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三日目・元に戻る?
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「ふあぁ」
加那太が朝食を食べながら欠伸をしている。まだ眠たいらしい。
昨日、慣れないバス移動をした為だろう。
疲れたのは千尋も一緒である。
昨日の帰り道、加那太は家に着くまで頑張って起きていた。
自分が眠ってしまうと、千尋が大変だと思ったのだろう。
(加那はいい子だな)
「加那、朝飯食ったら少し寝たらどうだ?」
「お兄ちゃんは?」
加那太が不安そうに聞いてくる。
「俺は・・・洗濯とかするから」
「じゃあ僕も起きてる!」
むす、と加那太が膨れる。
よく分からないが、機嫌を損ねてしまったらしい。
千尋はそんな加那太の頭を撫でた。
「俺を心配してくれてありがとうな」
「お兄ちゃんのこと、僕が守るんだ!」
「ありがとう」
加那太の気持ちが嬉しくて、思わず顔が緩んでしまう。
千尋が食器を片付けていると加那太も一緒に手伝ってくれた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「どうした?」
加那太が千尋にぎゅむ、としがみついてくる。
その必死な様子に千尋は驚いた。
「お兄ちゃん、お願い。僕、お兄ちゃんが好き。だからちゅーして」
「えぇ?!」
「お兄ちゃんにはお嫁さんがいるから嫌だよね?でも…本当に一回だけだから」
「ちょ…ちょっと待ってくれ」
千尋はどうしたものか迷った。
加那太の気持ちはすごく嬉しい。
いつの間にか加那太の真剣な表情に気圧されている自分がいる。
「か、加那…あのな」
千尋は加那太の体を抱き上げた。
自分の膝の上に彼を抱える。
加那太にじっと正面から見つめられた。
(こんなチビにドキドキさせられるとは…)
千尋はしばらく悩んで加那太に真実を話すことにした。
思いをぶつけてくれた加那太にちゃんと、自分の気持ちを伝えたかったからだ。
「あのな、加那。信じられないと思うけど…」
「お兄ちゃんの言う事なら信じるもん!」
「なら言うけど、お前はもう大人なんだ。
俺の好きな人はお前なんだよ」
加那太が大きな瞳を更に見開く。
「そうだったんだ!!」
「加那太、愛してるよ」
加那太の体がみるみるうちに成長していく。
「知ってるよ」
そう言って笑ったのはいつもの加那太だった。
✣✣✣
「ん…ち、ひろ」
ちゅく、と水音が響く。
何度も二人はキスをした。
つ、と銀糸が二人の間に垂れる。
「加那、このやろう、心配かけやがって」
「ごめんって」
二人はお互いの顔を見て笑い合った。
お互いに相手を求めあっているとわかる。
「千尋、僕にすごく優しくしてくれて嬉しかったよ」
「チビには優しくしてやらないと」
それに加那太は面白くなさそうにする。
「どうせ僕はチビだよ」
「嘘だって。お前かっこよかった」
「千尋のこと、守らせてね」
「ああ」
二人は笑って抱き合うのだった。
おわり
おまけ
二人の様子を誰かが見ていた。それは加那太に力を借りた千尋によく似た誰かだった。
「加那太、力は返したからな。二人共、末永く幸せでいられるように応援している」
加那太が朝食を食べながら欠伸をしている。まだ眠たいらしい。
昨日、慣れないバス移動をした為だろう。
疲れたのは千尋も一緒である。
昨日の帰り道、加那太は家に着くまで頑張って起きていた。
自分が眠ってしまうと、千尋が大変だと思ったのだろう。
(加那はいい子だな)
「加那、朝飯食ったら少し寝たらどうだ?」
「お兄ちゃんは?」
加那太が不安そうに聞いてくる。
「俺は・・・洗濯とかするから」
「じゃあ僕も起きてる!」
むす、と加那太が膨れる。
よく分からないが、機嫌を損ねてしまったらしい。
千尋はそんな加那太の頭を撫でた。
「俺を心配してくれてありがとうな」
「お兄ちゃんのこと、僕が守るんだ!」
「ありがとう」
加那太の気持ちが嬉しくて、思わず顔が緩んでしまう。
千尋が食器を片付けていると加那太も一緒に手伝ってくれた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「どうした?」
加那太が千尋にぎゅむ、としがみついてくる。
その必死な様子に千尋は驚いた。
「お兄ちゃん、お願い。僕、お兄ちゃんが好き。だからちゅーして」
「えぇ?!」
「お兄ちゃんにはお嫁さんがいるから嫌だよね?でも…本当に一回だけだから」
「ちょ…ちょっと待ってくれ」
千尋はどうしたものか迷った。
加那太の気持ちはすごく嬉しい。
いつの間にか加那太の真剣な表情に気圧されている自分がいる。
「か、加那…あのな」
千尋は加那太の体を抱き上げた。
自分の膝の上に彼を抱える。
加那太にじっと正面から見つめられた。
(こんなチビにドキドキさせられるとは…)
千尋はしばらく悩んで加那太に真実を話すことにした。
思いをぶつけてくれた加那太にちゃんと、自分の気持ちを伝えたかったからだ。
「あのな、加那。信じられないと思うけど…」
「お兄ちゃんの言う事なら信じるもん!」
「なら言うけど、お前はもう大人なんだ。
俺の好きな人はお前なんだよ」
加那太が大きな瞳を更に見開く。
「そうだったんだ!!」
「加那太、愛してるよ」
加那太の体がみるみるうちに成長していく。
「知ってるよ」
そう言って笑ったのはいつもの加那太だった。
✣✣✣
「ん…ち、ひろ」
ちゅく、と水音が響く。
何度も二人はキスをした。
つ、と銀糸が二人の間に垂れる。
「加那、このやろう、心配かけやがって」
「ごめんって」
二人はお互いの顔を見て笑い合った。
お互いに相手を求めあっているとわかる。
「千尋、僕にすごく優しくしてくれて嬉しかったよ」
「チビには優しくしてやらないと」
それに加那太は面白くなさそうにする。
「どうせ僕はチビだよ」
「嘘だって。お前かっこよかった」
「千尋のこと、守らせてね」
「ああ」
二人は笑って抱き合うのだった。
おわり
おまけ
二人の様子を誰かが見ていた。それは加那太に力を借りた千尋によく似た誰かだった。
「加那太、力は返したからな。二人共、末永く幸せでいられるように応援している」
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