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歓声の中、オレたちはステージから袖に引っ込んだ。
アンコールまでやりきった。
「はー、終わった終わったー」
タクマが水をごくごく飲んでいる。
オレもペットボトルの蓋を開けて、一口飲んだ。
ライブは大成功だった。
ホッとしながらも無意識に、新曲の歌詞をメロディーに当てはめている。
(違うな)
オレはしっくりくる言葉を見つけられずにいた。あともう少しで完成なので、とてももどかしい。
でもここで慌てていてはプロではない。オレは歌詞のことは一旦置いておくことにした。
「アオー、横山さん来てるぞー」
新さんが?
オレは慌てて裏口に向かった。
「アオイくん!」
新さんは大きな花束を持っていた。
「新さん、来てくれたんですか?」
新さんから花束を受け取る。
「アオイくん、かっこよかったよ」
新さんの言葉が嬉しくて、オレは何も言えなかった。
まさか、こうしてライブまで見に来てくれるなんて。
「普段のアオイくんは可愛いのに、今日はすごくかっこいいな」
新さんに可愛いって言われるのは、なんだかくすぐったい。
今日のオレは身長を高くするために厚底のブーツを穿いている。
それでも新さんには敵わない。
「アオイくん、これから打ち上げかい?」
「あ、ハイ」
いつもライブの後は焼き肉に行っている。
「新さんも来ますか?」
「いや、いいのかな」
本気で迷っているようだったので、オレはタクマに声をかけた。
タクマは別に構わない、と言う。
「新さん、明日早いですか?」
「いや、仕事は昼からだよ」
「それなら、曲が出来たので後で聞いてもらいたいです」
「嬉しいな!」
新さんの笑顔にオレも嬉しくなる。
それに制作側からもOKが出ている。
もう作詞だけだ。
オレたちは焼き肉屋へタクシーで移動した。
(新さんと焼き肉来てるー!)
オレはここでこの現実をようやく実感した。あの、人気声優の横山新がオレの隣にいて、しかも一緒にご飯を食べている!!
「アオイくん、肉食べてる?」
ぐい、と顔を近づけられてドキッとした。
新さん、酔ってるな。
もしかしたらお酒に弱いのかも。
オレは立ち上がってお冷を持ちに行った。座敷だから簡単に移動できる。
「新さん、お水です」
そっと差し出す。
「ありがとう、緊張して飲みすぎてしまった」
「え?」
こんな野郎ばかりの飲み会で緊張?
オレが首を傾げてみせると新さんは俺の耳元で囁いた。
「アオイくんが食べてるの可愛くて」
そんなに見られていたことに全く気づいていなかった。
新さんはこんなオレを可愛いとかかっこいいっていつも言ってくれる。
そんな新さんをオレは尊敬する。
「あ、新さんだって、かっこいいです」
とても顔なんて見せられなかった。
多分真っ赤になっているから。
「アオイくん、ありがとう」
ポンポンと頭を撫でられる。
新さんの温かい手が心地よかった。
「あ、お肉焼けてる!」
恥ずかしくなってオレは肉へと話題を変えた。
なんだかいちゃいちゃしているみたいじゃないか。
トングを使って肉をひっくり返した。
「アオイくん」
新さんの声にドキッとした。
大好きな声。
いつもゲームやアニメでオレを励ましてくれた声。
「オレはキミが好きだ」
オレは何も答えられなかった。
ただ肉を焼くのに専念する。
新さんを見ると寝ていた。
(酔っ払ってたのかな)
今のは告白にカウントされるんだろうか。
新さんは乙女ゲームでそういうセリフを言うことも多い。
寝ぼけてただけってことも考えられる。
「新さん」
肩を揺すると新さんは目を覚ました。
「しまった、寝ていたのか」
それからは普通に飲み食いした。
新さんは告白について何も言わなかった。
(やっぱりさっきのは酔っ払っていたから)
オレは落ち込んでいた。
新さんがオレを好きになってくれるわけがないじゃないか。
そんな声が頭の中でぐるぐると響いていた。
アンコールまでやりきった。
「はー、終わった終わったー」
タクマが水をごくごく飲んでいる。
オレもペットボトルの蓋を開けて、一口飲んだ。
ライブは大成功だった。
ホッとしながらも無意識に、新曲の歌詞をメロディーに当てはめている。
(違うな)
オレはしっくりくる言葉を見つけられずにいた。あともう少しで完成なので、とてももどかしい。
でもここで慌てていてはプロではない。オレは歌詞のことは一旦置いておくことにした。
「アオー、横山さん来てるぞー」
新さんが?
