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二日目・お母さん
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次の日の朝、加那太の体に変化は見られなかった。まだ幼い三歳の加那太のままだった。
千尋は優しく彼の頭を撫でてベッドから出た。
とりあえず朝食の支度をしようと思ったのだ。
(加那、コーンスープ好きだもんな)
昨日、加那太に買っておいて欲しいと頼んでおいた物の一つに紙パックに入っている温めるだけのコーンスープもあった。
千尋はそれを鍋に入れて温める。
この家の朝食はパンを食べることが多い。
「お兄ちゃん」
加那太が目を擦りながら歩いてくる。
まだ少し歩き方がぎこちない。
「加那、おはよう。よく一人で起きれたな」
「うん」
千尋は加那太を抱き上げて椅子に座らせた。
テーブルの物を取るには少し高さが足りないので、下にクッションを敷く。
「これ、鳴ってたよ」
加那太が何かを差し出してくる。それは加那太のスマートフォンだった。
どうやらアラーム機能が動いたらしい。
画面を見ると未送信のメールが一件ある。
千尋はそれを開いた。
千尋へ
すぐ元に戻るから心配しないで
そんな言葉が綴られている。
それは加那太からのメッセージであることに間違いなかった。千尋はスマートフォンを撫でた。
「もしかしてそれ、お嫁さんの?」
「ああ。加那、ありがとうな」
千尋が加那太の頭を撫でると、加那太は嬉しそうに笑った。
「いただきます!」
加那太はとてもお腹が空いていたらしい。
よく食べた。
今日は珍しくサンドイッチにしてみたのだ。
昨日、加那太に買うように頼んでおいた野菜やハムを使っている。
加那太が食べやすいようにいつもより小さめに作った。
「わあ、お兄ちゃん。美味しい!」
「そりゃよかった。なあ、加那。
今日はちょっと遠くにお出かけしないか?」
「する!」
加那太が目をキラキラさせている。
今日は少し遠くのショッピングモールに行こうと千尋は考えていた。その近くにスーパー銭湯もあるのだ。
チャイルドシートがないので、いつもの車ではなく電車移動になる。
千尋はタオルなどの荷物を少し大きなショルダーバッグに詰めた。
泊まりがけの旅行に行く時などに使っている物だ。加那太の着替えを買えるようなるべく空きがあるようにする。
「いいなー、お兄ちゃん」
加那太が千尋の様子を見てぽつっと呟く。
どうやら自分もバッグを持ちたいらしい。
「加那、俺になにかあった時の為に、身軽でいてくれ」
「わー、僕がお兄ちゃんを守るぞー!」
加那太がぴょん、と跳ねる。
「加那、しー」
「はぁい」
二人は家を出た。
最寄り駅に向かって歩き出す。
ここから15分程歩いた所にある。
加那太の足を考えればもう少しかかるだろう。
「加那、今日のお昼は何がいい?」
「えーと、えーと」
加那太は答えに困っているようだ。だが、千尋の質問は理解していることがわかる。
「お母さんは普段どうゆうものを作ってくれるんだ?」
千尋が優しく尋ね返すと、加那太は笑った。
舌足らずな口調で答えてくれる。
「あのね、お母さんはよくオムライシュを作ってくれるよ!デミグラシュソーシュが沢山かかってるの!」
「そりゃ美味そうだな」
「うん、美味しいよ。……僕、お母さんに会いたいな」
「ごめんな、加那」
千尋の言葉に、加那太は首をぶんぶんと横に振る。
そのいじらしさに千尋はじんときた。
千尋は優しく彼の頭を撫でてベッドから出た。
とりあえず朝食の支度をしようと思ったのだ。
(加那、コーンスープ好きだもんな)
昨日、加那太に買っておいて欲しいと頼んでおいた物の一つに紙パックに入っている温めるだけのコーンスープもあった。
千尋はそれを鍋に入れて温める。
この家の朝食はパンを食べることが多い。
「お兄ちゃん」
加那太が目を擦りながら歩いてくる。
まだ少し歩き方がぎこちない。
「加那、おはよう。よく一人で起きれたな」
「うん」
千尋は加那太を抱き上げて椅子に座らせた。
テーブルの物を取るには少し高さが足りないので、下にクッションを敷く。
「これ、鳴ってたよ」
加那太が何かを差し出してくる。それは加那太のスマートフォンだった。
どうやらアラーム機能が動いたらしい。
画面を見ると未送信のメールが一件ある。
千尋はそれを開いた。
千尋へ
すぐ元に戻るから心配しないで
そんな言葉が綴られている。
それは加那太からのメッセージであることに間違いなかった。千尋はスマートフォンを撫でた。
「もしかしてそれ、お嫁さんの?」
「ああ。加那、ありがとうな」
千尋が加那太の頭を撫でると、加那太は嬉しそうに笑った。
「いただきます!」
加那太はとてもお腹が空いていたらしい。
よく食べた。
今日は珍しくサンドイッチにしてみたのだ。
昨日、加那太に買うように頼んでおいた野菜やハムを使っている。
加那太が食べやすいようにいつもより小さめに作った。
「わあ、お兄ちゃん。美味しい!」
「そりゃよかった。なあ、加那。
今日はちょっと遠くにお出かけしないか?」
「する!」
加那太が目をキラキラさせている。
今日は少し遠くのショッピングモールに行こうと千尋は考えていた。その近くにスーパー銭湯もあるのだ。
チャイルドシートがないので、いつもの車ではなく電車移動になる。
千尋はタオルなどの荷物を少し大きなショルダーバッグに詰めた。
泊まりがけの旅行に行く時などに使っている物だ。加那太の着替えを買えるようなるべく空きがあるようにする。
「いいなー、お兄ちゃん」
加那太が千尋の様子を見てぽつっと呟く。
どうやら自分もバッグを持ちたいらしい。
「加那、俺になにかあった時の為に、身軽でいてくれ」
「わー、僕がお兄ちゃんを守るぞー!」
加那太がぴょん、と跳ねる。
「加那、しー」
「はぁい」
二人は家を出た。
最寄り駅に向かって歩き出す。
ここから15分程歩いた所にある。
加那太の足を考えればもう少しかかるだろう。
「加那、今日のお昼は何がいい?」
「えーと、えーと」
加那太は答えに困っているようだ。だが、千尋の質問は理解していることがわかる。
「お母さんは普段どうゆうものを作ってくれるんだ?」
千尋が優しく尋ね返すと、加那太は笑った。
舌足らずな口調で答えてくれる。
「あのね、お母さんはよくオムライシュを作ってくれるよ!デミグラシュソーシュが沢山かかってるの!」
「そりゃ美味そうだな」
「うん、美味しいよ。……僕、お母さんに会いたいな」
「ごめんな、加那」
千尋の言葉に、加那太は首をぶんぶんと横に振る。
そのいじらしさに千尋はじんときた。
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