6 / 7
1
お風呂
しおりを挟む
ショッピングモールからバスに揺られて20分程の場所にスーパー銭湯がある。
前からそこにあるのは知っていたが、行くのは今日が初めてだった。
加那太は車窓からずっと外を眺めている。
「お兄ちゃん、ここ高いね!」
「だな。もうすぐ降りるから準備しとけよ」
「はーい」
加那太がこちらを見上げてくる。
「あのね、お兄ちゃん」
「どうした?」
加那太が千尋に抱き着いてくる。
「僕、お兄ちゃん大好き!」
あまりの可愛さに千尋は悶えそうになった。
理性でそれをなんとか堪えて、加那太の小さな背中を撫でる。
「俺も加那が好きだよ」
「本当?」
加那太が嬉しそうに笑う。
千尋は頷いた。
目的地に近くなり、加那太が降車ボタンを押した。
運賃も加那太は自分で入れたがった。
なんでも自分でやってみたい年齢だ。
千尋は彼を軽く抱き上げて小銭を入れさせてやった。
「ありがとうございました!」
加那太が運転手にしっかりお礼を言う。
それをニコニコしながら運転手が見ていた。
「どうも」
千尋も軽く頭を下げてバスをおりた。
「お兄ちゃん!僕、お金入れられたよ!」
加那太が嬉しそうに言う。
千尋は屈んで加那太の頭を撫でた。
「さ、行こうか」
「うん!」
二人は手を繋いで歩きだした。
✣✣✣
歩いているとスーパー銭湯の看板が見えてくる。このあたりでは一番目立つ看板だ。
「わぁ、あれ?」
加那太が指を差して聞いてくる。
「そうだよ。もう少しだな」
「うん!」
横断歩道を渡り更に歩くと、店が見えてきた。
中に入る。
チケットを買って受付のスタッフに渡した。
加那太が飾ってある熊の木彫りを珍しそうに見つめている。
「加那、おいで」
「うん」
脱衣場に入ると何人か客がいた。
「加那、自分で服脱げるか?」
「うん!」
加那太は着ていたポロシャツのボタンをなんなく外していた。
昨日の朝、加那太がこの服を着ていたのを千尋
は覚えている。
彼が困らない様に一緒に縮んだらしい。
不思議なことを挙げていけばきりがない。
靴だって今の加那太にぴったりになっている。
(んー、深く考えたら負けなんだろうな)
「お兄ちゃん、脱げたよ」
加那太は色白だ。どちらかと言えば華奢である。
「加那、中では走るなよ。滑るからな」
「はーい」
二人は浴場に入った。ここにはサウナもある。
後で試しに入ってみたい。
サウナは気持ちいいと職場の同僚から聞いたのだ。今、流行っているらしい。
「加那、先に体を洗おう」
「うん」
二人はそれぞれ洗い場に座った。
「加那、背中洗ってやるな」
千尋はボディタオルを持ってきていた。
千尋は比較的、硬いボディタオルが好きなので
加那太の背中をなるべく優しく擦った。
強く擦り過ぎて後で痛くなったら困る。
「これいい匂いー!」
加那太がスンスンと匂いを嗅いでいる。
どうやらボディーソープの匂いが気にいったらしい。
「加那、頭洗おうな」
「はーい」
加那太にはしっかり目を閉じてもらい、千尋はなるべく早く頭を洗ってやった。
「加那、お湯かけるぞ。目、開けるなよ」
シャワーで頭の泡をまんべんなく洗い落とす。
「終わったぞ」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
千尋も自分の体を洗い終えた。
加那太は洗面器に湯を注いで手を浸けて遊んでいる。
「加那、風呂入るぞ。おいで」
二人は揃って湯船に浸かった。
「わぁ、熱い!」
「のぼせないようにしないとな」
いつも自宅で浸かっている湯より、この湯の温度は高いらしい。
千尋もだんだん熱くなってきた。
「加那、平気か?」
「あついー、ふらふらする」
「加那!!」
千尋は慌てて加那太を抱き上げた。
体が真っ赤だ。
やはり熱かったらしい。
「ふー」
脱衣場に置かれている給水器から汲んだ水を飲みながら加那太が息をついている。
千尋も水を飲んでいた。
冷たい水が体に染み渡るようだ。
だんだん体も冷えてきた。
「加那、ちょっとサウナ入ってみるか?」
「うん…?さうな?」
加那太が首を傾げている。
千尋は加那太の手を引いてサウナに向かった。
中には既に何人かいる。長いこと、ここに入っているのか汗を沢山かいている人もいた。
「暑い…」
「暑いな」
正直、千尋もサウナにはあまり入ったことがない。
とりあえず置いてある椅子に腰掛けてみる。
五分ほどで汗が噴き出してきた。
「加那、そろそろ出るか?」
「うん!あっついー!」
二人は再び水分補給をした。
「さ、帰るか」
加那太の体を拭いてやり、着替えを渡す。
「これ着ような」
「はーい」
着替えを終えた後、二人は自販機でジュースを買って飲んだ。
前からそこにあるのは知っていたが、行くのは今日が初めてだった。
加那太は車窓からずっと外を眺めている。
「お兄ちゃん、ここ高いね!」
「だな。もうすぐ降りるから準備しとけよ」
「はーい」
加那太がこちらを見上げてくる。
「あのね、お兄ちゃん」
「どうした?」
加那太が千尋に抱き着いてくる。
「僕、お兄ちゃん大好き!」
あまりの可愛さに千尋は悶えそうになった。
理性でそれをなんとか堪えて、加那太の小さな背中を撫でる。