オレは慌てて裏口に向かった。
「アオイくん!」
新さんは大きな花束を持っていた。
「新さん、来てくれたんですか?」
新さんから花束を受け取る。
「アオイくん、かっこよかったよ」
新さんの言葉が嬉しくて、オレは何も言えなかった。
まさか、こうしてライブまで見に来てくれるなんて。
「普段のアオイくんは可愛いのに、今日はすごくかっこいいな」
新さんに可愛いって言われるのは、なんだかくすぐったい。
今日のオレは身長を高くするために厚底のブーツを穿いている。
それでも新さんには敵わない。
「アオイくん、これから打ち上げかい?」
「あ、ハイ」
いつもライブの後は焼き肉に行っている。
「新さんも来ますか?」
「いや、いいのかな」
本気で迷っているようだったので、オレはタクマに声をかけた。
タクマは別に構わない、と言う。
「新さん、明日早いですか?」
「いや、仕事は昼からだよ」
「それなら、曲が出来たので後で聞いてもらいたいです」
「嬉しいな!」
新さんの笑顔にオレも嬉しくなる。
それに制作側からもOKが出ている。
もう作詞だけだ。
オレたちは焼き肉屋へタクシーで移動した。
(新さんと焼き肉来てるー!)
オレはここでこの現実をようやく実感した。あの、人気声優の横山新がオレの隣にいて、しかも一緒にご飯を食べている!!
「アオイくん、肉食べてる?」
ぐい、と顔を近づけられてドキッとした。
新さん、酔ってるな。
もしかしたらお酒に弱いのかも。
オレは立ち上がってお冷を持ちに行った。座敷だから簡単に移動できる。
「新さん、お水です」
そっと差し出す。
「ありがとう、緊張して飲みすぎてしまった」
「え?」
こんな野郎ばかりの飲み会で緊張?
オレが首を傾げてみせると新さんは俺の耳元で囁いた。
「アオイくんが食べてるの可愛くて」
そんなに見られていたことに全く気づいていなかった。
新さんはこんなオレを可愛いとかかっこいいっていつも言ってくれる。
そんな新さんをオレは尊敬する。
「あ、新さんだって、かっこいいです」
とても顔なんて見せられなかった。
多分真っ赤になっているから。
「アオイくん、ありがとう」
ポンポンと頭を撫でられる。
新さんの温かい手が心地よかった。
「あ、お肉焼けてる!」
恥ずかしくなってオレは肉へと話題を変えた。
なんだかいちゃいちゃしているみたいじゃないか。
トングを使って肉をひっくり返した。
「アオイくん」
新さんの声にドキッとした。
大好きな声。
いつもゲームやアニメでオレを励ましてくれた声。
「オレはキミが好きだ」
オレは何も答えられなかった。
ただ肉を焼くのに専念する。
新さんを見ると寝ていた。
(酔っ払ってたのかな)
今のは告白にカウントされるんだろうか。
新さんは乙女ゲームでそういうセリフを言うことも多い。
寝ぼけてただけってことも考えられる。
「新さん」
肩を揺すると新さんは目を覚ました。
「しまった、寝ていたのか」
それからは普通に飲み食いした。
新さんは告白について何も言わなかった。
(やっぱりさっきのは酔っ払っていたから)
オレは落ち込んでいた。
新さんがオレを好きになってくれるわけがないじゃないか。
そんな声が頭の中でぐるぐると響いていた。
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