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ワンナイト
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目が覚めると、隣に裸の男が眠っていた。
(! どうして、ここは私の部屋のはず!)
カルラは自分の体を確認してみても特にキスマークはついていないし、服も着ている。乱れた様子のない服を見て、カルラは自分は別に憧れのワンナイトをしたわけじゃないということに気付く。
(はあ、でもどうしてこんな状況になってしまったんだろう? 処女を捨てたわけじゃないのはちょっとどう思っていいのか分からないけど、とりあえずここから出なきゃ)
カルラは相手の顔をよく確認する。顔を背けているから分からなかったが相手は昨日助けて貰った王子だった。
彼女は王子の体を揺らして起きてもらう。その振動で王子は目を覚ましたのか体を置きあげて、カルラの顔を見ていきなり言葉を発した。
「なんでお前なんかと同じベッドで寝ているんだよ」
(それは私のセリフなんですけど。あと、お前なんかッて何よ。そんな言い方は別にしなくてもいいじゃない)
カルラは甘い言葉をささやかれるのは苦手だが、だからと言ってお前とか言われるのも苦手だ。丁寧に扱われても嫌がるし、適当に扱われるのも嫌がるという変な性質を持っているが、それはみんなにも理解してほしい。
(落ち着けカルラ。昨晩いったい何があったか思い出せ)
たしか昨日はあのまま馬に乗って、なぜか高級ディナーを食べることになって、いろいろあったはずだ。それなのに、どうして、私は部屋で一緒に寝ていた?
「なあ……」
「あなたとは何もありませんから、安心してください」
「まだ何も言ってないさ。それよりも俺が昨日言ったことを覚えているか?」
「え?」
カルラは酒でも飲んでいたのかと思うくらいまったく思い出せない。
「俺があの店で言ったことだ。本当に覚えてないのか?」
どんなに考えても、自分の頬をつねってもどうしても思い出せなかった。
「……なんかすいません」
「別に良い。ただ俺が去勢する覚悟で伝えたことを忘れられていただけだ。ただそれだけのことだ」
「ちょっとそこまで思いつめなくてもいいんじゃない? あと去勢する覚悟は重い」
「ひどい」
カルラはそう言ったものの、別にそれが嫌と言うわけではなかった。それはカルラはしっかりと彼が私のことを好きじゃないことを知っているからだ。
自分に好意を向けてくる相手がそんなことを行って来たら確実に気絶しているが、この人ならば大丈夫だった。
「それで、昨日王子様は私に何を言ったんですか?」
「……はあ、この言葉をもう一回言うことになるとはな。まあいい」
「どうしたんですか?」
はやく内容を言えと文句を言いたくなる。
「ああ、俺の婚約者のことだ。最近まで決まっていなかったんだけど、とうとう親がさっさと婚約者を決めろと言ってきてな」
「なっ!」
カルラはもしかして私を婚約者に推薦するつもりではないのかと疑ってかかる。普通は喜んでしかるべきだろう。相手はイケメンだし、身長も高いし、何よりこの国の王子様。
そんな相手から告白されたら大抵の女は飛んで喜ぶ。
きっとこんな風に思っているのは私だけだと思いながら、話の続きを聞く。
「俺は侯爵家の令嬢と結婚することになった。だから、もうお前とは会えない」
「は?」
思わず敬語すらも忘れてしまうほどの衝撃を受けていたのかもしれない。
(もう、会えない?)
男性なんて興味がないはずなのに、そう思い込んでいたのに、なぜかカルラは強いショックを受けているようだった。
「まあ、お前なんかと会っても何も楽しくないんだから俺としては何も困らないが、一応言っておこうと思ってな」
「そ、そう、なんですか」
どうして、という疑問が浮かんできた。
(どうして私は好きでもない相手が結婚すると聞いてこんなにもショックを受けているのだろうか?)
その問いだけが永遠に解けぬ謎として疑問になり続けていた。
(! どうして、ここは私の部屋のはず!)
カルラは自分の体を確認してみても特にキスマークはついていないし、服も着ている。乱れた様子のない服を見て、カルラは自分は別に憧れのワンナイトをしたわけじゃないということに気付く。
(はあ、でもどうしてこんな状況になってしまったんだろう? 処女を捨てたわけじゃないのはちょっとどう思っていいのか分からないけど、とりあえずここから出なきゃ)
カルラは相手の顔をよく確認する。顔を背けているから分からなかったが相手は昨日助けて貰った王子だった。
彼女は王子の体を揺らして起きてもらう。その振動で王子は目を覚ましたのか体を置きあげて、カルラの顔を見ていきなり言葉を発した。
「なんでお前なんかと同じベッドで寝ているんだよ」
(それは私のセリフなんですけど。あと、お前なんかッて何よ。そんな言い方は別にしなくてもいいじゃない)
カルラは甘い言葉をささやかれるのは苦手だが、だからと言ってお前とか言われるのも苦手だ。丁寧に扱われても嫌がるし、適当に扱われるのも嫌がるという変な性質を持っているが、それはみんなにも理解してほしい。
(落ち着けカルラ。昨晩いったい何があったか思い出せ)
たしか昨日はあのまま馬に乗って、なぜか高級ディナーを食べることになって、いろいろあったはずだ。それなのに、どうして、私は部屋で一緒に寝ていた?
「なあ……」
「あなたとは何もありませんから、安心してください」
「まだ何も言ってないさ。それよりも俺が昨日言ったことを覚えているか?」
「え?」
カルラは酒でも飲んでいたのかと思うくらいまったく思い出せない。
「俺があの店で言ったことだ。本当に覚えてないのか?」
どんなに考えても、自分の頬をつねってもどうしても思い出せなかった。
「……なんかすいません」
「別に良い。ただ俺が去勢する覚悟で伝えたことを忘れられていただけだ。ただそれだけのことだ」
「ちょっとそこまで思いつめなくてもいいんじゃない? あと去勢する覚悟は重い」
「ひどい」
カルラはそう言ったものの、別にそれが嫌と言うわけではなかった。それはカルラはしっかりと彼が私のことを好きじゃないことを知っているからだ。
自分に好意を向けてくる相手がそんなことを行って来たら確実に気絶しているが、この人ならば大丈夫だった。
「それで、昨日王子様は私に何を言ったんですか?」
「……はあ、この言葉をもう一回言うことになるとはな。まあいい」
「どうしたんですか?」
はやく内容を言えと文句を言いたくなる。
「ああ、俺の婚約者のことだ。最近まで決まっていなかったんだけど、とうとう親がさっさと婚約者を決めろと言ってきてな」
「なっ!」
カルラはもしかして私を婚約者に推薦するつもりではないのかと疑ってかかる。普通は喜んでしかるべきだろう。相手はイケメンだし、身長も高いし、何よりこの国の王子様。
そんな相手から告白されたら大抵の女は飛んで喜ぶ。
きっとこんな風に思っているのは私だけだと思いながら、話の続きを聞く。
「俺は侯爵家の令嬢と結婚することになった。だから、もうお前とは会えない」
「は?」
思わず敬語すらも忘れてしまうほどの衝撃を受けていたのかもしれない。
(もう、会えない?)
男性なんて興味がないはずなのに、そう思い込んでいたのに、なぜかカルラは強いショックを受けているようだった。
「まあ、お前なんかと会っても何も楽しくないんだから俺としては何も困らないが、一応言っておこうと思ってな」
「そ、そう、なんですか」
どうして、という疑問が浮かんできた。
(どうして私は好きでもない相手が結婚すると聞いてこんなにもショックを受けているのだろうか?)
その問いだけが永遠に解けぬ謎として疑問になり続けていた。
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