「俺も加那が好きだよ」
「本当?」
加那太が嬉しそうに笑う。
千尋は頷いた。
目的地に近くなり、加那太が降車ボタンを押した。
運賃も加那太は自分で入れたがった。
なんでも自分でやってみたい年齢だ。
千尋は彼を軽く抱き上げて小銭を入れさせてやった。
「ありがとうございました!」
加那太が運転手にしっかりお礼を言う。
それをニコニコしながら運転手が見ていた。
「どうも」
千尋も軽く頭を下げてバスをおりた。
「お兄ちゃん!僕、お金入れられたよ!」
加那太が嬉しそうに言う。
千尋は屈んで加那太の頭を撫でた。
「さ、行こうか」
「うん!」
二人は手を繋いで歩きだした。
✣✣✣
歩いているとスーパー銭湯の看板が見えてくる。このあたりでは一番目立つ看板だ。
「わぁ、あれ?」
加那太が指を差して聞いてくる。
「そうだよ。もう少しだな」
「うん!」
横断歩道を渡り更に歩くと、店が見えてきた。
中に入る。
チケットを買って受付のスタッフに渡した。
加那太が飾ってある熊の木彫りを珍しそうに見つめている。
「加那、おいで」
「うん」
脱衣場に入ると何人か客がいた。
「加那、自分で服脱げるか?」
「うん!」
加那太は着ていたポロシャツのボタンをなんなく外していた。
昨日の朝、加那太がこの服を着ていたのを千尋
は覚えている。
彼が困らない様に一緒に縮んだらしい。
不思議なことを挙げていけばきりがない。
靴だって今の加那太にぴったりになっている。
(んー、深く考えたら負けなんだろうな)
「お兄ちゃん、脱げたよ」
加那太は色白だ。どちらかと言えば華奢である。
「加那、中では走るなよ。滑るからな」
「はーい」
二人は浴場に入った。ここにはサウナもある。
後で試しに入ってみたい。
サウナは気持ちいいと職場の同僚から聞いたのだ。今、流行っているらしい。
「加那、先に体を洗おう」
「うん」
二人はそれぞれ洗い場に座った。
「加那、背中洗ってやるな」
千尋はボディタオルを持ってきていた。
千尋は比較的、硬いボディタオルが好きなので
加那太の背中をなるべく優しく擦った。
強く擦り過ぎて後で痛くなったら困る。
「これいい匂いー!」
加那太がスンスンと匂いを嗅いでいる。
どうやらボディーソープの匂いが気にいったらしい。
「加那、頭洗おうな」
「はーい」
加那太にはしっかり目を閉じてもらい、千尋はなるべく早く頭を洗ってやった。
「加那、お湯かけるぞ。目、開けるなよ」
シャワーで頭の泡をまんべんなく洗い落とす。
「終わったぞ」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
千尋も自分の体を洗い終えた。
加那太は洗面器に湯を注いで手を浸けて遊んでいる。
「加那、風呂入るぞ。おいで」
二人は揃って湯船に浸かった。
「わぁ、熱い!」
「のぼせないようにしないとな」
いつも自宅で浸かっている湯より、この湯の温度は高いらしい。
千尋もだんだん熱くなってきた。
「加那、平気か?」
「あついー、ふらふらする」
「加那!!」
千尋は慌てて加那太を抱き上げた。
体が真っ赤だ。
やはり熱かったらしい。
「ふー」
脱衣場に置かれている給水器から汲んだ水を飲みながら加那太が息をついている。
千尋も水を飲んでいた。
冷たい水が体に染み渡るようだ。
だんだん体も冷えてきた。
「加那、ちょっとサウナ入ってみるか?」
「うん…?さうな?」
加那太が首を傾げている。
千尋は加那太の手を引いてサウナに向かった。
中には既に何人かいる。長いこと、ここに入っているのか汗を沢山かいている人もいた。
「暑い…」
「暑いな」
正直、千尋もサウナにはあまり入ったことがない。
とりあえず置いてある椅子に腰掛けてみる。
五分ほどで汗が噴き出してきた。
「加那、そろそろ出るか?」
「うん!あっついー!」
二人は再び水分補給をした。
「さ、帰るか」
加那太の体を拭いてやり、着替えを渡す。
「これ着ような」
「はーい」
着替えを終えた後、二人は自販機でジュースを買って飲んだ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
ダンス練習中トイレを言い出せなかったアイドル
こじらせた処女
BL
とある2人組アイドルグループの鮎(アユ)(16)には悩みがあった。それは、グループの中のリーダーである玖宮(クミヤ)(19)と2人きりになるとうまく話せないこと。
若干の尿意を抱えてレッスン室に入ってしまったアユは、開始20分で我慢が苦しくなってしまい…?
咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人
こじらせた処女
BL
過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。
それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。
しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる