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図書室
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「え…ない?なんで??」
樹が夢プロに入学して既に、二週間が経過している。
毎日が新しい知識の詰め込みで、樹は爆発しそうになっていた。
スポンジになるために、とにかく必死だ。
今は現代文の課題に使う資料を図書室で探している。
選んだテーマに沿って小論文を書くというものだ。
夢プロは芸能学校だが、高等学校としての顔も持つ。
国語や英語なんかの普通科目の単位も卒業には必須だ。
樹は割と勉強が出来る方だった。
克樹に教えて欲しいと泣きつかれることもしばしばである。
そのため、自然と勉強せざるを得ないという部分もあるが、樹はそれなりに勉強が好きだったため、そんなに苦痛には感じなかった。
樹が探していたのはある作品の同人誌でだいぶ古いものだ。
このテーマを選ぶと樹が言ったら、教師がいい資料がここにあるからと勧められたのだ。
それを今、探しているのだがどこにも見当たらない。
樹はもう一度棚を端から確認してみた。
在庫確認をした所、その本はまだ貸し出されていないはずだ。
「さっきから、何を探している…」
す、と目の前に影が過って、樹はドキリとした。
低い無機質な声だ。樹が振り返ると、その人は樹を見下ろしている。
樹はその威圧感に驚いて後ずさった。
後ろの棚に背中がぶつかる。
「おびえるな。なにもしない」
す、と大きな手が伸びてくる。
樹は目を閉じて身体を固くした。
気が付くと頭を優しく撫でられていた。
「高山樹…というのか?」
「は…はい」
「そうか」
樹は自分の頭を撫でている誰かを見上げた。
おそらくこの学校の先輩だろう。
ネームプレートがちょうど光の加減で見えない。
「あの…先輩?ですよね?」
「あぁ。俺は秋月楓という。アイドル科の二年だ。お前のことは樹と呼ぶ」
「は、はぁ…」
楓にしばらく髪の毛をわしゃわしゃされ、彼は満足したのか、ようやく樹から離れた。
「そうだ。お前の探していた本はこれか?」
「あ!!そうです」
「すまないが、俺もこの本に用がある。
お前の課題を手伝うから俺に譲って欲しい」
「え…いいんですか?」
楓は口の端を軽く持ち上げた。
あまり表情を変えるのが得意じゃないのかもしれない。アイドル科にいるだけあって、かっこいいのは間違いない。楓が言う。
「俺は小論文なら特別、得意なんだ」
「じゃあお願いします」
図書室には他に勉強をしている生徒もいるので、2人は一年の教室に移動した。
どうやら楓がこの本の要約をしてくれるらしい。
樹は原稿用紙を机に広げた。
400字詰めのものが3枚。
「じゃあ説明を始める。しっかりメモしろ。構成が出来たら見てやる」
「はい!」
樹は慌ててシャープペンシルを握るのだった。
樹が夢プロに入学して既に、二週間が経過している。
毎日が新しい知識の詰め込みで、樹は爆発しそうになっていた。
スポンジになるために、とにかく必死だ。
今は現代文の課題に使う資料を図書室で探している。
選んだテーマに沿って小論文を書くというものだ。
夢プロは芸能学校だが、高等学校としての顔も持つ。
国語や英語なんかの普通科目の単位も卒業には必須だ。
樹は割と勉強が出来る方だった。
克樹に教えて欲しいと泣きつかれることもしばしばである。
そのため、自然と勉強せざるを得ないという部分もあるが、樹はそれなりに勉強が好きだったため、そんなに苦痛には感じなかった。
樹が探していたのはある作品の同人誌でだいぶ古いものだ。
このテーマを選ぶと樹が言ったら、教師がいい資料がここにあるからと勧められたのだ。
それを今、探しているのだがどこにも見当たらない。
樹はもう一度棚を端から確認してみた。
在庫確認をした所、その本はまだ貸し出されていないはずだ。
「さっきから、何を探している…」
す、と目の前に影が過って、樹はドキリとした。
低い無機質な声だ。樹が振り返ると、その人は樹を見下ろしている。
樹はその威圧感に驚いて後ずさった。
後ろの棚に背中がぶつかる。
「おびえるな。なにもしない」
す、と大きな手が伸びてくる。
樹は目を閉じて身体を固くした。
気が付くと頭を優しく撫でられていた。
「高山樹…というのか?」
「は…はい」
「そうか」
樹は自分の頭を撫でている誰かを見上げた。
おそらくこの学校の先輩だろう。
ネームプレートがちょうど光の加減で見えない。
「あの…先輩?ですよね?」
「あぁ。俺は秋月楓という。アイドル科の二年だ。お前のことは樹と呼ぶ」
「は、はぁ…」
楓にしばらく髪の毛をわしゃわしゃされ、彼は満足したのか、ようやく樹から離れた。
「そうだ。お前の探していた本はこれか?」
「あ!!そうです」
「すまないが、俺もこの本に用がある。
お前の課題を手伝うから俺に譲って欲しい」
「え…いいんですか?」
楓は口の端を軽く持ち上げた。
あまり表情を変えるのが得意じゃないのかもしれない。アイドル科にいるだけあって、かっこいいのは間違いない。楓が言う。
「俺は小論文なら特別、得意なんだ」
「じゃあお願いします」
図書室には他に勉強をしている生徒もいるので、2人は一年の教室に移動した。
どうやら楓がこの本の要約をしてくれるらしい。
樹は原稿用紙を机に広げた。
400字詰めのものが3枚。
「じゃあ説明を始める。しっかりメモしろ。構成が出来たら見てやる」
「はい!」
樹は慌ててシャープペンシルを握るのだった。
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