスナック菓子やジュースだ。
克樹がそれをムシャムシャ食べているのを樹はいつも見守っている。

「かっちゃんが疲れちゃうなんて珍しいね」

樹がベッドの隅にちょこんと座りながら言うと、克樹が起き上がってぐ、と足を180℃に開く。
克樹は体が柔らかい。
この学校に入ってからますますだ。

「あー、やっぱり疲れた時はストレッチだわ」

そんなことを言いながら足をめいっぱい広げた状態で体を前に倒す。

「伸びるー!」

「かっちゃんすごいね!いつの間にそんなに出来るようになったの?」

「疾風が毎日ストレッチやれって言うから渋々やってたらこうなった」

確かに、克樹を説得できるのは疾風くらいだ。

「かっちゃんは今回のオーディションどう思う?本当に出たい?」

「なになに?いっくん。
俺のことが心配なの?」

「うん。だってオーディションに出る事は急に決まったでしょ?
みんなに考える時間もなかったし」

克樹が体勢を戻して樹の頭を撫でる。

「みんなのことは分からないけど、俺はチャンスだと思ってる。
だって、せっかくの機会じゃん!」

克樹の前向きな気持ちが嬉しい。

「そう言ってもらえてよかった」

「でね、いっくん」

「?」

克樹にぎゅうっと抱き締められる。

「ね、夏休みもデート行こ」

「!!」

耳元で囁かれて、樹は顔が熱くなった。
ニコニコと克樹は笑っている。

「好きだよ、いっくん」

「う、うん」

ドキドキし過ぎて頷くことしかできない。
克樹はやはりカッコいい。

カチリ、とドアの開く音がした。風が戻ってきたらしい。

「あ、風ー。お疲れー」

克樹が声を掛ける。

「二人もお疲れ様。終業式も終わったしいよいよ夏休みだね」

風がにっこりと笑う。彼の優しい穏やかな部分が樹も克樹も大好きだった。

でね、と風が真剣な表情になる。
樹と克樹は何事だろうと首を傾げた。

「衣装なんだけど、もう少しなんだ。
樹はMVのこと、なんか決まった?」

樹はこの間、真城と話した時のことを二人に話した。
ダンスシーンに加えて一人ずつの歌唱シーンも入れることを知らせる。

「わぁ、本格的だね」

「この間真城先輩からダンスレッスンの時のデータをもらったんだ」

樹はスマートフォンを取り出した。

「わ、それこの前撮ってたやつ?観たい!!」

「僕も!」

樹はスマートフォンを二人にも見えるように掲げて、動画を流したのだった。
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