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好き
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ファストフード店に入ると、やはりここも混んでいた。
店員らが忙しく働いている。
二階であれば席が空いていると言われて、注文を済ませた2人は商品の載った盆を持って階段を上がる。
樹はチーズバーガーを選び、克樹はこの店で一番大きなハンバーガーを頼んでいた。
オニオンリング、ポテト、ナゲットも忘れない。
「「いただきまーす」」
2人は各々のバーガーにかぶり付いた。
口一杯に頬張りすぎて咀嚼に時間がかかる。
もぐもぐと噛み続け、2人は口の中のバーガーをようやく飲み込んだ。
「うっわ、美味いねえ」
克樹がすかさず炭酸ジュースを飲んでいる。
「うん、美味しい。ジャンクフード最高」
樹もジュースを飲んだ。
次はオニオンリングを掴んで頬張る。
衣がざくざくするのが食べていて気持ちいい。
「ジャンクフードだけど、野菜も摂ってるからいいよね」
「そうだよ!じゃがいもだって野菜だし」
克樹もそんなことを言いながらポテトを食べている。
(かっちゃんと一緒だと嬉しいな)
そこまで考えて、樹は頭を振った。
なんだか思い出してはいけないことを思い出しそうになった。だがその記憶は自然と引きずり出されてくる。
(俺、かっちゃんが大好きなんだ)
「いっくん?どした?」
克樹に顔を覗き込まれて、樹は首を横に振った。
「なんでもないよ」
(かっちゃんはきっとやだよね)
なんだかのどがひりひりした。目頭が熱い。
「かっちゃん、俺トイレ行ってくる」
「うん」
樹はトイレに駆け込んだ。どうしようもないこの熱い気持ちを樹はずっと忘れたつもりになっていた。
だが、克樹と楽しく毎日過ごすうちに思い出してしまった。
自分の兄が大好きで、ずっと劣情を抱いている。そんな自分が嫌で仕方なかった。
なんでこんなに、大事なことを忘れていたのだろう。克樹とはこれからもずっと一緒だ。
この気持ちを抱えたまま、これから生きていかねばならないのだろうか。
だが、今までもこの気持ちは確かにあった。
ずっと見ないふりをしてきたのは自分だ。
自分に改めて落ち着け、と言い聞かせる。
「いっくん?大丈夫?」
ドアの外から克樹の声がした。克樹は今どんな表情をしてるのだろう。
切なくてすぐには声を出せなかった。
「じゃ、向こうで待ってるね」
克樹の足音が遠くなる。
樹はなかなかその場を動けなかった。
(しっかりしろ、俺。普通にすればいいんだ)
顔を洗って席に戻ると、克樹はスマートフォンを弄っていた。
「お、お待たせ」
「いっくん、もうちょいだから食べちゃお?」
「うん!」
ようやくナゲットやポテトを完食する。2人は再び街へ繰り出していた。
克樹にいつも通り手を握ってもらえて嬉しい。
(俺はかっちゃんの弟だ。それで十分じゃないか)
だが、本当はもっと克樹が欲しくてたまらなかった。しかし、そんな望みは絶対に叶わないのだ。
樹は足元が崩れたような不安感をおぼえた。
だが大きく呼吸する。
克樹は自分の気持ちに気が付いていない、そう信じたい。それに今日はせっかく2人きりなのだ。もっと楽しみたかった。
「いっくん、まだ二時過ぎだしゲーセンでも行かない?」
「行く!」
克樹はゲームが上手い。樹が欲しいものはたいてい取ってくれるのだ。
そんな所も大好きだ。
「よーし、出発!」
2人は歩いてゲームセンターに向かった。
店員らが忙しく働いている。
二階であれば席が空いていると言われて、注文を済ませた2人は商品の載った盆を持って階段を上がる。
樹はチーズバーガーを選び、克樹はこの店で一番大きなハンバーガーを頼んでいた。
オニオンリング、ポテト、ナゲットも忘れない。
「「いただきまーす」」
2人は各々のバーガーにかぶり付いた。
口一杯に頬張りすぎて咀嚼に時間がかかる。
もぐもぐと噛み続け、2人は口の中のバーガーをようやく飲み込んだ。
「うっわ、美味いねえ」
克樹がすかさず炭酸ジュースを飲んでいる。
「うん、美味しい。ジャンクフード最高」
樹もジュースを飲んだ。
次はオニオンリングを掴んで頬張る。
衣がざくざくするのが食べていて気持ちいい。
「ジャンクフードだけど、野菜も摂ってるからいいよね」
「そうだよ!じゃがいもだって野菜だし」
克樹もそんなことを言いながらポテトを食べている。
(かっちゃんと一緒だと嬉しいな)
そこまで考えて、樹は頭を振った。
なんだか思い出してはいけないことを思い出しそうになった。だがその記憶は自然と引きずり出されてくる。
(俺、かっちゃんが大好きなんだ)
「いっくん?どした?」
克樹に顔を覗き込まれて、樹は首を横に振った。
「なんでもないよ」
(かっちゃんはきっとやだよね)
なんだかのどがひりひりした。目頭が熱い。
「かっちゃん、俺トイレ行ってくる」
「うん」
樹はトイレに駆け込んだ。どうしようもないこの熱い気持ちを樹はずっと忘れたつもりになっていた。
だが、克樹と楽しく毎日過ごすうちに思い出してしまった。
自分の兄が大好きで、ずっと劣情を抱いている。そんな自分が嫌で仕方なかった。
なんでこんなに、大事なことを忘れていたのだろう。克樹とはこれからもずっと一緒だ。
この気持ちを抱えたまま、これから生きていかねばならないのだろうか。
だが、今までもこの気持ちは確かにあった。
ずっと見ないふりをしてきたのは自分だ。
自分に改めて落ち着け、と言い聞かせる。
「いっくん?大丈夫?」
ドアの外から克樹の声がした。克樹は今どんな表情をしてるのだろう。
切なくてすぐには声を出せなかった。
「じゃ、向こうで待ってるね」
克樹の足音が遠くなる。
樹はなかなかその場を動けなかった。
(しっかりしろ、俺。普通にすればいいんだ)
顔を洗って席に戻ると、克樹はスマートフォンを弄っていた。
「お、お待たせ」
「いっくん、もうちょいだから食べちゃお?」
「うん!」
ようやくナゲットやポテトを完食する。2人は再び街へ繰り出していた。
克樹にいつも通り手を握ってもらえて嬉しい。
(俺はかっちゃんの弟だ。それで十分じゃないか)
だが、本当はもっと克樹が欲しくてたまらなかった。しかし、そんな望みは絶対に叶わないのだ。
樹は足元が崩れたような不安感をおぼえた。
だが大きく呼吸する。
克樹は自分の気持ちに気が付いていない、そう信じたい。それに今日はせっかく2人きりなのだ。もっと楽しみたかった。
「いっくん、まだ二時過ぎだしゲーセンでも行かない?」
「行く!」
克樹はゲームが上手い。樹が欲しいものはたいてい取ってくれるのだ。
そんな所も大好きだ。
「よーし、出発!」
2人は歩いてゲームセンターに向かった。
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